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陰謀論の住人  作者: 六年生/六体 幽邃
3部 チェーンメール
15/22

14章 悪意を孕む死体


 14章 悪意を孕む死体


 チェーンメール。

 不幸の手紙、探し人等を騙り不特定多数に広げる事を目的としたメール。

 

 昨今ではデマの拡散行為として有名である。

 

 ●

 

 こんにちは! ファラリスです!

 

 皆様、最近のご体調はどうでしょうか?

 農薬、添加物、糖質、ストレス、それらが多い世の中、新たなデトックスのご提案をさせて頂きたくメールしました。

 

 新たなスーパーフード、繝ェ繧カ繝シ繝峨す繝シ繝峨?。

 縲?蛹怜嵜縺ァ迯イ繧後◆繝ェ繧カ繝シ繝峨す繝シ繝峨?鬮倥◆繧薙?縺丈ス弱き繝ュ繝ェ繝シ縲。

 縲?繧「繝ウ繝√お繧、繧ク繝ウ繧ー縺ォ縺エ縺」縺溘j縺ョ縺薙?鬟溷刀繧貞ス灘コ励〒縺ッ繧ウ繝シ繧ケ譁咏炊縺ァ縺疲署萓帙>縺溘@縺 セ縺吶?。


 今このメールをご友人に転送するとコース料理が2割引き!

 皆様に確かな健康をお約束します。

 レストラン、ファラリス。


 住所、T都MB区1-■-3。

 電話番号、0×-×3××-×95×

 

――とある遺体の所持品、その携帯電話に残されていた電子メール。


 ●

  

「文字化けしてる」

「読めねぇ」

 

 氷室と火泥は携帯電話の画面を睨む。

 肝心な部分が文字化けしたそれは解読不能だ。 


 公安局。

 警察庁の地下にある事務所で火泥達は事件に関連する品や資料を見ている。

 朝の爽やかな日差しなど、ここには入り込みようが無い。


 火泥は渋い顔で茶を啜る。

 出勤直後、先に出勤していたらしき氷室から聞かされた話はこうだ。

 

 事件は都内のとある病院で起きた。


 自宅のマンションで急死した女性。

 その検視の際、立ち合いの医者と警官が何者かに襲われたと言う。


 それは遺体の腹を突き破り、刃物のような傷跡を現場の人間に残した。

 

 その何かは一通り暴れた後、動きを止め死亡。

 公安局に入電、事後処理を終わらせ死体を回収。

 被害者が発見されたマンションの自室の現場検証。

  

 それらを終わらせ氷室達が戻ってきたのが火泥の出勤と同時。

 そのまま改めて検視、遺品の捜査。

 検視報告書が出来上がり、読んでいる所である。


 いつ寝てるんだ?


 火泥は目の前に座る氷室をちら、と見る。

 恐らくほぼ徹夜であろう氷室は顔色買えず資料を見ている。

 火泥は氷室の横に座り、資料を覗き見た。


 被害者、川上 祥子、25歳。

 死因、極度の栄養失調。


 また被害者は極度の骨粗しょう症、低体重である事が確認されている。

 携帯電話の写真の日付から考えるに、発症したのは長く見ても1ヵ月以内と推定される。


 遺体の写真の隣に川上の生前の写真が添付されている。

 平均体重程度の女性が木乃伊の様な姿となって死んでいる。


 あまりの変わりように、火泥は目を見張った。

 どういう事かと更に資料を読み進める。


 現場である自室に不審な所は無し。

 外部からの侵入や荒らされた痕跡は皆無。


 その他、警察への相談履歴無し。


 腹部から飛び出した生物に関しては現状、調査中。

 液体金属様の形質が確認されている。

 以上。


 資料はここで終わっている。

 少ない情報から火泥は仮説を組み立てる。


 まずはこのメールがチェーンメール――悪戯――なのか本物なのか。

 記載されている住所を調べるとそれらしき店があった。


 そして、これは本当にこの店から送られてきた物なのか。

 現時点では不明の為、聞き込みの必要がある。

 

 メールが本物だった場合、真っ先に死因として浮かぶのはメールに書かれていたスーパーフードとやらだろうか。

 アンチエイジングだのデトックスだの、全く関わりの無い世界に踏み込んだ気分だ。


 生活安全課自体に薬物を取り扱う部署は無い。

 だが非行青少年や地域の取り締まりで出てくる事は多々ある。


 違法薬物でなくとも、個人輸入の薬物や妙なダイエット食品での死者と言うのも少なくは無い。

 刑事事件にならない、そういった事件も扱った事はあった。


 だがここは公安局である。

 普通の薬品の死亡事件が入って来る筈も無い。


 その程度の警戒心は火泥も持つようになった。


「そういえば警部補達は……」


 そう言って火泥は水引達の姿を探す。


「別件の聞き込みに行ってる、そういえばあっちもチェーンメールか」

「そうですか」

 

 火泥はメールを見直しながら局内の様子を窺う。


 薄暗い局内では誰かが慌ただしく動いている。

 その顔触れが同じだった事は一度も無い。

 

 普通の――と言っても公安であるのだが――職員、目隠しをしている六付きと呼ばれる職員。

 そして更に闇深い職務の人間、も居るだろうと予想している。

 

 そういえば、と火泥は前の事件を思い出す。


 母子草、若美、両名の口振りからして、あれらは元々国に奉仕する為の機密である事が伺える。

 だが積極的に機密をばら撒く、秘密を誇示するような不可解な言動が見られた。


 それらは職員達の隠蔽すら飛び越え、結果的に火泥が公安局に入る原因にもなっている。

 一体何が起きているのか――。


「火泥」

「はい!」 


 急に呼びかけられ思わず大声で返事をする。

 火泥の妙な様子を気にも留めず氷室が話を続ける。

 

「このレストラン」

「聞き込みしますか」

「うん」


 そう言って立ち上がる氷室を火泥は止めた。

 氷室が不可思議な顔をしているが、何故そんな顔をするのか。

 

「?」

「寝て下さい」

「……一徹位」

「寝て下さい」

 

 不満そうな氷室を他所に、火泥は単身、ファラリスへと向かった。

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