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黄昏の聖女

オッサン令嬢と婚約破棄したい!~修行中~

作者: おじゆり

男性と男性が婚約している描写がありますがボーイズラブではありません。

コメディ。


俺にはロザリア・ガーランドという同い年の超絶美少女の婚約者がいる!(ことになっている)

今は、俺は婚約者に励まされながら、魔法学園の修練場でサラマンダーとの契約に臨んでいる!


「ウィリアム様!もっと腰を低く!!そんなんじゃサラマンダーは契約に頷きませんわよ!!しかし眼力は込めるのです!!絶対に目線は反らしてはいけませんわよ!!それでいて土下座姿勢をキープですわ!!!」


ツンデレ美少女がプンプンしながら応援してくれるのを想像しました?

残念ながら、俺の真横で熱心にドスの聞いた声を響かせるのは、パツンパツンの女子制服に身を包んだ見た目30代後半のイケメン男性(ロザリア・ガーランド伯爵令嬢)である。


美少女の婚約者=オッサンでないといつから錯覚していた……?


何を隠そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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オッサンと出会ってから知ったのだが、俺は魔眼持ちで幻術などを見破る目を持っているそうだ。

オッサンは魔法で美少女に化けているので俺には普通のオッサンが女装しているようにしか見えないのだ。


なので一か月前の、婚約者の初顔合わせでパツンパツンのドレスに身を包んだオッサンを見たときは恐怖で失神した……。

たった一ヶ月前の話なんだな……。


オッサンがなぜわざわざ魔法を使い美少女に化けているにもかかわらず女装し、学園に潜り込んで俺に修行をつけさせているかというと、「俺との婚約を破棄するため」ということに尽きる。


そもそもなぜオッサンと俺が「婚約」しなければならなかったというと、オッサンが「黄昏の聖女」で俺が「贄の魔力持ち」だったからだ。

「贄の魔力持ち」の血肉は魔族の魔力を増幅する効果があり魔族に狙われやすい。

オッサンは「婚約」という縁で俺を保護してくれており、なおかつ魔族から自衛できるように魔法学園に通わせて修行をつけていてくれているのだ。


そしてオッサンが女装している理由。


オッサンが「黄昏の聖女」という強大な力を持つ「聖女」だからだ。

オッサンが聖女とは……??

いや、ここは気になるところだが、とりあえず話を進めさせてくれ。


「黄昏の聖女」は世襲制で、初代「黄昏の聖女」の子孫たちの中から一番魔力が強い人間が「男女関係なく」選ばれる。


しかし、「黄昏の聖女」はその名の通りそもそも「女性がなるもの」、だったらしく、ある魔術制約があるのだ。(制約をつけることにより、それを対価としより強力な魔法が使えるようになる。)

それは「令嬢」でなければ「黄昏の聖女」としての魔力が使えない、というものらしい。

「令嬢」の判定はとりあえず「令嬢らしい服装」と「令嬢らしい言葉遣い」だそうで、それさえ満たしていれば魔力は使えるらしい。

より強力な魔法や儀式には「縦ロール」や「化粧」など細かな制約がつくようだか…(※どんな地獄だ…)。

オッサンも好きで女装しているわけではないので、この適当さだ。

しかし中途半端な女装のせいで余計、地獄味が増えている気がする…。


魔眼持ちの俺以外の人間には、オッサンの魔法によって可愛らしい14歳の令嬢に見えているらしい。

よってこの視界の暴力には俺だけがさらされているのだ。


…………。


まとめると俺が使い物になるようにならなければオッサンが、生涯をかけて俺を守護せねばならず最終的には結婚しなければならないため、オッサンも死ぬ気で俺を鍛えている。オッサンも俺も普通に女の子が好きなのだ。


というわけで、今日は魔法の初歩、精霊との契約に臨んでいます!!

