表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

ジルと私

「芙蓉?」

黙りこんでしまった私に、ジルが話しかける

「ジル…」

「何?」

「ここから、どうやって戻ればいいの?」

「うーん、多分目が覚めれば戻っているはずだと思うけれど」

「…瞑想中だったの…」

「芙蓉は、瞑想中だったのか…ものすごい聖者なら、永遠に瞑想しちゃうかもしれないけど、どうだろう?集中力が途切れたら戻れるんじゃないかな」

まぁ、そうだろう。私は巫女になるための学習中の瞑想だ。どれだけ長く瞑想できても、数時間は無理だろう。時間の問題か…

「そうだね、色々とありがとう。ジルは目が覚めそう?」

「まだ大丈夫かな、今は芙蓉の側にいてあげるよ」

ジルが笑う

ジルは翼竜だけれど、表情がよくわかる気がする

そして、とても可愛い

始めは、意志の疎通ができるとはいえ、翼竜と出会ったことなどないので恐怖心もあった

ただ、未知のものは魅力的でワクワクする

そして、何よりジルは穏やかで優しい

「ジルが自分の世界に戻ったら、もう二度と会えないのかな…」

ふと、つぶやいてしまった

「そうだねぇ…普通に考えたら、夢の中で同じ人に会うのは難しそうだね」

ジルは困ったような顔をして答えるが、少し楽しそう…?

「芙蓉しだいかもしれないけど」

「私しだいって?」

「芙蓉は、瞑想中だと言ったよね?夢を覚えているかどうかは、目覚めてみないとわからないけれど、瞑想中なら、意識はある程度コントロールできているだろうし…」

「瞑想中に見たことは、確かに覚えているけれど」

「あとは、芙蓉が僕と繋がっていたいかどうかだよ」


『ジルと繋がっていたいって…』

なんだろう、この恥ずかしいような気持ちは…


「それにしても、芙蓉は僕を怖がらないね」

「ジルは怖くないもの」

「どうしてそう思うの?」

「…優しい、目をしてる」

「そう?でも、それなら芙蓉もすごく自然で…」

ジルが、ごにょごにょ言った?何?

私の顔が疑問符になったので、ジルは、ため息をついて

「…かわいいと思います…」

「…そ、そんな…」

私は、今どんな顔をしているのだろう…顔が熱い…嬉しい

「あの…立場上、不謹慎なのですが、ありがとうございます…」

ジルは、そんな私を見てふわっと笑った


それから少しの間、私とジルはそれぞれの住んでいる世界のことについて話した

ジルの世界では、翼竜や獣人や、いわゆる人類や

けっこう、色々な種類の生き物が意志の疎通ができる世界だが、

小さな争いもあれば、仲良くなることも珍しいことではないらしい

力を頼りにするものもあれば、当然恐怖心を持つものもいる

悪い奴はどこの世界にも、どんな種の中にもいる

そんな話にとても共感する

ジルはジルで、私の巫女という立場に興味を持ったようだった


突然、ジルが何かの気配に気づいたようだった

私の中にも何かが動く気配がした

「芙蓉、時間がきたみたいだね」

ジルは笑顔だった

「ジル、私ね…」


『また会いたい』


その言葉は、声にならなかった


意識が引き戻されるその時、

ジルは笑顔のまま、ゆっくり翼を揺らめかせたように見えた

それは、さよならなのか

再びの出会いを思ってくれたのか、知る術はなかった




もしも、読んでくださった方がいたら

ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