♯8 異世界で第一村人発見しました!
朝起きた場所が砂の上じゃない事がこんなにも素晴らしい事だったとは…私は海に放り出され気を失った後、目が覚めるとベッドに寝かされており、着ている服が変わっている。
「…ここは、家の中?…」
辺りを見渡すとそこは、現代日本とはかけ離れたRPGゲームの村人の家のような場所であるとわかる。ベッドの近くにある木製のボr…歴史を感じさせる机の上には私のパソコンも置いてある。
私はベッドから起き上がり机の上のパソコンを確認する。まず間違いなく水没したはずなのにパソコンは問題なく電源が入った。
「良かった!ずぶ濡れだっからもうダメかと思ったけど、異世界でチート武器化したパソコンだけあるね」
完全防水のパソコン欲しかったからラッキーなどとたわいもない事を考えていると突然、コンコンとドアがノックされ、ボサボサの金髪で無精髭を生やしたガタイのいいおじさんが入ってきた。
しばらく無言で見つめ合う私とおじさん。先に口を開いたのはおじさんだった。
「目が覚めたか…!よk…」
「きゃぁぁぁ!不審者ぁ!!」
「な、てめぇ…!」
おじさんがじりじりと私に詰め寄ってくる。「もうダメだ!襲われる」と思った瞬間、開けっ放しのドアから、黒髪ショートカットのふくよかなおばさんが入ってきた。おばさんは部屋に入ると、私を襲おうとしているおじさん(仮)にゲンコツを一発おみまいした。アニメなら「げんこつ!」のカットインが入りそうな勢いに私が先程までとは別の意味で恐怖していると、おばさんは床に倒れ付したおじさんを横目に私に頭を下げてきた。
「驚かせて悪かったわね、うちの旦那は顔が怖いし口下手だからよく誤解されるのよ。でも安心してちょうだい、本当は凄く優しくてカッコイイ男なのよ。海に浮かんでいた貴方を連れて帰ってきたのも旦那なのよ。」
どうやらおばさんはどこの世界でも同じような雰囲気のようだ。マシンガンのような勢いで話し始めた時は少しばかり驚いたが、どこか落ち着く雰囲気のおばさんに少し安心感が湧いた。そして床に倒れていっこうに起き上がらないおじさんがとても心配になった。
「あ、あのおじさんずっと倒れてますけど、大丈夫なんですか…?」
「若い女の子を怖がらせたのよこれくらい当然だわ。それより貴方の髪、すごく綺麗な桃色ね!顔もべっぴんさんだし!若い頃の私と同じくらい綺麗だわ〜」
「あ、ありがとうございます…それよりおじさんは…」
「貴方の服は洗濯してるから大丈夫よ!にしても可愛い服ね〜どこの国でかったの?教えてちょうだい!」
「え、え〜と…」
それから私はじつに3分間、おばさんから質問攻めされ続けた。話の勢いが凄すぎて終始圧倒され続け、おばさんが隙をみせたタイミングで相槌を打つという会話に「これはなんて言うリズムゲームなんだろう」と考えていると、
「あらもうこんな時間!朝ごはんのお魚が焦げちゃうわ。レオ…倒れてるおじさんが起きたら一緒にリビングに来なさいね、ご飯にしましょ〜」
それだけ言うとおばさんは部屋から出ていった。久しぶりに他人と会話出来た事は嬉しいがここまでの濃密なものだと疲れてしまう。私はベッドに腰かけ、倒れているおじさん(確かおばさんはレオと呼んでいた)をしばらく眺めていた。
「あんな勢いで話されちゃ嬢ちゃんも困っちまうよな…女房が迷惑かけてすまねぇ。あと怖がらせたこともな。俺も聞きたい事はあるが詳しい話は後にしよう。まずは朝メシだ。」
「そうですね…」
目を覚ましたおじさんは軽く腕を回した後、少し頭を下げ申し訳なさそうに謝ってきた。そこまで口下手という印象は受けないが、比較対象があのおばさんなら口下手に分類されるのかもしれない。おじさんもおばさんも優しそうな人で良かった…
久しぶりにまともな朝ごはんが食べれるとワクワクしながら、私はおじさんのあとについて部屋を出ていった。
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