プロローグ
2年前 ロンドン
観衆の注目はステージ上で演奏している5人に注がれていた。
スッポトライトに照らされる5人の少年少女。
彼らの中には、まだ年端も行かない少女も混じっている。
普通は子供のステージなど誰もが見る気はしないが、彼らはただの子どもではない。
彼らは、何十、何万の中から選ばれてここに今立っている。
最初は、ステージ袖にいるアーティストやステージのすぐ下にいる審査員すらも聞く耳を持たなかったが、今は、彼らの演奏に聞き入っていた。
しかし、5人は周りの状況にも気にならず、ただ、黙々と淡々と演奏を続ける。
そして、演奏が終わると、スタンディングオベーションが起こり会場は今日一番の盛り上がりを見せた。
今日、この演奏を現場で見ていた人、インターネットで観戦していた人、目撃の仕方は人それぞれだが、 この場に立ち会えた誰もが彼らの演奏に感動した。
そして、それを見ていた4人の少年少女は夢に思う。
「「「「私もあの場所に立ちたい。」」」」
音。それは、物の振動によって生じた音波を、視聴器官が感じ取ったもの。
音。それは、この世のどこにでも発せられている振動。
音と言われ、一番最初に思い浮かぶものと言えば多くの人が音楽を想像する。
しかし、先ほど言ったように音はそれだけではない。
空から降ってきた雨が傘の上に落ちる音。
人が会話する声。
チョークで黒板に字を書く音。
机から消しゴムが落ちて地面につくときも音は発せられている。
この世は音に満ち溢れていており、毎日何百、何千、否、音はどこでも聞こえる。
これは、音楽に全てをかけた少年少女たちの軌跡の物語である。
そして、・・・今日。ここでも1つの音が響いていた。