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ビリー・アイリッシュ『WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(2019年)

●低音ポップ革命


米カリフォルニア州ロサンゼルス出身の17才の女性シンガーソングライターBillie Eilishのデビューアルバムの感想&レビュー。


EDMでもIDMでもテクノ・ポップでもない電子音楽。無駄な音が削ぎ落とされ、強調された低音が鳴り響く。仮に、ELM(電子低音音楽、LはLowの頭文字)とでも名付けられそうなこの音楽は凄まじいインパクトを放っている。それは、僕にとって、Radioheadの『Kid A』やNirvanaの『Nevermind』、神聖かまってちゃんの『友達を殺してまで。』を初めて聴いた時の衝撃に匹敵する。


世界の音楽の潮流は、低音をいかに工夫するかに向かっているけれども、エレキベースよりも低い音は、僕はあまり好かないのです。エレキベースよりも低音で鳴らされるサブベースの音は、聴いていると暗い気持ちになってしまう。エレキベースは僕は好きなんだけどね。昔はバンドでベースもやっていたし。


ビリー・アイリッシュの本作でもサブベースが鳴っているが、曲の素晴らしさと低音が見事にマッチしているから聴きやすいんだよね。低音と狂気とポップが共存する、この音楽性は唯一無二だろう。


タイトルの『WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』は、リード曲の収録曲「bury a friend」の歌詞の一節から取られている。自分の中の怪物(安直に一言で言ってしまえば、「狂気」だろうか?)をどうすれば良いのか悩む、この歌はある一定の層の共感を持ってリスナー達に迎え入れられた。


狂気が躁方向に振れればセカオワの音楽になり、鬱方向に振れればビリー・アイリッシュのような音楽になる。明るいセカオワの音楽はマジョリティから支持されやすいが、ビリーの音楽を支持するのはマイノリティだろう。だが、マイノリティだからこそ、リスナーとビリーの間には特別な共犯関係が出来上がる。今、海外のマイノリティのリスナーはこぞってビリーを聴き、チャートを席巻している。ビリーの音楽はマイノリティの最大公約数だ。ニルヴァーナがチャートを席巻した時もこんな感じだったのだろう。


曲のタイトルが全て小文字であって大文字がないことや、失恋の歌が多いことも、リスナーとビリーの二人だけの秘め事のようであり、作品の世界観に貢献している。若干17才の天才少女が作り上げたこの世界観が「常識人」の大人たちに壊されないことを願っている。


革新的な曲だけではなく、「i love you」のような美メロの曲も作れるのが素晴らしい。「i love you」以外の曲も全体的にグッドメロディ。Radioheadは革新的であるだけではなく、美メロだから聴きやすいのと同様に、ビリー・アイリッシュも聴きやすい。切実な歌詞も刺さる。革新性以上に、良い曲を作るからこそ、海外のティーンの共感を集めるのだろう。


ところで本日、新元号が「令和」であることが発表された。安倍首相は新元号について「人々が美しく心を寄せ合う中、文化が育つという意味が込められている」と説明したが、ビリーの音楽には人々の心の中にある邪悪を通じて心を寄せ合う美しさがある。ビリーの心の中にある邪悪、そして邪悪の中にある愛に共感したリスナーは、ますます彼女のファンになっていくのだ。


Score 8.7/10.0

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