まっすぐ
ある日のことです。
道を歩いていると、男の子が道路の端っこにしゃがみこんで、地面を見ていました。
「どうしたの?」と聞くと、彼は「なくしたの」と言いました。
「何をなくしちゃったの?」と聞くと、「幸せ」と答えます。
「それならさっき拾ったよ」私はポケットから飴を取り出し、彼に手渡します。
「ありがとう」幸せは、二つになりました。
さらに道を歩いていると、今度は老婆がうずくまっていました。
「どうしました?」と聞くと、老婆は「重くて動けない」と言いました。
「なにがそんなに重いんですか?」と聞くと、「悲しみ」と答えます。
「それでは半分持ちましょう」私は老婆の手を取り語り掛けます。
「ありがとう」悲しみは半分になりました。
永い短い道の終わりに、貴方自身が立っていました。
「どうだった?」彼は聞きます。「良かったよ」私は答えました。
「ふぅん?本当に?」彼は可笑しそうに笑います。
「自分の幸せを半分にして、人の悲しみを背負ったのにかい?」
「良かったよ」もう一度、私は答えます。
「これまでの道のりで、後悔したり、来た道を振り返ったこともあったけど、まっすぐ立って歩いてこれた」彼は黙って聞いています。
「だからこうして、僕は胸を張って君に会えている。君の目をまっすぐ見ていられる」
「そうかい、それなら良かったよ」彼は満足そうに言いました。
「知っての通り、お前は俺に嘘をつけない。お前の罪を隠せない。偽善を。恥を。全て知っている。」
私の身体が消え始めます。
「俺から目を背けなくてもいいように、精々続きを頑張るこった」
「わかってるよ」私は応えました。