精霊と契約しなくても魔法は使えるが、より強力な魔法を使うには精霊との契約が必要だ。

将来的に狙いに来る魔族を自分で撃退しなければならないため、絶対に契約しなければならない。


でも大胸筋矯正サポーター(上半身をバネで拘束するような器具。オッサンが持ってきた……)をつけながらサラマンダー(火の精霊)にガン付けたまま土下座2時間はそろそろキツイ…。ちなみに寝るとき以外は何らかの矯正器具をつけさせられている。普通の生活をするだけで体を鍛えられるから時短になるんですってよ。オッサンが言ってた。マジ一分一秒も無駄にしないスタイルな。

でも卒業までに婚約破棄したい!!!


「お願いします!サラマンダーさん!!俺のもの(契約精霊)になって下さい!!!!」


じゃないとこの先地獄なんじゃあ〜!!!

血走った目で必死に思いを伝えると、燃え盛る小さなトカゲさんはビクッと震えた。

お、俺の真剣な思いが届いたかな!!?


「頭が高い!!押しが弱い!!もっと情熱的に!!!」


オッサンのブーツで頭を踏みつけられ顎が床に刺さる!痛ぁい!!大胸筋矯正サポーターがギシギシ俺の体を締め付ける!!死ぬぅ!


「お願いしまっす!!!サラマンダーざんっっ!!!俺と契約して俺のもの(契約精霊)になってくださいお願いします大事にします!毎日石炭ご馳走しますからぁっっ!!お願いじまっずぅぅぅ!!」


鼻水も涙も垂れ流しの俺を見てサラマンダーさんが後ずさりしている。ごめん、サラマンダーさんと契約しないとオッサンとの結婚がぁ…!現実に!近づいてしまうんだよぉ!!

オッサンも俺も不幸になってしまうんだよぉ!!


「俺を救ってくれるのはサラマンダーさんしかいないんですぅううう!!お願いしますぅぅうあああああっ」


ぴぎゃっ!!っとサラマンダーさんが泣い。

その目からは恐怖のあまり?の涙が溢れている。

俺はその涙の結晶石めがけて土下座姿勢のまま契約書を加えてジャンプする。

スライディング土下座ジャンプ!!!


おおーーーっと ウィリアム選手 ナイスキャーーっチ!!!


契約書にサラマンダーさんの涙が吸い込まれて、契約書が青白い炎に包まれ、キラキラと青い光の粒に変わるり、俺とサラマンダーさんに吸い込まれていった。

契約完了!!!


「サラマンダーさんありがとおおおお!!!」


サラマンダーさんに抱きつこうとした俺から、サラマンダーさんはびゃっと逃げて、オッサンの後ろに隠れてしまう。


「お疲れ様でしたわウィリアム様!ナイスファイトでしたわよ!!」


学園イチの才女、ロザリアさんがウィンクして俺を褒めてくれている……そうなのだが俺には女装したイカツイオッサンが、可愛い仕草で褒めてくれているようにしかみえずげんなりしてしまう。


「うう……ロザリアさんは美少女、ロザリアさんは美少女…ロザリアさんは…」


「おい、やめろ。変に思い込もうとするな。気持ち悪いだろうが。」


オッサンが小声で周囲にわからないように、めっちゃくちゃ嫌そうな顔で言ってくる。

いや、オッサン、常時視界にあなたの姿が見えている俺のことも考えてくださいよ。。

魔眼持ちのせいで俺あんたのことオッサンにしか見えないんですからね。。

視界の暴力なんですよ!?


「とにかく、サラマンダーと契約できたのは上出来でしたわね。次はウンディーネとの契約を目指しましょうね!貴方なら出来ますわ!ウィリアム様!バリバリ行きましょう!!」


「ふぁい……」


修練場で俺の頭を踏みつけてサラマンダーに土下座させている姿を誰かに目撃されていたらしく、ウィリアム・トーチの婚約者、ロザリア・ガーランド嬢は学園一の美少女にして才女であり、婚約者に対してはめちゃめちゃにスパルタ……ドSだという噂が学園内に駆け巡った。

その後、俺はその筋の生徒から尊敬と羨望、もしくは嫉妬のまなざしを受けることになった。




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ロザリアさん(オッサン)の声は中田譲〇さんのイメージです。


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