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Weezer 『Weezer (The Black Album)』(2019年)

●グッドメロディのモダンで洗練されたオルタナティブロック


こういう高品質で表現的に中庸な作品が一番レビューしづらい。もちろん、アレンジに鍵盤をメインに用いるなど、これまでのWeezerからの変化という特筆すべき事項もあるのだが。だが、好きになったアルバムのため、なんとかレビューしようと思い、この文章を打っている。


高品質で中庸な作品の場合、僕がレビューで用いる手法は、この音は〇〇を象徴しているという、メタファーの解読手法だ。だが、英語詞では僕の英語への理解が不足しているのでやりにくい。


メロディーも良いし、アレンジも良いし、言うことありません。ただ、エモというジャンルの立役者の一つのバンドとなった、あの頃のナード(オタク)としての情熱はどこへ行ったのやら。僕は『Pinkerton』(1996年)の「Across The Sea」を高校生の時に聴いて本気で感動して、彼らのエモを直にハートで感じていたのです。


あれから幾数年経って、リヴァース・クオモも2006年に結婚し(日本人妻!)、ナードだから分かってもらえないという鬱屈した情熱を発散する必要もなくなったのかもしれない。1stアルバム(1994年)において、適度に重みのあるギターサウンドと甘やかなメロディーで「僕以外に笑いかけない女の子が欲しい」とナードの思いをピュアなボーカルで歌っていたリヴァースはもういない。とっくのとうに。音楽性までギターロックでなくなってしまった。


本作『Weezer (The Black Album)』はその時点からの音楽的成長が見られる作品だ。アルバムを重ねていくにつれて、パワーポップの一直線的ゆえに美しいアレンジから進化してきている。本作はアレンジの多彩さが際立ったアルバムだ。一曲ごとに、それぞれの曲の世界観がある。ベックっぽい感じとファンクなビートが絡む「Can't Knock The Hutsle」や、縦ノリダンスロックの「Living In L.A.」など、各曲のアレンジは実にカラフルだ。とびっきりキャッチーなメロディーとサウンドなのに、リヴァースの歌唱が平熱以下というギャップが愛おしくなる「Zombie Bastards」はオススメだ。


歌詞で共感したのは、1番の歌詞で、ある人から感想を聞かせてとCDを渡され、途中まで聴き、その人のバンドの音楽はクソだと思って聴くのを止めたという「I'm Just Being Honest」。歌詞の主人公はクソだと思ったことをその人に伝えてしまうんだよね。「僕はただ正直であろうとしているだけだ」と。僕も音楽レビューをやっていく上で、クソだと思った音楽のことは正直にそう言いたいけれども、その音楽に対して最低限の敬意は持った上で批評したい。あらゆる表現には、表現した者自身の魂が宿る(魂という言葉は陳腐だが、他に代替する言葉が思いつかない)。魂に優劣はないから、どんな魂や表現も尊重すべきだろうと思うのだ。クソだと思った音楽は、ただ自分に合わなかっただけなのだ。音楽に善し悪しはない。スポーツと違って勝ち負けではない。ただ、自分の求める音楽ではないという話。


話が長くなってしまったが、「I'm Just Being Honest」の歌詞は音楽好きならあるあるで、Weezer にはそういった想像しやすいシチュエーションを描いた歌詞の曲が多く、だからこそ、Weezerに対して親しみやすさを感じるリスナーも多いのだろう。


リード曲「High As A Kite」は、オアシスやビートルズっぽいバースから、凧のように飛翔して音楽的快感を得られるサビへ行く。その他の曲もサビの即効性が高く、ポップソングとしてオーソドックスな作りをしていることが分かる。


過去のWeezerと比較してのトピックはあるが、音楽的目新しさはない。だが、ウェルメイドなロックアルバムであることには間違いない。モダンなオルタナティブロックを聴きたかったら、本作をおすすめします。歌唱は熱量のさじ加減が絶妙でカロリーが低く、アレンジも情報量が適切なため、いつまでも聴いていられるアルバムです。


Score 8.0/10.0

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遊道よーよーの運営する音楽ブログ『とかげ日記』です。
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