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truth number  作者: 証 玲都
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貳・幼馴染みは変な奴

前世を思い出してから3年。

オレは13歳となり、父からは益々母に似たなと笑われるようになった。

魔力容量は年を重ねるごとに増えているのか、オレの髪の成長は微少ながらまだ止まっていない。

まぁ、そうなるように頑張って魔術の特訓をしているのだが。

現在進行形で。


「アクア」


初歩の水魔術。指定した場所(見える範囲で尚且、本人の熟練度により距離が変わる)に水を溢れさせるものだ、本来は。

オレは溢れる水を魔力操作で球体にし、その状態を保つ。

簡単そうに見えてこれが中々難しい。

何故なら魔力には無駄が存在するからだ。

オレがまず、魔術を行うにあたって気づいたことが2つ。

消費する魔力の透明度とそれを属性魔法に変換する際に無駄をなくし効率を上げることだ。


魔力の透明度とは、簡単にいうとオルガが持つ魔力の純度である。 

よく2次元などで見かける魔術師、魔法使いには得意な属性があることが多い。

それは元からの魔力が透明ではなく、得意な属性のエネルギーが不純物として入った状態。

つまり、得意な属性以外だと不純物として混じったエネルギーが無駄となり、得意な属性にはエネルギーを使えるからその分威力があがる。

これが原因ではないかと推測したオレは、自分の魔力の純度を測った。

測り方は、全ての属性の第一魔法をオレが出来る最小の魔力で別々のメスシリンダーの中に行う。

この量で他よりも量が多いものが、オレの得意な属性。

魔力に入った不純物のエネルギーとなる。

オレの場合、闇属性と風属性がそれだ。

次にこのエネルギーを除けなければいけない。

必要なのはイメージによる魔力操作。

言わば、魔力操作による濾過(ろか)だ。

濾過し、透明となった魔力と不純物のエネルギー2種類をそれぞれ3つに分け、使う属性によって3つを使い分ける。

これだけでオレの魔術は格段に威力が増した。


続いては純度100%の魔力を属性エネルギーに変える、エネルギー変換効率の変革。

これに気づいたのは、濾過し3つに分けた魔力とエネルギーで魔力の純度を測ったところ、前より全て量が多いが、それでも闇属性と風属性が一番量が多かったからだ。

考えてみれば単純だが、魔力は電力と同じ。

オレは前世があった為に気づけたんだが。

電気で白熱電球を灯す場合、フィラメントの中を高速で電子が動き、それによる摩擦で発光している。

難しい説明は置いておき、熱と光2つのものにエネルギーが分散していることを着目してほしい。

これはあらゆるエネルギーに於いて存在しているエネルギー効率。

エネルギーは他のエネルギーに変換する際、必ず変換出来ないエネルギーが存在する。

これが分かれば明快な話、闇属性と風属性以外の量が少なくなったのは魔力というエネルギーから、属性のエネルギーに変える時にロスしているからだ。

これも魔力操作でなんとかなった。

ロスする事を無くせないなら、無駄になり空気に溶けだそうとする魔力を集め回収し、また属性エネルギーに変換する。これを無駄になる魔力が最少になるまで繰り返せば良い。

最初の頃は3分と時間がかかったが、今では15秒程で出来るようになった。

いつか1秒を切るのも夢ではない筈。


オレは自分の頭上にアクアの球体を作ったまま、中庭の花壇を行ったり来たりして、移動しても集中力を切らさないよう特訓中である。

アクアとは上で書いた通り水を溢れさせるだけの魔術だ。

消費した魔力量によって溢れる水の量も変わる。

それを魔力操作で重力に逆らい、球体にし空中に浮かせ、水の量を圧縮と膨張させるのが特訓の内容だ。

今は何処まで膨張させられるかを植えられた花を見ながら、試しているーーと、


「ナイン!!」


「どわっ!」


いきなり腰にタックルを食らった。

倒れないように加減されてはいただろうが、急なことに驚いたオレはその瞬間、集中力を欠く。


ザバン


上からの襲撃にオレに抱きついた少年ーートロワと共に耐えるしかなかった。


「え、何、冷たい!」


「(..お前のせいだろ)魔術訓練中、だったから」


水浸しになったオレとトロワ。

髪も服も靴も中に着ていた下着さえびちゃびちゃだ。

気づいた方もいるだろう。

オレが居るのはクロスウォー領じゃない。

シュヴァリエ領にある、シュヴァリエ赤爵宅だ。

両親に連れられやって来たがトロワは居らず、両夫妻の話には入れないのでシュヴァリエ夫妻に許可をもらって中庭で練習をしていたのだ。


