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Beirut『Gallipoli』(2019年)

●歌メロが平坦な分、楽器隊がエモーショナル


ワールドミュージックとインディーロックが交錯するアメリカのバンドの5作目のアルバム。


人間の生体リズムに適した音楽であることが聴いていて分かる。ゆったりとしたリズムの音楽で、聴いていると、落ち着くし、気持ち良い。こういった音楽は、BPMの速さで音楽の良さをごまかしたりできないから、バンドの実力が如実に表れる。


また、とても人間味がある。歌声や楽器隊の一つ一つの音がオーガニックで、人の意図が込められている。インストルメンタル曲も技巧が凝らされていて飽きない。電子音楽の無機質な音楽に対抗できる、手作りの音楽だ。


電子音楽の先進性を大胆に取り入れない音楽は、時代性という点に関して、現在演奏する意味があるのか僕は常々疑問に思っている。今の時代は電子音楽の進歩と共にある時代だからだ。だけど、本作のホーンセクションが人間味を持って叙情的に鳴り響いているのを聴いて、あ、いいなと思ったりする。今の時代は、電子音楽を大胆に取り入れた、時代に則した音楽を求める層と、時代に関係なく電子音楽以外の質感の音楽を求める層で二分化している時代なのだろうと思った。そして、それらの層は重なり合う。本作においても、電子音楽の恩恵を受けた箇所が存在するように。


本作『Gallipoli』の演奏には、情緒がある。演奏のクレッシェンドやデクレッシェンドから生まれた繊細なダイナミクスによる情緒は、現在生まれている他の音楽の大半にはないものだ。他の音楽がボーカルだけ情緒的なのとは違う。抑制したり、高揚したり、演奏にしっかりとした手触りと情感がある。


ただ惜しむらくは、歌メロに起伏がないこと。僕の耳の練度が劣っているせいだと思うが、サビがどこか分からない。これだったら、日本のBeirutと呼ばれる笹口騒音オーケストラを聴くよ(笹口騒音オーケストラもサビがない場合が多いけれども、歌メロにドラマがある)。しかし、邦楽のサビのエモさは、このバンドにおける楽器隊のダイナミクスのエモーションで代替できるだろう。特に、オープナーの「When I Die」のこれからアルバムが始まっていくことを期待を持って実感させるオーケストレーションや、「Family Curse」の中盤以降の楽器隊が燦然と煌めく盛り上がりには感動する。本作『Gallipoli』は歌メロのメロウさ以上に、楽器隊の熱演に心を動かされる作品なのだ。


Score 7.0/10.0

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