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36.伊坂なな

 

今日、19:30深山展望台に集合。ななが来てくれないと俺野宿だから。受験生を風邪引かすなよー、じゃ!(*^^*)



このふざけたメールが届いたのは朝学校についてすぐ。取り敢えずスマホを再起動させ、その間に教室の窓から見える深山を探した。まず、どの山が深山だ? もう一度メールを開くと、絵文字もこみ正真証明何処から何処まで見返しても送り先は暁先輩。あの髪にあの難いでこの絵文字……繰り返すがこの絵文字!


「なーちゃん。朝から挙動不審だけど、何かありましたか?」


スマホの画面に視線を移すリリア氏。一連の珍行動をクラスメートにさらしてしまったんだね、私。


「おはよう、リリア」


「これはデートのお誘いですね! やりましたよ!」


すごい勢いで肩を揺らされる。酔うから吐くから神経が滅入ってるから。その隙を狙ったのかリリア嬢私のスマホを華麗に奪ったぁ!


「た、の、し、みにしていますっと、そーしん♪」


「ちょっと、待った」


チロリン♪


……はい、私の完敗ですよ。でも、でも、でも……。

リリアーーー!


「あ、地図が送られてきましたよ! 深山はあの端っこの山ですねぇ。問題解決しました」


「ちょっ、私行くって行ってないけど」


「誘われたら断るの勿体無いですよ?」


「まじリリアさんの笑顔天使だけど、なんか違う!」


はて、なんのことでしょう? って誤魔化してもなんか違う!


「まあまあ、落ち着いてください。暁はいい声してますよ?まぁ、ロゼッタのシンジには劣りますけどね」


あー、そう言えば暁先輩はバンドしてますね。リリアが先輩好きなのかなーと思って後おかっけたらリリアの新しい瞬間を目の当たりにしまったやつ。


「あはは……」


スマホの画面に視線を戻すと本当に地図が。うぷっ。

なんだろう凄い面倒な事に巻き込まれてる。これは吐き気だなー。駆け足でトイレに行くよ、ごめんよリリア。私はトイレに籠ります。


「ほんと、何処で間違ったかな。こんなに他の攻略対称に会うのに……」


鷹司くんには会えない。理由は簡単だ。自分がさりげなく距離をとったから。叶わない恋なんかに私は何時まで囚われる。距離が少しずつ離れるたび、自分がいつも通りなんだって事実に涙が出る程切なくて。


「あー、お腹痛い」


星か。流れ星って何気見たことないんだよな。きっと、まわりの事なんて考えられなくなる程綺麗なんだろう。

たまには空を眺めるのも気分転換になる。それに暁先輩といるのは正直楽なのだから。

 


《利用出来るもんは何でも利用しろ》



あの男はいつもそう言っていたな。


ーーーーーーーーーーーー


なながトイレに駆け込んだ頃、リリアからあーちゃんに伝わり柳原から鷹司くんに芋づる式で先輩と星空デートの噂はあっという間に伝わった。

そして、急遽開かれたのは女子会ならぬ男子会だ。といっても、柳原と鷹司くんの二人だけであるが。


「おいおいおい。どーすんだよ、潮。ななデートだってよ?」


「…………」


「潮ー! お願いだから現実に戻っておくれ」


「夏煩い」

 

「ちょっ! 心配してやってんだぜ」


「そもそも俺は……」


「あー、俺が悪かった。だから、落ち着け」


鷹司潮は感付いていることがある。それは自分を取り囲む人々でも分かってしまう。

 

――伊坂ななに距離をおかれている現状だ。


それと比例するように彼女は俺じゃない別の男と仲良くなる。

 

「先輩から誘われたんじゃ断れねぇーよ。そうだろ?」


そしてまた、柳原夏も悩んでいた。ななー、俺の扱いが雑なのは今回は不当にしてやる。だが、何故潮と距離をとるんだー!  

嫌いならいっそ、避けるではなく俺みたいな扱いすればいいだろーっという感じに。


「はぁ。ライバルを蹴落とすために俺は何をすればいいんだ夏」


「いやいや、潮。まじで落ち着けって。あー、葵! 葵とリリアと合流しようぜ。取り敢えず仲間を増やそうぜ?」


「……蹴落とす」


「潮ー!」


ぴろりんっ♪


《SOS! 至急、リリアをつれてカフェテリアにくるべし。つか、助けて葵‼》


「リリアが余計なことするから面倒が増えちゃったよ~」


「私はキューピットですよ?」


心底楽しそうにリリアは笑った。二人はカフェテリアに向かう。

ガヤガヤと騒がしいカフェテリア。その中でも鷹司くんと夏を見つけるのは簡単だった。


「鷹司くんがそんなに思い詰めるなんてなーちゃんまさに魔性の女ですね?」


「いやいや、ななちゃんのは無意識だから! どっちかっていったらリリアの方が魔性の女だってぇ~」


「私ですか?」


「そうだよ~」


「てか、二人ともそんな小競り合いしてる場合じゃないから! 思いの外に潮重症だかんな!」


柳原の一言で三人は改めて問題の彼を見た。

巷ではクールだとか、スマートとか言われているようには見えない。


「残念系イケメンで粘執とかすくいようありますか??」


ただでさえ辛気臭い雰囲気がさらに黒くなった気がする。リリアー! 少し空気読もうよ~。


「リ、リリアは少し黙ってよ~?」


は~い! そう言うと彼女は大人しく席についた。






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