1、トワと俺の旅立ち
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永遠の魔女。
幼馴染みがそう呼ばれるようになったのは、俺が十三歳の誕生日を迎えた日だった。
いつもお姉さんぶって俺をからかってきていたそいつは、その日を境に歳を取らなくなった。
不死の魔法。
弱冠十六歳のそいつが<永遠の魔女>と呼ばれるに至った『時の魔法』。
魔法使いではない俺にはわからないが、とにかくすごい魔法をそいつは発動させた。
それから六年。
かつて三つも年上だったそいつと俺の年齢差は逆転した。
いまでも変わらぬ姿で、今日も幼なじみは俺の前に現れ、そして言った。
「死に場所を探しにしましょう!」
「はい?」
「ですから、わたしの死に場所を見つける旅をするんです」
ぐっと拳を握って突然言い出すトワに、俺は口からクッキーをこぼした。
叔母が経営する雑貨店。
客足の少ないこの店で店員をしている俺は、毎度のことながら冷やかしにくるトワの差し入れを片手に彼女の話を聞いていた。
「あのさ。悪い。ちょっと言ってることがわからないんだが……。ちゃんと説明してくれるか?」
「実は北の方に『アバルヘイム』という不死の国がありまして。そこに行けば、おそらくわたしにかかった永遠の魔法が解除できると思うのです」
「ああ、それで」
永遠の魔法。古い禁忌魔法のひとつらしい。
あの日。
俺の誕生日を祝い来たトワは、この雑貨店の隅にあった古い魔導本を開いた。
古代の文字で書かれた本だ。
専門家にも解読ができないからと、放置され、当時ついていた値段すら、もう覚えていない。
こいつはその本を開き、どういうわけか禁忌の魔法を発動させた。
元々魔女見習いだった彼女だ。
才能があったのかもしれない。
しかし、その古い魔法はかけた本人にも解呪ができない。
結果、永遠に老いることも死ぬこともない、不老不死の魔女が誕生したのだ。
「わかった。出発いつ? 見送りくらいは行く」
俺はトワが作ったらしい黒焦げのクッキーを口にしながら、店の帳簿を眺めた。
こいつは結構なお得意様だったから、旅に出てしまうなら店の売上げも減るかもしれないな、なんて考えていると、
「? なにを言ってるいるんですか、ロウくんも一緒に行くんですよ?」
小首をかしげる可愛いトワ。
そういうわけで俺、ロウエン・カーバンクルンは、永遠の魔女トワニカ・セレスと一緒に、不死の国〈アバルヘイム〉を目指して旅に出ることになった。