♯13 【出会い】異世界で古のオタクに遭遇しました。
時刻は丑三つ時(確か深夜2時過ぎくらい)。私は寝泊まりしている洞窟の中で 男性の呻き声のようなものを聞き飛び起きた。今までホラゲー配信を数回行ったがとても耐えられるものではなかった…びっくり系はダメなのだ。
私は手探りで近くに置いたパソコンを探り当てると電源をいれ、声のした洞穴入り口の方を照らす。
そこには、メガネをかけたやや肥満気味な中学生くらいの男の子が血だらけで倒れていた。
「お、オタクの幽霊…?」
「か、かろうじて生きてはいるでござるよ〜」
なんとファンサービスのいいオタクの幽霊であろうか、「オタクか?」という質問に古のオタク用語で返してくれるとは。ここは可能な限り手厚く弔ってやろう。
「死因は尊死かな…なむなむ」
「違うでござる、生きてるでござるよ。だからその、なむなむするのはやめるでござる〜」
「え、い、生きてるの…。」
「先刻よりそう言っているでござるが…。」
驚いた、どうやらこのオタク君は生きているらしい…。右腕や肩、頭からも出血しているが生きているのは凄いの一言である。ただ、生きているのが不思議な程の大怪我である。まずは応急手当をすべきだろう、早速パソコンの『画像編集』から包帯やら絆創膏やら消毒液を取りだす。そして『検索』でやり方を調べながら応急手当をしていく。
「おお、まさに戦場の女神、さながらナイチンゲールでござるなぁ」
「な、ないちん…?」
ナイチンゲールさんすいません有名な人なのでしょうが存じ上げません。確かゲームをしていた弟が「ナイチンゲールは昔は強かったけど今は弱い、だからハズレ」とか言ってたような…?きっとゲームのキャラなんだろうと結論を出し、手当を続ける。
「ふ、『捨てる神あれば拾う神あり』と言いますし、この異世界も捨てたものではありませぬな。」
「そうですねー」
ひとまず初期バルバラさんの時にしたように相槌リズムゲームを展開し会話を流す。私が異世界で得たものは会話のスルースキルかもしれない。その後、終始長文を早口で話すオタク君に睡眠不足のせいで多少イラつきつつ手当を終えた。
その後オタク君には安静にするようにいいもう一眠りしようとする。パソコンで確認したところ時刻は三時を過ぎたあたりである。朝まではまだ時間がある、ここで休眠をとらなければならない。でないと早ければ明日にでもこのオタク君を外にポイしなければならないのだ。(オタク君の安全の為にも)
「休眠でござるか?我はこれでも一応、男でござるが…」
「襲ってきても手負いの君なら何とかできるとおもってね。おやすみ」
「それは心外でござる!我、何があっても推しには手を出さないでござるよ!推しに手を出すオタクなどオタクにあらず…、あ、寝むってしまわれたでござる…」
実際はまだ寝てはいない、あまりにも、あまりにもうるさすぎるので急遽寝たフリをしただけなのだ。ただずっとこうしている訳にも行かないので今日は護身用ダガーを握りしめて眠りについた。その間もオタク君はずっと小声でボソボソ言っていたが、よくあの大怪我でこんなにもピンピンしてるなぁと感動してしまった。
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