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32.伊坂なな

ガンガンと鳴り響く音楽。ボーカルの掛け声に合わせて回りの人は跳び跳ねたり、タオルを回したり忙しそうだ。それでも、楽しそうに体はリズムを刻み皆がステージに釘付け。私は一人、またも場違いな場所にいた。  


(ホストより、まし。私にはこうゆうのわからないだけだし)


尾行の相手に自分の存在を感じられていないか視界の端で確認する。彼女は私と違いボーカルの掛け声に合わせて跳び跳ねていた。GW前にリリアちゃんが誘われていた暁先輩のライブ。私はその後のリリアちゃんのイベントで忘れていたのだが、偶々下校中にライブハウスに入る彼女をみつけて事を思いだしたのである。リリアちゃん、よく一人でここに入れたなー。前の記憶が鮮明に思い出されてから、冷めた高校時代を思いだし、イマドキの基準がわからなくなっていた。


「みんな、もりあがってるかぁー!」


『いぇーい!』


「もっと、先まで行こうぜー‼」


『ぎゃぁーー‼』



わぁー、きゃーを通り越してぎゃーなのね。黄色い声援の最終段階なのか?

でも、淑女の皆さん。私、少しついていけない……。

店内は薄暗くステージ中心をスポットライトで照らしている感じ。


「最後に一曲、《届けたい人がいる》」


今までのアップテンポの曲からうってかわって、恋愛バラード。

届けたい人がいる……リリアちゃんにでしょうね。でも、残念。彼女、何故か田中くんが好き? らしいので。私はサッカー部部長と副部長の線もまだ残ってる気がするけど……。暁先輩、私は応援してるよ。攻略対象の中でも、まだろくに話したことは無いけどね(笑)

バラードが終わると次のグループがすぐ入るらしく、さっさと撤退していった。

思いの外普通に終わった。なんか、もっと凄いのを想像してました。いや、私にとっては結構な場所なんだけどもね。


「あ、お前リリアと仲いいやつじゃん」


さっきまでステージの上にいたやつがどうしてここにいるだよ。しくじった。なんで、さっさとライブハウスから出なかったんだよー! 


「こういうの好きそうじゃなさそうだな」


好きじゃない以前の問題で興味からないです。と、心の中で悪態をつく。


「初めてきました。後はノーコメントで」


「ふーん。まぁ、いいけど。リリアと来たわけじゃ無いんだろ、送ってく」


うわぁー、紳士的。私にレディファースト必要ありませんから。

それよりも。


「どーして、一人で来たと思ったんですか? 別に連れがいても可笑しくないじゃないですか」


私がそう言うと先輩はごもっともと考えるポーズをし、答えを教えてくれた。


「どーして、か。んー。まず、リリアはガチ目の方のバンギャだから、バンギャ仲間としかライブハウスには来ねーよ。それに、初めて来たやつは大体わかる」


先輩は私のなんでという疑問を読み取りどや顔で言い切った。


「んなもん。長年の感に決まってるじゃん」


うん。先輩が柳原よりなのは今のでわかった。そして、リリアちゃんバンギャだったのね。知らなかったよ。あれ? もしかして……


「おい、もしかしてお前。俺がリリアの事好きだと思ったのか? 残念だったな。リリアが好きなのは俺らの後にでで来るビジュアルバンドだよ」


「えー」


ぱっと口を押さえる。余計だってば。今のが余計なんだよ、自分。

さっと、暁先輩に視線を映すと誰かさんとにた胡散臭い笑みを溢している。本能が逃げろと言っていたが時既に遅し。

頭をぐりぐりさられた。容赦も糞もなく本気だ。


「痛い痛いいだい‼」


「悪かったな、リリアとそうゆー関係じゃなくて」


滅相もないですと開放された自分の頭を擦りながら涙目で訴える。後輩に対して容赦無さすぎる。


「ほら、帰るんだろ」


なんで一緒に帰る事になってる?!

私は慌てて先輩の背中を引っ張る。


「うおっ。お前なー」


先輩は子供もをあやすように私に言いました。


「送り狼に会いたくなかったら、素直に送られろ」


あの時の先輩はガチ目に怖かった。生まれたての子牛見たいに足がガクガクななったけど、頑張って踏ん張った。

美形に凄まれると怖いの知ってるけど、先輩のはけた違いに怖かった。


「知ってると思うけどな、俺は暁悠馬。お前は?」


「……伊坂なな」


ふーん、ななかっ。じゃないよ。そんなこと呟くでない! 忘れろ‼

柳原と野々村先輩と鷹司くん的要素プラス俺様??

どんな性格してるだよ、先輩! しかも、面倒見もいいとかリスペクト!


「不器用かっ! いやー、最近ぶっ飛んだ女しか見てなかったから保養になるわ」


はい、先輩の目はちゃんとついているだろうか? 私、誰よりもイカれてると思います。

きっと、私の変人レベルについては田中くんがとてもとても詳しいですよ。悲しいくらいに……。


「それは、どうも」


駅で先輩と別れて電車に乗り込む。

 

ブブッと携帯がバイブしたのでポケットから取りだし、確認してみるとお母さんからだった。


《遅くなるときは連絡しなさい》


最後に怒っている顔文字つきで笑ってしまった。親との連絡なんて鬱陶しいものだと思っていたけど、案外気恥ずかしく楽しいなぁと思ってしまった。


《連絡しなくてごめんね。今、家に向かってます》


メールを返し、電車の窓から月を覗くと綺麗な満月だった。


ブブッとまたもや携帯がバイブして、次はなんだと確認すると鷹司くんから写真つきでメールがきました。


《月が綺麗ですね》


同じ月を眺めているのか。それだけで少し嬉しく感じてしまう自分にバカだなと思いつつ私は彼に返信しました。


《本当に月が綺麗ですね》


(それはそのままの意味で受け取った方がいいのよね)


都合のいい解釈をしてしまう自分に笑みが零れた。


―――貴方の事を愛しています。

 



1話1話が短いなぁと感じ始めたので少しずつ、長くしていけたらいいなぁと思っています。

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