君は猫。僕は人。
君と暮らして何年がたったんだろうか。もう、14年は経ってる。
僕もだいぶ年を取った。もうすぐ50歳になる。
君はもっと年を取った。人間でいうところの80歳くらいかな。
でも君の目の輝きも、声の透明感も何も変わらない。
・・・体力だけはだいぶ衰えてきちゃったね。
君は寝てることが多くなった。病院に行く機会も増えて、僕は心配。
もしかしたら・・・
ああ 何で僕はそんな不吉なことばかり考えてしまうんだろう。
ごちそうさま。
ごちそうさま。
君は大好きなツナを食べて、僕は大好きなハンバーグを食べた。
僕らは満足そうにいつもの定位置、ソファに座った。
何でもないバラエティー番組を見ながらふたりで笑う。僕はアイスを食べて、君は氷を舐める。僕らは冷たいものが好きなんだ。
突然君がケホケホッと咳をした。大丈夫?僕は背中をさそる。
あんまり具合がよくないみたいだ。病院に連絡しようとしてスマホを取ると、君は僕からスマホをあの時のように奪った。
大丈夫。私は、あなたといたい。病院に行っても、寿命はどうしようもないのよ。
ねえ。また君は、僕を残していくの?
君はまたケホッと咳をしたかと思うと、コテンと横になった。
僕は急いで毛布を君に掛ける。
君は咳が落ち着くと、むくっと起き上がって僕の方へ歩いてきた。
そして僕の膝の上で丸くなった。
背中をなでる。
ポトッ
涙が君の毛布に落ちる。
君はそんな僕を見て、笑った。
「ねえ。君は、また僕を残していくの?」
君は 何も言わなかった。
ただ、いつものように微笑んでいた。僕だけを見て。君の瞳には僕しか映ってなかった。
「いやだよ。。。そんなの。。。ほらやっぱり病院に行こう。 お薬もらえば元気になるよ。」
最期に貴方と離れるなんて、私はやだわ。
「最期なんて、言うなよ。 君は僕のそばにずっといてくれるんだろ」
貴方は、もう受け入れられる。
「っ・・・・」
私が死んだという 事実を。
「 」
私も受け入れられる。 もう 泣かないで。
ほら、私の目を見て。
「私はここにいるよ。もうどこにも行かない。」
「君は。。。また僕を残していくの?」
私は、幸せだったよ。
大丈夫。
君と私はこの後、何度生まれ変わったって、巡り会うんだから。
私はちゃんと君のとこに帰ってきたでしょ?
ほら信じて。涙を拭いて。
そして、私にキスをして。
僕はそっと君を抱き上げて、キスをした。
「愛してる。これからもずっと、そうだね。次は僕も君も猫だ。」
君と僕は笑った。一緒にツナ食べようね。
一緒に桜見ようね。
おうちでゴロゴロして、テレビも映画もみよう。
音楽も聞こう。
「僕のとこに帰ってきてくれて、ありがとう。」
どういたしまして。
にゃあ
君は綺麗な声でないた。
そして君はゆっくりと目を閉じた。
またね。