♯4 異世界でも契約書は絶対読むべきです。
喉の乾きが尋常じゃない。あたりは一面水に囲まれた無人島なのに海水だから飲めない。一応異世界の海は真水かもしれないと期待し、一口飲んでみたが普通に塩辛かった。私が期待していた異世界転生とはかけ離れた現実のみがそこにあった。
もっとこうチート能力で敵をぶちのめして俺TUEEEE、いや私TUEEEEしたかった。いやまだ可能性がある。私は一縷の望みにかけてパソコンを開き、メールを確認した。
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如月 凛花 様
疑問点については確認いたしました。しかし、当局のウェブサイトにも書いてあるとおり、答えられる質問は三つまでとなります。また早急な返事をとの事ですので上から順番に三つまでをお答えいたします。
1,当サイトに書いてあるおとり異世界です。
2,当サイトに書いてあるとおり転生先の詳細な
場所設定は不可能です。ご了承ください。
3,特殊な能力、武器は一人一つずつございま
す。確認しましたところ凛花様の詳しい能力
はお使いの端末のプロフィールから確認する
事ができます。御自身でお確かめください。
これ以降連絡を取る事は出来ません。
最後に、私の名前は島谷ではなく嶋谷です。それと、サイトに書いてある事は最後まで確認すべきかと。そうすれば私は貴方に飲み水の作り方を教えることが出来たでしょう。
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「はぁ〜」
ざっとメールの内容に目を通しため息をつく。
三回しか質問出来ないならメールに書くべきではないだろうか、いやそれよりも最後の一文は本当に必要なのだろうか。
「名前間違えたのは私が悪いけどさぁ、なんか明らかにプッツンしながら返事してきてる気がするんだよねこれ。絶対恋人いないし一生できなそう」
いつかこの嶋谷という人に会えたなら絶対文句をいってやる。そして願わくば仕事をクビになればいいのに…
だが、独り身=年齢(推定)の嶋谷さんとのメールで私は二つ有意義な情報を得た。一つは嶋谷さんは短気という事、もう一つはパソコンで私の能力が確認できるという事だ。
早速私の能力の確認をs…
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛充電がぁぁ!」
期待に胸を膨らませる(膨らませても絶壁だが)私の目の前で信頼する相棒は充電が切れ画面が真っ黒になってしまった。
「あぁ神よ、私が何か悪い事をしたのですか?」
発狂しても、嘆いても充電の切れたパソコンはうんともすんとも言わず、ただただ私の顔を真っ黒な画面に反射させているだけだった。
次にパソコンが息を吹き返したのは太陽が完全に沈んでからだった。何を言ってるか分からないと思うが、私も何を言っているのか分からない。
もう海に投げ捨ててやろうかと思い、立ち上がっては心惜しくなり座る、をかれこれ6時間程繰り返した頃突如パソコンに電源が入ったのだ。それもなんと充電は100%になっていた。相棒の奇跡の復活に、またひとしきり大はしゃぎした後1番大事な事を確認する。
「私のチート能力はどんなもんかな?ワクワクするよ〜」
わっくわくしながらプロフィールを確認する。
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名字 如月
名前 凛花
年齢 17歳
誕生日 12月1日
MP 351
能力 なし
神器 【月華創造(ルナ)】:異界の鉄板。
この神器に内包されている複数のスキル
を一括管理する。
MPの蓄積限界量を使用者の認知度と共
有(現在は配信サイトMyTube登録者
351人を参考)にする。
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わくわくを返して欲しいと思ったのは私だけだろうか。確か嶋谷は能力と武器は一人一つずつと言っていたのに…
「私の能力、なしって何よ!嶋谷の嘘つき!詐欺師!一生独身!」
っと、しまったいつも可愛く愛されるようにを心がけてきたのに、つい素が出てしまった。
そうして異世界生活二日目もすぎていく。ただ今日は昨日と違い落ち着いて眠れそうだ。お気に入りのパーカーを布団替わりにしてるせいで砂まみれになってしまったが、この際些細なことだ。
寝る前、私は少し考えた。神器【月華創造(ルナ)】の内包しているスキル。もしかして元々入っていたアプリなのではないか…と。
「だったら、いいなぁ」
私、明日からも頑張ろう…とりあえず水、飲みたいな。あと【月華創造(ルナ)】はさすがに恥ずい、これからもパソコンってよぼう。私の相棒はルナでは無いパソコンなのだ。
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