21.伊坂なな
視界がもくもくしてる。あーーー。どうにでもなれ。この野郎。でも、お湯の温度は丁度いい。
「リリアちゃんのお肌すべすべだねー」
「そんな風に言われると照れちゃいます」
きゃっきゃっルンルン女風呂でございます。
うん。二人とも可愛いです、はい。
「伊坂さん元気無いけど大丈夫ですか?」
心配してくれるんですね、リリアさん。ありがとうございます。田中くん並に天使だす。
「もう駄目です」
はぁー。あっ!
助けてくれる女神ここにいるじゃん。
私のバカバカ。何も悩むことはない。気付かぬ間に男を何人も落としている方がいるではないか!
私はリリアさんの手を掴むと宣言した。
「歯の浮く言葉を流すコツを伝授して下さい!」
と、同時にこてんと頭を傾げるリリアさんと天敵野々村先輩の笑い声が男女お風呂場に響き渡った。
ん? あれ? どうしてこの声が聞こえるんだ?
「風呂場で恋話してんじゃねーぞ、なな助」
なな助? 私の事なのか?
まさかの話していた事筒抜けだったのか。
それより――
「いつ私が恋話したんですか」
「俺に乗り換える事にしたんだな」
ぼっとなった。いやいや、顔が赤いのはのぼせたせいだ。どうしてそうなったのか知らないが野々村先輩の頭は私並みにいかれてる。
うんうん。一人で納得してると、今度は野々村先輩の悲鳴が聞こえてきた。
「おい、誰だよ。桶投げたやつ」
内心、ナイスだ。とか思ったのは内緒だ。
その騒ぎの中黙々と頭を洗うあーちゃん。
騒ぎの中リリアさんはぽつりと呟いた。
「女子バナで恋話」
よしっと一人意気込んでいた。




