20.伊坂なな
「リリアさん。カレーついてるよ」
そういって、リリアさんの雪の肌についたカレーを頬に手をかけ親指で優しく拭った。ぼっと、顔が赤くなったリリアさん。その碧眼の瞳はサッカー部部長に注がれている。
美味しい。これはヤバイ。……勿論カレーが、はい。
べし。
あれ? 私誰かに頭叩かれた? いや、ぶたれた?
これは地味に――
「痛い」
「1年、お前考えてる事顔にでてんぞ」
私の頭痛め付けた犯人。サッカー部副部長、野々村雫先輩。正直、人の妄想に口だすなって感じなのだか角をたてるとリリアさんのイベントに影響が出るかも。ここは我慢だ。
私はおざなりになっていた手を動かし、カレーを食べる。
「なあ。なんでこのカレーじゃがいもがこんなにはいってるんだ?」
先輩、さりげなく隣に居座るのやめてください。私、先輩の事結構苦手です。
そして、私の心の傷をえぐるな!
私のハートはぼろぼろなんだ!
「まあ。俺はどろどろしてるカレー好きだけどな」
「本当ですか?」
「やっと、返事したなお前。カレーおかわり」
「はい!」
見た目は怖いし、悪気なく人の心えぐるけど。なんだかんだでいい先輩だ。私は機嫌が悪かったのを忘れてルンルン気分でカレーを盛り付けた。
「伊坂だっけか、お前」
「はい」
「可愛いな」
ガタッ。思わず椅子から滑り落ちてしまった。可愛い? 私かが? あんなに可愛いりリアさんとあーちゃんを見た上で。
顔を赤くして放心状態の私に追い討ちをかけるように言った。私にだけ、聞こえる音量で。
「潮やめて、俺にしとけば」
私の頭オーバーヒート。この人、部活一筋の皮を被った狼だ。
なんだかんだで先輩が立ち去った後、ぼーとした頭で見たのは男子部員に囲まれたあーちゃんをふてぶてしく見守る柳原の顔。殺気だってる。
人それぞれ思いは動いてる??




