2営業目 運転手はエスパーでは無い
タクシーを利用するお客様には必ず目的地がある。そして、そこに至るには距離の長短あれど幾通りの行き方が存在する。
時間帯や曜日、天候等によって状況は変わり、この時間はこの道!なんてこだわりを持つ人も居るくらい。
タクシーのお客様で、以前に遠回りされたとかいつもより高いと言うお話を耳にする。言い訳がましくもなるが、ドライバーの知ってる最良の道とお客様の知ってる最良の道の齟齬があったりするとこんな事が起こる。なので筆者は指定ルート等を伺う事を肝に命じている。
中にはお任せでと言った割には降りる時になって、
「いつもの運転手さんなら○○通って××で右曲がって行ったからもっと安かったよ」
なんて調子で言う方もいて、こちらとしては後出しジャンケンされた気分にもなる。
新人の時(今も新人に毛が生えた様なものだが)にそんな事を散々言われた事もあり、分かるエリアであればおまかせと言われても、
「では、△△通りから□□駅を抜けて行くコースでよろしいでしょうか?」
なんて確認をする。そうすると、さっきまでお任せでなんて言っていたお客様がルートを指定してきたり、
「じゃあ、そのコースで」
なんて言ってくれる事もある。
都内のタクシードライバーの営業エリアは東京23区と武蔵野市、三鷹市を営業エリアとしている為、かなりの広範囲をカバーする必要がある。もちろんそのエリア内には100近くの駅と無数の交差点、何百といった通りがある為、その全てを網羅することはベテランドライバーですら実質不可能に近い。ましてや、現地点から行先までのルートなんて無数に存在するのだ。
ドライバーによって得意エリア、不得意エリアあるのは当然の話で、新宿エリアが得意な人も居れば銀座エリアが得意な人も居る。
そんな不得意エリアでも、通ってればお客様は関係なく乗ってきて、ローカルな地名を言われてしまう。当然わかる訳もなく、
「この辺あまり走らないので、教えて頂いて宜しいですか?」なんて事を言うと、人によっては
「知らないなんて言い訳にならないからね」
と言われてしまう事もまぁまぁある。そんな時はひたすらへりくだってお伺いたてるしかない。
あえて不得意エリアに向かっていくパターンもある。先述の様にお客様の行先として行くパターンと、勉強の為あえて行くパターンである。後者にはさらに新人が行くパターンとある程度経験を詰んだドライバーが行くパターンだ。
どちらのパターンで共通して、
「知らないなら走るな!」
なんて言われてしまう事も稀にあるが、お客様に連れて来られてしまったのはこちらからすれば全くの不可抗力であり、知らないからこそ勉強のために走っているのだ。
こちらからすれば、不得意エリアを得意エリアにする事で仕事の幅も拡がり、ひいては収入にも影響が出る為、かなり切実な問題であり必死なのだ。
知らない道、お客様が脳内で描いてる道。これを察するにはやはりコミュニケーションは必要不可欠であり、運転手はエスパーでは無い。
運転手が道が分からないと言った場合にはカーナビを使う事もあるが、是非ご教授頂きたいものだ。