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焔の檻  作者: iro.
2/12

2


「......え?」


「ウチに来てもろたんは、他でもない。一一君に、ちょっと用があんねん」

李黎炎は、にこりと笑った。

その笑顔の奥にあるものを、春はまだ知らない。


༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶


屋敷の一室。

中華調の欄間と刻が施された木の壁、奥に据えられた重厚な椅子に、李黎炎は背を預けて座っていた。

春はその前に立たされていた。制服姿のまま、少しだけ乱れた髪を気にする素振りを見せながらも、その表情は落ち着いているように見える。


「.....えらい落ち着いとるな。普通やったら泣き

叫ぶとこやで?」

黎炎が笑う。


低く、余裕をたたえた声音。けれどその奥で、鋭い眼がじっと彼女を観察していた。


「ここ、どこなんですか。私、なんで連れてこられたんです?」


体の芯が震えているのを力を入れて抑え

黎炎に悟られない様に聞いた。


「ここは龍焔の屋敷や。ほんで一一君は"血の価値”を持っとる。

そやからや。」

「血......?」


春がわずかに眉をひそめると、黎炎は指を軽く鳴らした。

背後の部下が一枚の写真を差し出す。それは、古びたスナップ__

スーツ姿の男、顔のいかつい数人の男たちに囲まれ、笑っていた。


「この人、見覚えあるか?」

「...うちの、父」

「せや。美咲蒼真みさき・そうま。蒼嶺会の若頭の弟や。

兄貴が死んで、しばらくしてこっちも殺された。

で、残った血縁が君、ただ一人や」


空気が静かに、しかし確かに変わった。

春は写真から目を離し、真っ直ぐ黎炎を見た。

揺れは、なかった。


「......そっか。私、そんな血なんだ」


少しだけ沈黙が落ちる。

黎炎は、感情を読もことするように目を細めた。


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