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Arctic Monkeys『The Car』(2022年)

●うーん…


2002年結成の四人組バンド「アークティック・モンキーズ」(Arctic Monkeys、日本での略称:アクモン)が放つ7枚目のニューアルバム。


彼らの初期の音楽は、スタイリッシュでワル(不良)の色香がした。ワイルドかつエレガントを体現したようなギターサウンド。2006年発表のデビューアルバム『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』に収録されている「I I Bet You Look Good on the Dancefloor」に度肝を抜かれたリアルタイムのリスナーも多いだろう。


邦楽ロックへの影響も色濃く、ミイラズ(廃刊したスヌーザーの一推しバンドでもあった。「ハッピーアイスクリーム」と「神になれたら」を聴きたいので初期作品のサブスクを解禁してほしい。)はモロに直接的な影響を受けているし、常田大希(King Gnu / millennium parade)もアクモン好きを公言している。そういえば、神聖かまってちゃんのワンマンライブの開演前にもアクモンがかかっていた。2010年代以降の日本のロックバンドの基礎教養としてもアクモンはあるかもしれない。


「Brainstorm」(2007年発売の2ndアルバム『Favourite Worst Nightmare』に収録)は当時の女性たちにはたまらなかっただろう。男の僕もグっとくる。破壊力のあるイントロの高速ギター、そしてそれと対照的な甘いマスクのアレックスのセクシーな歌唱。


世界を一気に構築するギターを含め、豪快に本能をかき鳴らすような楽器隊、確かな世界観を感じさせるボーカル。全てがパーフェクトだった。そう、2ndアルバムまでは…(正確に言うと2ndアルバムの前半までは…)。


レディオヘッドが3rdアルバムから実験色を強めるように、アクモンも3rdアルバムからインディー色を増していく。タイトなロックンロールは2ndまでで極めてしまったからだろう。しかし、2ndアルバムまでで巨大なファンダムを獲得していたから、作風の変化でファンが減ってもバンドを続けられたのだろう。


3rdアルバムから、AORをArctic流で表現したようなアダルトでモダンな音空間が展開していく。ワルというよりもエレガントに重きを置いて成熟し、緻密に計算されつくした音のテクスチャーにただ感服するしかない。本作『The Car』の一曲目「There’d Better Be a Mirrorball」からしてどっしりと腰を据えた大人の音楽だ。アルバム一枚を通してストリングスの豊かな響きが僕の心を優雅に捉える。そして、『The Car』という簡潔なアルバムタイトルやジャケット写真どおりのシンプリシティの美しさが光る。


上記のとおり、本作も客観的に良い音楽なのは分かる。だが、主観的にはハマれなかった。それは歌としての旨味がないからだ。レディオヘッドの3rdアルバム以降が僕にとって魅力的なのは、音楽の実験性と美しい歌ものとしての引力を両立していたからだ。 アクモンは正直に言って、昔の方が好きだったよ…。 しかし、デビュー当時から現在まで一貫する湿り気やサイケ味がない乾いたストイックな音楽性のクールさを僕は支持してもいる。


Score 6.8/10.0

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