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34.セーブ


前途多難な恋に気付かぬふりを決め込んだ子も、中々実らない初恋にやきもきして突っ走ってる子も、恋とは何から何かいまいちよくわかっていない子もみんな恋愛ズッコケ組。


乙女ゲームか何か知らないが、ヒロインが惚れっぽくて単純で無くてはストーリーは始まらない。


《恋は盲目》


答えは簡単である。恋に身をませたものが一番最初に笑うのだ。考えているばかりでは手にはいるものすらはいらない。


頭より体が動くなんてよく言うけれど、それは女の子達より男の子達の方。


ちょっと、覗いてみましょう。





鷹司&柳原


「最近、俺素直だよな!」


「いきなりなんなんだ」


「あ、お、いにだよ! 葵がモテるの知ってたけど、あんなにライバルいるとは思ってなかった」


「……お前は危機感が無さすぎるんだ。まぁ、今のお前は犬みたいだな」


「犬? あー、そう言えば葵も犬飼ってんだよー。チワワ。俺、葵の家のチワワになりてー」


「……お前がそれでいいなら」


「なんか言ったぁ?」


「いや、なにも」


「潮はもっとアプローチしろよ!」


「俺はお前と違って考えてる」


「んな事言ってると、副部長にとられるんじゃね? ……痛! ちょっ、お前今まじで殴った!」


「お前が縁起でも無いこと言うからだ」


部活終わりの帰り道。男通し積もる話もあるんです。



野々村先輩&梶先輩


「お前、桜葉の事好きなん?」


「雫は相変わらずしょうもないこと聞くよね、衝突に」


「しょうもないか? お前、モテるし」


「大丈夫。僕は伊坂さんの事好きではないよ、多分」


「話を変えるな」


「ははっ。伊坂さんの事そんなに好きなんだ。へぇ」


「1年に教えてあげたいぜ、お前の性格」


「雫と違って僕は周りから信頼されてるんでね」


「そーかよ」


「まぁ、強いて言うなら。彼女、馬鹿だよね」


「はぁ?」


「お子ちゃま雫ちゃんには分からないよ、僕は先生に呼ばれてるんだ」


「わるかったな、お子ちゃまで」


お昼休みの屋上は男の秘密基地。たまには休憩したいんです。



幸坂先輩&暁先輩


「うっわ。王子こんなこと居たのか。女子が探してたぞ」


「知ったものか」


「少しは構ってやれよ、構ってちゃんプリンス」


「少しは静かに出来ないのか、このバンドのおかん」


「心配してやってるのに悪態をつくのはこのくちかぁ?」


「痛い、やめろ頬を引っ張るな!」


「と言うか、そのおかんに面倒みて貰ってる分際でけしからん」


「……誰もそんなこと言ってない」


「なんか言ったか?」


「いいや」


「お前はよくこんな陰気臭いとこいられるよな」


「こんなところまで来ないと女子が着いてくるんだ」


「だからってなぁ、体育倉庫裏とか……いじめられてるのか?」


「お前は一言余計なんだ。……どうした、嬉しそうだな」


「あ、わかる? 昨日さ、普通の可愛い後輩とお知り合いになれたんだよ」


「それだけでか?」


「あー、確かに。アドレス聞きに言ってくるか」


「お前の行動力は見習いたい」


「お前はその見た目に反して、実は卑屈で臆病だよなー。まぁ、その容姿上手く使えよー。そのうち性格もついてくる」


「最初はボロが出るから止めとけ言ったのはどこのどいつだ」


「聞こえねぇーな。じゃ、俺は行くから。確か、リリアと同じクラスだって行ってたなぁ」


「おい! 待て。俺も行くぞ!」


体育倉庫裏、実はモテ男の避難場所。



歯車のピースは全部揃いました。


一番最初に幸せを手に入れるのは誰でしょう。


それは、まわりより少し欲張りになれる子達です。





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