16話 真実
妙な音……足音だろうか。
洞窟の奥から聞こえてくる。
俺とクレハは顔を見合わせた。
そして、洞窟の奥を伺う。
すると、そこには恐ろしい見た目の、人型の生物が複数匹がいた。
それは……ゴブリンの群れだった。
さあっと顔が青ざめる。
この洞窟は危険な生物はいなかったはずだ。
なのに、なぜ?
俺たちは駆け出し冒険者で、大した力はない。
一匹ならともかく、複数のゴブリンを倒せるかどうか。
唯一の頼みの綱は、クレハの女神の力が生み出す斬鉄剣だが……これはあくまで威力の高い武器という程度で、結局は俺の技量がなければ、意味がない。
それでも、俺はクレハに斬鉄剣を出すように頼んだ。
「はい……!」
クレハはうなずき、そっと俺の手を握る。
そして、つないだ手から、真っ赤な刀身の剣が生み出される。
俺はそれを手に握った。ずっしりとした重みがある。
ゴブリンたちはこちらに気づかなければよかったのだが、そうもいかなかった。
すぐに相手はこちらへと駆け寄ってきた。
背後にクレハをかばうように、俺は立った。
「ロッカクさん……わたしを……守ってくれるんですか?」
「必ず」
俺は短く答え、そして斬鉄剣を振るった。
ゴブリンの棍棒を斬鉄剣で受け止め、そして、剣をゴブリンの胴へと一閃させる。
急所をとらえ、ゴブリンの体を剣は両断した。
返す刀でもう一体を倒す。
だが、俺は自分の後ろに注意を払わなさすぎだった。
「ロッカクさん……!」
振り返ると、クレハがゴブリンに羽交い締めにされていた。
ゴブリンはゲタゲタと笑いながら、クレハの青い制服のスカートを破った。
「やだあっ! 見ないで………ください、ロッカクさん」
クレハが悲鳴を上げ、そして弱々しく俺を見つめた。
クレハは上着のブレザーもびりびりに破かれ、ぼろぼろの制服からは白い下着が見えていた。
ゴブリンはさらにクレハに手を伸ばそうとする。
俺は頭に血が上りそうになった。こいつらは、クレハを人質にするつもりなのだ。
「ダメです……逃げてください! ロッカクさん」
「そういうわけにはいかないよ」
しかしクレハを人質に取られている以上、抵抗できない。
ゴブリンは身振りで、俺に剣を捨てるように命令した。
俺は斬鉄剣を放り投げた。
クレハが悲痛そうに俺を見つめる。
「いいんです。わたしのことは見捨ててください。だって……わたしは本当だったら生きていないんですから」
「え?」
「このままだと、またロッカクさんがわたしを助けて死んじゃいます!」
「それって……」
「ロッカクさんが死んだとき、通り魔からかばった女の子は……わたしだったんです」
クレハは泣きそうな表情を浮かべ、そして青い瞳で俺を見つめた。
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