6.伊坂なな
「あの、伊坂さん。ちょっといいですか?」
太陽の光を浴びてきらめくブロンドに目が眩んだ。彼女の眼は綺麗な碧色でお人形みたいに可愛い。
そんな考えとは裏腹に汗だらだら。えっ、私ヒロインにしめられたりするんだろうか。
「はい」
綺麗な人の睨みは普通の人に比べておっかな倍増だ。現在、リリアさんの後ろを消える思いで歩いております。
もういっそ消えたい。
人が余り来ない裏口に来たところで彼女は話し始めた。
「き、昨日見た事は忘れてください」
ガバッと効果音が聞こえそうなほど綺麗に頭を下げた。あぁ、私生きてる。なんて考えたのは内緒だ。
はて? 昨日は何を見たかな?
いやいや、忘れるはずがない。あの強烈な部活。
「えっと、【ホスト&キャバ】のことだったり……」
リリアさんは目を赤くして肯定する様に頭を上下に降った。
何も泣くか? いや、これは攻略対象に使う上目遣い泣き落としなのか。
チッチッ、残念ながら私はハイスペックヒロインより身長が残念ながら低い。
泣き落としはきかないぞ。
まぁ、だからなんだってかんじだ。
「なんの事? そんな部活あったっけ? 」
私が惚けたようにそう言うと愛らしい笑顔で微笑んだ。
「ありましたっけね。じゃあ、私は戻ります」
何だったんだヒロインよ。くだらない話しだったよね。私も来た道をだらだら戻る。朝から自教室だけどあの人の机の上に荷物を置くという、ミッションをクリアしてすぐにヒロインご登場は心が痛い。
緊張しすぎて死ぬ。
にしても、私よ鷹司さんの教室と席間違ってないよね。今更ながらに心配だ。
そして、もう一つ心配な事が。ここどこ?
うわぁ!!! この歳になって迷子とかドンマイじゃん私。
適当に歩いてればなんとかなるよね。
……適当に歩いていて気付いたこと。
この学園広すぎる。しかも、人が誰も通らないってどういうこと。
「潮くん、朝練お疲れ様」
綺麗なソプラノ。
この声は――
「あぁ」
――リリアさんと鷹司さん。
リリアさんサッカー部のマネージャーだったんだ知らなかった。
さすが美男美女。いつもならきゃーってなるのに。
胸がモヤモヤする。