15.伊坂なな
今日は雨だ。恋愛ゲームでも雨降るんだなんて外を見ながら考える。そういえば、入学式は桜がまんかいだった。前日強風だったから諦めてたんだけど見事に咲いてた。え? そういう事?
じゃあ、夏祭りとかも晴れるのかなー。
それは楽しみ。さすがゲームの世界。あっぱれ。
「ななちゃんGW暇だったりする?」
雨の日でもあーちゃんはリリアさんに負けないで輝いてる。ん? まぁ、輝いてる分にはいいか。
うんうん。最近私の周りには癒やしで溢れてる。
柳原なんて晴れてても雨が降っててもいつもどおりだ。やかましい。
「うん。特別予定がある訳ではないよ? 」
良かった、そう言ってあーちゃんは柳原達のいる所に行ってしまった。私の友情のライバルは柳原確定だ。
ブブッそういえば携帯マナーモードにしてたなー。
ポケットから取り出すと鷹司と表示が出ていた。
うぬぬ。
思わず立ち上がってしまった。
そのまま女子トイレに直行。私は連れションする趣味はないからね、えっへん。
『もしもし、伊坂です』
ワンコールででてくれました。ちょっとボタン押すのに躊躇した自分が情けない。
『悪い。わざわざかけ直す手間になったな』
『ぜんぜん気にしないで。何か用事だった』
この声好き。真面目なのが声から伝わってくる人も珍しいと思う。実際、サッカー部の王子様なんだけども。
『GWなんだが、予定は空いてるか?』
またGWの予定確認だ。と言うかその日はリリアさんが言ってたけど合宿があるんだよね。部活の。
この前ナルシスト先輩の誘いを断ってたよ。
それ、私が楽しみにしてるイベントだから。
『もし、ななが良かったら合宿で三食ご飯をつくってくれ』
いやー……え? ご飯つくるだけ?
あ、来た! クラスメイトのやつ。今回のイベントだったか。
『水無月も来るんだが。何か聞いてないか?』
若干聞いた気もしなくもないけど、聞いてない。
『ななが来てくれると嬉しい』
あ、今私真っ赤だ。これだから天然に油断してはならないのだ。
『うん』
口から言葉がかってに出た。
いつの間にか通話切れてるし。
はぁー。
どこぞの夢見る少女ですか。
ほとぼりが覚めるまでトイレから出れませんでした。




