プロローグ
警報が鳴り響いている。
脱走がバレたのだろう。
「いたぞ!逃がすな!!」
戦闘員たちが問答無用で銃撃してくる」
「っ....」
「こんなところで、死ぬのも捕まるのも嫌ッスよ....」
太ももと二の腕を撃ち抜かれたが止まるわけにはいかない。
こんなところに留まっていたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ。ここにいたら殺される。
お前らの都合で生み出されて、期待外れだからって殺される。
そんな人生なんて嫌だ。どこか別の場所に行きたい。
「動け、自分の足...急ぐッスよ、自分...。時限室へ....」
どこか別の場所と言ってもこの時代じゃすぐに見つかる。
どこか過去へ。
あのマッドのいない時代へ。
「はぁ、はぁ...」
激しく痛む足を引きずり、いや、痛みに耐えながら走ること数十分。
「ついた、時限室....」
扉には強固なロックがかかっていた。
そもそもこの部屋のセキュリティは厳重だし、逃げたのがバレてるんだ当然だろう。
しかし。
「いくら自分が失敗作だろうと、技術方面は得意なんスよ」
ものの数秒で突破する。
「初めて来たッスけど、ずいぶんとごちゃごちゃした部屋ッスね。まぁ、それくらい複雑なシステムってことッスけど」
「これが時限門っスか」
時限門、読んで字のごとく時間を移動するための門。
つまりタイムマシン。
「ん」
やはりだがロックがかかっている。
まぁ、自分の敵ではないけれど。
「行き先は、21世紀。細かい年代は...ランダムで」
設定を終えて時限門を起動する。
『時空転移システム起動。転移予定者以外は門より離れてください』
ちゃんと起動してくれてあんしんした。
「これでようやく...」
そして時限門に吸い込まれていった。
過去の世界は雨が降っていた。
なんだか体にしみる気がする。
「これで、とりあえずは逃げ切れたッスよね...アレ、なんか、身体に力が......」
相当疲労が溜まっていたのかもしれない。
意識は深く沈んでいったのだった。