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Weezer(ウィーザー)『OK Human』感想&レビュー【チェンバーポップの佳作】

●ポップで痛切なチェンバーポップの佳作


Weezer(ウィーザー)のアルバムは、僕は2ndアルバムのピンカートンでハマり、3rdアルバムの"Weezer(Green Album)"でますますハマり、4thアルバムの"マラドロワ"がよく分からなくてリアルタイムのWeezerから離れたクチだ。


しかし、"Teal Album"が話題になってWeezerが気になり出し、"Weezer(Black Album)"が素晴らしくてリアルタイムのWeezerリスナーにカムバックした。2001年発表の"Green Album"から2019年発表の"Teal Album"まで間が空いてしまったが、その間もアルバムから単曲で好きだった"Beverly Hills"(5thアルバム"Make Believe"収録)や、僕が名曲と崇める"Across The Sea"(2ndアルバム『ピンカートン』に収録)を度々聴き返していたので、Weezerは自分から近い存在だった。


"Teal Album"でカバーした曲の原曲はどれもキャッチーな歌メロと特徴のある演奏の曲で、難解なものは一つもない。ハードロックの定番曲"Paranoid"(ブラック・サバス)とマイケル・ジャクソンの"Billie Jean"が並ぶ奇想天外な選曲だが、歌心のある曲を中心に選曲したという印象だ。Weezer独自の解釈はなく、原曲を素直にカバーしつつ、歌心を大事にした味付けをしている。


"Weezer(Black Album)"はアレンジのメインに鍵盤を用いるなど、これまでのオリジナルアルバムからの変化を感じさせる作品だ。パワーポップの一直線ゆえに美しいアレンジから、アルバムを重ねるにつれて徐々に音楽性に幅が出てきた。ベックっぽい感じとファンクなビートが絡む「Can't Knock The Hutsle」や、縦ノリダンスロックの「Living In L.A.」など、各曲のアレンジは実にカラフルだ。とびっきりキャッチーなメロディーとサウンドなのに、リヴァースの歌唱が平熱以下というギャップが愛おしくなる「Zombie Bastards」はオススメだ。


最新作である今作"OK Human"には、僕の好きなアルバムに見られる歌心ある歌と特徴のある演奏の聴きやすさはあるのかが個人的に最大の争点だった。結論からいえば、"うた"としても”音楽”としても強度のある素晴らしいポップソング集だった。


また、徹底したアナログサウンドであり、エレキギターすら使っていない本作は人肌の音楽の温もりが詰まっていた。音楽リスナーは『OK Human』という本作のタイトルに対してRadiohead『OK Computer』を連想するだろう。だが、本作はComputerというよりもまさに対極にあるHumanらしいサウンドで、打ち込み全盛の最近の音楽へのカウンターになるだろう。


ところで、ある邦楽ロックバンドの新譜をレビューしようとしていたのだけど、音はカッコ良いがちっともポップじゃない。ポップでない曲なら、音楽的な深さだったり、他のギミックが聴きやすさのために必要。だが、それもない。記事を公開してそのバンドの未来に影響しないように、レビューの下書きをそっと削除しました。


それに対して、ウィーザーのこのアルバムはポップだし、音楽的な深みもあるし、ピアノがフィーチャーされ、ストリングスが入ったチェンバーポップであるというギミックもあるし、無双状態。コロナ禍を受けた歌詞も切実に刺さる。そして、一曲の長さが短い曲が多く、スルっと聴ける。


僕が特にオススメするのは、#2"Aloo Gobi"。キャッチーなサビからは痛切な思いが伝わってくる。ヴァースの"You are not alone"という歌詞もコロナ禍の今だからこそ伝えたい歌詞だろう。調べると、曲名の"Aloo Gobi"(読み:アルゴビ)とは、インド亜大陸のベジタリアン料理という意味らしい。この曲をAloo Gobiと名付けたのは、この曲をただ切実さを歌うだけには終わらせなく、その切実さから少しズレた遊び心も表現したかったのだろう。


#11"Here Comes The Rain"も、その曲名はビートルズの名曲"Here Comes The Sun"を遊び心を伴ってオマージュしたものだろう。彼らはこのコロナ禍にあっても、遊び心を忘れてはいないのだ。晴れではなく雨になっても良いことがあるというメッセージに希望を持てる。


#8"Bird With A Broken Wing"も素晴らしいバラードだ。そして、上記の#2や#8だけではなく、聴き込むと沼にハマってしまいそうなチェンバーポップの佳曲が本作では並んでいる。歌ものが好きな方や、ストリングスの美しい音色が好きな方はぜひ聴いてみてくださいね!

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