二話 名前
主人公が活躍するのはきっと次回から
とりま、今話もよろしくです!
私が意識をしっかりと保つ事が出来る様になったのは産まれて一年が過ぎた頃からだ。その位からやっと思考という行動をとる事が出来た。
赤ちゃんの頃っていうのは基本的に寝ながら親の話を聞くか、食事、排便、睡眠。このくらいしかやる事がない。だから考える時間なんて有り余っている。その時間で私は自分の状況というのを振り返り纏める事にした。
まず一つ目。
『私はよくある転生をした』
これは否定しようがない。だって前世を覚えているから。
二つ目。
『この世界は現代に近く、場所は日本らしい』
病院の手術室と、母親と父親の会話で解った。八年後にはオリンピックが大阪で行われるそうだ。前世では東京だった筈。
三つ目。
『私は女の子である』
これは幸いだ。もし男に産まれたらショックが大きかっただろうな。ホントに運が良かった。いや、転生してしまった分私からしたら悪いとも言えるのか。
四つ目、これが重要である。
『私の名前は藍崎 唯雅だ』
・・・・・・実は私はこの名前に聞き覚えがある。間違いなくある。しかも私はこの名前を殺される寸前も考えていた。
私が狂っていなければ、この名前は恋愛シュミレーションゲーム『恋鎖の楽園』というゲームの悪役令嬢の名前である。
偶然同じ名前の可能性はある。いや、普通に考えたらそっちの方が高いだろう。
でも、
もし、俗にいう[ゲーム内転生]なんて事になっているとしたらどうだろうか。
それは、詰みってヤツじゃないよな?
今出たタイトル『恋鎖の楽園』は、恋愛シュミレーションゲームだ。まぁ、R17指定入るけども。主人公の女の子『皆川 秋香』が『私立籠賭学園』で三年間の学生ライフの間で五人の男性を攻略する。まぁ、この設定だけなら何処にでもありそうな普通のゲームだ。
しかし、残念な事にこのゲームを創っていた会社が普通とは言い難い所だった。『株式会社ムーンサイド』それがこのゲームを製作した会社なのだが、この会社がゲームを出す度にそのゲームをやるプレイヤーから来る決まり文句が酷かったりする。
『ムーンサイドはキチガイ』
『ムーンサイド製の車は必ず事故る』
『マジで狂気のムーンサイド』
と言った風に評判が酷い。しかし、それでもこの会社のだすゲームが大人気なのは、それを打ち消すキャラや壮大な設定、ストーリーがあるからだ。私もこの会社の作品好きだし。
実際、『恋鎖の楽園』も初めてムーンサイドがだした善意のゲームとか呼ばれていた。まぁ、三日後位には覆っていたけど。まず、何が酷いかというと、ヒロインが酷い。このヒロイン普通に各個人を攻略する通常ルートだと、まだ、納得できるくらいに普通なのだけど、問題なのはそれ以外のルート。所謂皆で仲良くハーレムルートというやつだ。このルートが酷い。まず、やってる事がとんでもないビッチである。これはハーレムの時点で仕方ないから許容できる。問題はその人数だ。五人ならいい。実際に五人のハーレムENDもある。しかし、フルハーレムENDってなんだ!?最大二十人の男性と肉体関係を持つとかいう最低ENDだ。しかもENDのCGが、主人公とハーレム二十人全員での集合写真!!
主人公だけが満面の笑顔で、主要キャラ五人は笑顔が引き攣っていたのがとても印象的だった。
これで終わるならまだいい。しかし、このゲームには致命的な酷さを持っている部分がある。それも私に、いや、まだそうかどうかはわからないけど。
そう、酷いのはゲームでの悪役令嬢の末路だ。
このゲームの攻略キャラは五人。その中には当然ある程度重い設定を持っている人間もいる。例えば攻略キャラ二人の親どうしが政治家と建築会社の社長で、癒着してたりとかがある。これでタチが悪いのがだ、そこからそれが実は悪役令嬢の『唯雅』にも関わっていたりして、後にそれで巻き起こる政争に巻き込まれて悪役令嬢の彼女『藍崎 唯雅』は殺される。
それも、全部のルートにおいて。十通りの殺され方で。
ヒロインよりもBADENDが作り込まれているある意味優遇されてるキャラだ。生存ENDがないともいう。
いや、ホントに酷い。しかも悪役令嬢とは言っても、主人公キャラの良識、いや、常識のない行動を注意する位しかしていないのだ。それなのにこの仕打ちは酷い。実際に苦情も来たらしい。更に笑えるのがこの悪役令嬢、主人公や主要キャラよりも設定がだいぶ作り込まれていたそうなのだ。それなのに、ゲームに出てくるのは、主人公と攻略キャラがより親密になろうとしてる時にタイミング悪く出てくる時とか、主人公に注意したり、十枚もある惨殺シーンのCGだけ。ついでに言えば、このゲームは三年の卒業式で終わるのだが、彼女はどのENDでも三年の一学期には必ず殺されてしまう。ムーンサイドは彼女に恨みでもあるのか。
と、こんな感じにこのゲームは酷い。他にも酷いとこは沢山あったはず、主にヒロイン関係で。まぁ、これは追々だね。
結論。
『これが悪役令嬢への転生だったら、私は高校生三年の一学期には必ず死ぬ』
笑えない。流石に前世より早く死ぬのは駄目だ。普通に考えたら私はこの娘の生を貰って生きている。それなのに、そんなに若くで死んでしまうのはそれに対して失礼とも言えるのじゃないか。と私は考える。例え貰うべきでは無かった命だとするなら、尚更私はこの命を簡単に捨てる事はできないから。
「唯雅ー、昼御飯食べましょうねー」
ん?もうそんな時刻だったのか。近くの時計をみると十二時を指している。私は最近出来る様になった、高速ハイハイで母親の元に向かう。周りにいた大人の人達が少し引いてるように見えるのはきっと気のせいだ。
そう言えば、藍崎家については語ってはいなかった。
藍崎家は、父親と母親、それに娘一人の三人家族だ。後は使用人としてのメイド二人、執事一人だ。両親の仕事は会社経営。話によると『九龍商会』とかいう会社を運営しているそうだ。これはゲームの中では語られていなかった。ただ、攻略キャラの一人の親と悪役令嬢の親が因縁があるとかは言われてたけど。多分、会社関係の事だと思う。いくら赤ちゃんしかいなくてももう少し話す内容は考えるべきだ。流石に仕事の話は子供の前でするべきじゃない。教育に悪いじゃないか。全く、私だから良かったものをね、実際の彼女には聞かせられないよ。R18的にね。
そんな事を、考えているとご飯が来た。今日のお昼ご飯はなんか高級感漂うお粥だ。お粥でもここまで高級感漂うものだとは、前世で庶民だった私にはビックリだよ。あ、お粥はとても美味しかったです。これに慣れたら他の食事がキツイかも、まぁ、味は薄かったけどね。
お粥を食べ終わったら、お昼寝の時間。ちょうどいいや。赤ちゃんだからか、私も眠かったんだよね。
それじゃ、おやすみなさい。
あれ、両親の仕事的にこれ確定してない?
次回『真実と現実』
それは、現実を受け入れた日。