Clap Your Hands Say Yeah『The Tourist』(2017年)
●数年前までファンでした
Clap Your Hands Say Yeah(クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー、以下CYHSY)は昔は好きでよく聴いていたんですよ。セルフタイトルの一作目(2005年)のローファイな作りも好きだし、二作目『Some Loud Thunder』(2007年)の歪ませた音による実験的なアプローチも好きだし、三作目『Hysterical』(2011年)の普通のロックバンドとしてたたずもうとしているのにフリーキーな本質が隠し切れていないところも好き。
ただ、前作であり四作目の『Only Run』(2014年)は機会を逃して聴いていなかったんですよ。そうしたら、音楽ブログ界隈では今までで一番の傑作だって盛り上がっていて、自分が1stから追いかけていたCYHSYが目を離した隙に他の人に盗られてしまったみたいで少し悔しい思いもしていました。だから、後追いで聴くこともせず。
今回、CYHSYの新作が出ると聴いて、しばらく離れていたCYHSYのモードを知りたくてCDを買ってみました。今のCYHSYはどうなっているのだろう? ウェブサイトの情報によると、『Only Run』の前にメンバーチェンジを行っているようだが…?
●聴いてみた
聴いてみると、過去作に比べて音響のドリーミーさが際立つアルバムになっていると感じた。ギターと鍵盤のウワモノが残響しながら絶えず享楽的に鳴り響く。リズムに工夫を凝らしているのも特徴的だ。
フロントマンのアレック・オウンスワースのヘロヘロ声がサウンドをバックにしてドラマチックに波打つところは今までと変わらず。
このドラマチックの具合はアメリカインディーロック界のMr.Childrenと呼ぶべきか。CYHSYの曲は、メロディーにもアレンジにもMr.Childrenの曲と比肩しうるドラマチックな要素がある。
ここで、Mr.Childrenと並べて語ることはCYHSYに失礼だと言う人は、Mr.Childrenを過小評価しているし、Mr.Childrenに失礼だと言う人はCYHSYを過小評価している。CYHSYの曲は、Mr.Childrenと同じくエルヴィス・コステロの匂いがかすかに漂うのも共通点だ。
曲がドラマチックであることは僕にとって重要な要素だ。ドラマチックであることは感動を呼び込む。僕はエンターテインメントも芸術もいかに人に感動を与えるかが肝要だと思っている。感動を目的にするのは間違っているけれど、何の感動ももたらさない作品は僕にとって関心の対象にならない。
本作『The Tourist』(ザ・ツーリスト)、早くもお気に入りです。ドリーミーな響きとドラマチック性の相性は抜群。心の渇きを潤すカタルシスが残響するこのサウンドにずっと浸っていたい。
Score 7.5/10.0