「あらあら、2人とも大丈夫?」


そこに大量に落ちた水の音を聞いたのか、トロワの母サラーサ・シュヴァリエがやって来た。


「母上どう見ても大丈夫じゃないですよ!」


「着替えたいです」


子供たちの本音にふふふっと小さな笑みを溢し、サラーサさんは、


「なら2人ともお風呂に入ってらっしゃい。丁度沸いたところなの」


と告げオレとトロワを押しながら風呂場へと向かう。


「わかりました」


オレは素直に歩き始めるが、トロワはわたわたと慌てたように


「な、ちょ、母上!なに言ってるんですか!」


と叫ぶ。

サラーサさんの力が強いのか、強制的にトロワも風呂場へと歩かされている。

風呂場に着くまで1人抗おうとしていたトロワだが、母は強しと言えばいいのか、サラーサさんは抑え込み脱衣場に入りたがらないトロワを無理矢理押し込み、外に出られないよう工夫していった。


「着替えは今持ってくるわ」


そう一言残し、去ったサラーサさん。

扉の前で呆然と立つトロワを放置し、オレは服を脱ぎ始める。

服の擦れる音で正気に返ったのかトロワはこちらを見て叫んだ。


「うわぁああ!!何してるの、何脱ごうとしてるの、馬鹿なの!?」


意味が分からない。

オレはトロワが何が言いたいのか分からず、首を傾げながら聞く。


「何で?お風呂に入ろうとしただけ」


オレが言った言葉に頭を抱えるトロワ。

ため息まで吐いている。

本当にこいつ意味が分からない。

オレは面倒くさくなって、トロワを放置して服を全部脱いだ。

バサッという音で気づいたのか、トロワはこちらを見、そして固まった。

オレはさっさと風呂場へと向かい、暖をとる。

初夏の今、水に濡れたままでは少し寒い。

かけ湯して、湯船に浸かった時一際大きな叫び声が聞こえた。


「う、嘘だろぉおおお!!!」


今日トロワは何かと叫んでいる気がする。

トビラヲ一枚隔てた場所でガチャンと音がし、戸の開く音。


「あら、まだお風呂に浸かってないの?トロワ」


着替えを持ってきてくれたサラーサさんがそう言った。

水浸しの服のままらしいトロワは此方から微かにしか聞こえない声で


「うん、今、入る」


と言っていた。

先に体や髪の毛を洗っておいた方が洗い場が狭くならないだろう。

髪の毛を洗い持っていたゴムで髪を纏め、体を洗いだした時にトロワは入ってきた。

オレを見ると一蹴固まり、それからは見ないように湯船へと向かう。

いつも可笑しい行動をするトロワだが、今日は一段と可笑しい。

何か変なものでもつまみ食いしたのか?

体を洗い終え、湯船に沈みそうなトロワに一声かけてからオレは風呂を出た。

用意された服を着込みながら思う。

そういえばトロワと風呂に入ったのは初めてだったな。

もしかしたら、誰かと一緒に入るが苦手だったのかも知れない。

オレが悪い訳じゃないが、少し申し訳なくなる。

着替え終えたオレは広間に居るだろう両親の元へと向かう。


一人残されたトロワが何を思っていたかなんて、オレは知るよしもなかった。




「父さん」


「上がったかナイン」


広間に着き父の側に行くと少し濡れた髪を撫でられる。

母が見当たらないが何処だろうと辺りを見回していると、後ろから何かに頭を包まれる。


「わぷっ」


「駄目よナイン濡れたまま出てきちゃ」


そう言ってタオルを持った母はオレの髪を拭きだす。


「か、母さん自分で出来るよ」


「いいから、そこに座って」


指示通りに椅子に座るとまたタオルで拭かれる。

優しい感触に何だか眠気が…ふぁあ。


「はい、もういいわよ。サラーサ有り難う、タオル貸りてごめんね」


「ふふ、いいのいいの。これであの子も気づく筈だし」


母さんたちの会話が頭に入ってこない。

ふわふわした気分になっていると、いきなり体を持ち上げられた。

くっつきそうな瞼を開くとこちらを見る父の顔。

どうやらオレは父さんに抱っこされているらしい。


「寝ていていいぞ」


そう頭を撫でられ、眠気に抗うことを止めた。

後で知ったのだがこの日、オレは3時間程ぶっ通しで練習していたらしい。

あの眠さは魔力操作による体力の消耗だった。

今度から特訓するときは、配慮しなければ。

この日を境にオレの魔力操作はどんどん制度を増し、体力がどれくらい消耗しているかも分かるようになった。

そしてこの日を境に、トロワはオレから距離を置くようになった。

その理由を、オレは知らない。


1話に続いて説明会状態(苦笑い

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