送られたんだけど
マリアさんが話し出した。
「そうそう、ここの世界とはまた別に世界があるんだけど、ちょっとそっちの世界が困っててねー」
「……」
「人材確保の為にここの学校にいる人達全員が呼ばれたわけ」
「は?」
全員?この教室だけじゃなく?
俺は廊下に出て他のクラスを覗きに行った。
確かに居ない。
「マジかよ……」
「マジよ」
いつの間にかマリアさんが俺の後ろに立っていた。近い近い。良い匂い。おっぱい。
「まーさかトイレに居るとはねぇ、人数が足りないと思ったらねぇ」
「……で、今この学校にいた人達はそのもうひとつの世界にいると」
「そういう事よ!」
マジか。こういう事って本当にあるんだな。
「で、私は皆をあっちの世界に送って『優秀な人材』として活躍して貰うために、特殊なモノを賦与してるのよ」
なるほどな。俺はちょっと気になってた事を訊いてみた。
「なぁ、そっちの世界が困ってるって言ってたけどどんな風に困ってるんスか?」
「うーん、簡単に言えば魔王が世界を征服しようとしてる、って感じ?それで勇者が欲しい、異世界から呼ぼう、的な?」
「へぇ」
「安心しなさい、剣と魔法の世界よ!」
なにが安心できるのかわからないが、そんなファンタジーな世界があるんだな。
「改めまして、全知全能にして世界の創造、そして異世界への送迎を担当しています。神、マリアよ!よろしくね!」
全知全能と世界の創造はなんかすごいけど、異世界への送迎ってなんかスケールが違いすぎて悲しいな。
「で、人数調整の為に仕方ないからあなたも送迎してあげるわ」
人数調整?あー、はいはい。こいつ本当に神かよ。
「でもね、ちょっとタイムラグが生じてしまったから皆が着いた場所から多少離れるのよ」
「え?」
「時間が経てば経つほど離れちゃうの、だから今すぐ連れていくね」
「まて」
色々と準備が、を言おうとする前に既に俺の意識は底に沈んだ。
そして意識が戻ると神秘的な光景が目の前に広がっていた。
今まで見たことない美しい輝きを持つ色が俺の体を包み、そして前へ前へと運んでいるのだ。
「すげぇ……!」
「では、山田たけしさん」
いきなり真剣なトーンで喋り出すもんだから思わずこっちも真剣になってしまう。
「はい」
「あなたに特殊なモノを授けます」
おぉ!来たか!俗に言うチート!チート!
「それは特別な才だったり、力だったり、道具だったり、能力だったり様々です……」
「そしてそれは絶対にあなたの冒険を助けてくれます……」
「──では、あなたに……、ってアレ?」
「え?どうした?」
「ご、ごめんなさい、なんか賦与できないみたい……」
……は?