一年目 夏休み
夏と言えば、青い海、白い雲、かき氷や花火。そして___
「「夏休みだあああああ!!!」」
「二人とも煩い」
「だって律花、夏休みだよ!」
「学校に行かなくていいし、何より遊べるんだぞ?」
__そう、皆大好き夏休みです。
「でも宿題いっぱいあるよ」
倫翔の一言で煩かったともと亮弥の動きが止まった。
一年生だからそんなに難しくは無いが、量はそれなりにある。
「…いつか終わるよ。な、亮弥!」
「…オレ、終わらないかもしんない」
「僕は終わるよ」
「私も普通に終わらせれる」
「ウソだろ!?」
宿題くらい毎日やっていけば終わる。
「律花はともかく、倫翔が終わるわけないだろ」
「…とも、倫翔は確実にお前より頭良いよ」
「何だと!?」
「えへへ~。でもリッカのほうが頭良いでしょ」
「そうでもないですよ」
「うーん、じゃあ好きな教科は?」
「国語です」
「オレ体育」
「オレ学活」
「とも、それ教科じゃない」
「僕は算数!」
算数…だと!?
「算数のどこが好きなの?」
「かんたんに解けるところ」
私には全く理解出来ないな…。何がどうなったら答えになるのかが全然分からないし、二桁以上の計算なんて頭がこんがらがって訳が分からなくなる。
「私は算数は苦手です」
「そうなの? じゃあ、分からないところがあったら僕に聞いて! 僕も国語で分からないところはリッカに聞くから!」
「あ、オレもいい?」
「オレは…どっちでもいいや」
教えあうのは良いことだけど、いざ自分が教えるとなると間違いそうで怖いな。
………そうだ!
「じゃあこうしましょう」
「?」
「学童に来たら、必ず一時間は皆で勉強する。その間は、絶対に遊ばない。分からないところがあったら聞く。宿題をそうですね…プリント五枚は終わらせる。…いわば、勉強会をしましょう」
これだったら直ぐに夏休みの宿題は終わる。しかも、夏休み中の学童は朝からあるので、朝のうちに勉強会をしておけば、お昼からは思いっきり遊べる。
「…」
「どう、でしょうか…?」
嫌だ、とめんどくさがるか?
「いいね!やろう!」
「オレもやりたい!」
「オレもやる」
…意外と食い付いた。
「じゃあ、明日からやりましょうか」
「今日からじゃないの?」
「いや、だって…」
「だって?」
「…夏休み初日ですよ? 初日くらい、思いっきり遊びたいじゃないですか」
「それって…」
「私も夏休み、楽しみだったんですよ」
たちまち倫翔の顔が輝いた。周りにキラキラが見えるくらい。
「よし、皆外に行くよ!」
「よっしゃー!遊ぶぞおおおお!!」
「夏休みだあああああ!」
「…今日は私も外に出るよ」
せっかくの夏休みだし、ね?
この日の空は、とても夏らしい透き通った青色だった。