とある世界の御伽噺「嘆き姫様」
王様主催の、年初めの、お城の舞踏会。煌びやかなパーティが行われている最中に、銀髪碧眼の王子様が王様の前に、一人の髪も瞳もピンクの、垂れ目の儚げな少女を連れて、堂々と宣言します。
「私、ルナティア王国第二王子セルディオは、フランクェル王国第三王女アイネスティアとの婚約を破棄する!そして、悪女アイネスティアは極刑に処す!」
その言葉と共に、会場中にはざわめきが広がります。
「やっぱり」「なんてことを」「なにがおきてるんだ?」
参加している貴族たちには、セルディオに賛成する者、反対する者、理解できていない者の3種類がおりました。
ざわめきが収まらない中、一人の金髪赤眼のつり目の少女がかつかつと音を立てて王子の前にやってきました。
「なぜ、婚約を破棄、それどころか罪に問われなければならないのか、説明してくださる?」
「ふん!決まっているだろう!私の愛しいレインを虐めたからだ!」
「婚約者につく悪い虫を退治することに、何の悪いことがあって?そして、その場合の婚約破棄であれば、不貞をした貴方が有責で会って私が罪に問われる謂れはないわ。」
「残念だったな!私の愛しいレインは、聖女だ!聖女に対しては、何人であろうとも害することを禁じ、害した者は極刑に処すと国法で定められている!故に、お前は極刑だ!」
その言葉に、賛成していた者も、反対していた者も、理解できていない者も内心首をかしげました。
なんせ、婚約破棄をした場合、アイネスティア様はフランクェル王国の存在になることは当然だからです。婚約したままであれば、一応ルナティア王国の者と言い張ることができなくもありませんが・・・
「あら、婚約破棄をされたのであれば、私がこの国の法で裁かれる理由はありませんわ。帰らせていただきますもの。このことは父王に報告し、正式に抗議させていただきます。よろしいですね、ルナティア国王閣下。」
そう、アイネスティアは王様の方を向いて言いますが、返事はありません。アイネスティアが首をかしげていると、セルディオが高笑いをし始める。
「はーっはっはっは!国法では、聖女と心を通わした者が王になると決まっている!故に、私が王だ!それゆえ、偽りの王には死んでもらった!」
国王の殺害宣言に、会場はざわつきます。
近衛を呼ぶ者達もいましたが、動きません。
「近衛を呼んでも無駄だ!皆、本当の王である私に忠誠を誓っているのだから!
さて、アイネスティア、お前は処刑だ!」
「なっ!そんなことが許されるとでも!?」
「ふん!私が王なのだ。私が法だ!それに何の問題がある。そうだ、私に不要な口出しをした罰も与えてやる!」
そんなことはありません。古い昔に魔王を討伐した勇者様の考えが伝わっているため、王であろうとも法に従う、それはすべての国で常識です。
「アイネスティア様、私、悲しいです。私が平民だからって虐めて・・・」
「不要な口出しなどしてませんわ?政略とはいえ、いえ、だからこそ、他の者に色目を使ってはならないと言ったのです。そして、魅了をかけている者がいれば、排除するに決まっているでしょう!いじめなどではありません!」
魅了、それは魔族しか使えない、闇属性の魔法です。
その名が出たことで会場はざわつきます。
慌てて逃げようとした者もいましたが、近衛に阻まれてしまいました。
「そのような言いがかりをまだ続けるか!もういい!刑を執行する!首を垂れろ!」
「お断りいたしますわ。先ほど言った通り、私は婚約を破棄された以上、この国の法に従う理由などありません!」
「ふん!そのようなこざかしいことを言うと予想して、フランクェル国王には、手紙を送っている!そしてその返事も来ているのだ!」
「手紙・・・?」
「貴様の悪事と、聖女が我が国に降臨したことについてだ!王は謝罪し、貴様を好きに処罰してくれと乞うてきたぞ?」
「そんな・・・お父様・・・」
魔王討伐からしばらくして、再び魔がはびこるようになってしまったこの世界において、聖女の影響力は大きい者でした。そのため、フランクェル国王は娘を捨て、聖女に媚びることにしたようです。
「それに、そもそもお前は厄介払いをするつもりで送ったから戻ってきたとしても居場所はないと言っていたぞ!はっはっは!滑稽だな。つまりお前は今、平民だ!」
セルディオの高笑いと共に、レインがクスリ、と笑い、足元から植物の根が生え、アイネスティアの胸を貫きました。
一瞬、パーティ会場に静寂が広がり・・・悲鳴があがり、人々は逃げまどいますが、いつの間にかできていた根の壁に阻まれ、出れません。
その壁を成す根の先には、近衛たちが刺さっています。
それを見たセルディオは、レインに問い詰めます。
「なっ!レイン、どういうことだ!聖女の力にこんなもの・・・」
「クスクス、まんまと騙された、哀れな王子サマ?まだ気づかないんですかぁ?私、聖女じゃなんかありませんわぁ?あなたたちニンゲンが付けた種族名は、アルラウネ。個体名レイン。あなたたちの、敵ですわ?」
「そ、そんなばかな・・・君は間違いなく、藍で花開く聖女がこの国に現れるといわれた年に来た、平民の娘じゃ・・・」
「うふふ、聖女は、そこの死んだお姫サマですよぉ?まぁ、力が開くために必要な愛、家族からも、婚約者からも、民衆からももらえなかったみたいですけどねぇ?まさか、花が咲く幻覚を見せるだけで信じるとは思いませんでしたけどぉ、聖女を排除できたことは、感謝しますわ?」
その場にいる全員が、自分のことで必死になったその瞬間。
アイネスティアの唇が、ピクリ、と動いた。
「アイヲ・・・シンジツノアイヲ・・・ワタシニ、チョウダイ?」
その声は、大きくはなかったが、会場中に響き渡る。
「なっ!レイン!死者を冒涜するとは・・・こんなこと、して良いと思っているのか!」
「知らないわ、知らない!こんなの知らない!私は何もしていない!」
アイ繝阪せティアを貫いていた血に濡れた根に、結晶が纏わりつく。
そして、砕けて消えた。
貫かれ、高く掲げられていたアイ繝阪せ繝�ぅアは、貫いていた根が消え、地に落ちていく。
繧「繧、繝阪せ繝�ぅ繧「は、落ちる寸前、クイッと胸を中心に浮かび、だらんと人形のように手足を揺らす。
荳肴ュサ縺ョ鬲皮視は、首を上げ、手を広げ、足を地につけた。
不豁サ縺ョ鬲�王は、笑顔を浮かべ、「ワタシニアイヲクレルノハ、ダァレ?」と問いかける。
不死の魔王は、答えぬすべてを、胸の黒くて奥が見えない穴から出てきた結晶の根で貫き、結晶に変え、穴にしまい込んだ。
外交しに行っていた第一王子が城に戻ってきた時、そこには壊れたパーティ会場だけがあり、記録の魔導結晶を見て、すべてを知った。
魔王は、フランクェル王国にも訪れ、王に問い、結晶として穴にしまい込んだ。
魔王は、東の不変、南の不浄、西の不滅を避け、北に行き、結晶だけでできた森を作った。美しさに見とれ入った者は、誰一人戻らなかったという。
ルナティア王国では、それ以来、魔法を防ぐ魔道具と、簡単に人を信じない教育を王家に施した。
とある世界では、この話を、情報収集をする大切さを伝える話として、童話にした。
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