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truth number  作者: 証 玲都
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壹・思い出したのは黒歴史

歩行者用の信号機が青になるのを、ヘッドフォンから流れる音楽を聴いて待っていた。

乙女ゲームの用なシチュエーションに出会したら、分岐点を作って呟いてしまうという私の悪癖を知っても面白いね、で済ます友人(みのり)から薦められた曲である。

聞き慣れない音に耳を傾けていた為、ざわめく周囲の声に気づかなかった。


アスファルトが擦れ、マフラーは機能していないかのように排気音を唸らせる。

クラクションを鳴らせ続ける物体が向かう先、そこには信号待ちをしていた少女が一人。


あ、と思った時には遅かった。

直ぐ目の前に迫った大型トラック。


『ことちゃん、ヘッドフォン着けたまま帰っちゃダメだよ?危ないからね!』


実莉(みのり)からの忠告が甦る。

もっと早く思い出せばいいのに、何でこんなタイミングなんだろう。

全身の痛みと流れた血による貧血で見えない視界の中、そんなことを考えていた。

なんだか寒いな、何も考えられな、、、。


私、忌榮(きさか)言葉(ことのは)はこうして生を終えた



ーーらしい。

10歳の脳には重たい内容である前世(それ)を、オレはどうにか一日寝込むことで受け止め、今の自分を振り返った。

ナイン・クロスウォー。

父ノーヴェ・クロスウォー黒爵、母ディサー・クロスウォー黒爵夫人の間に生まれた異端児。

何故異端児かは今は置いておく。

シュヴァリエ赤爵夫妻と両親は友人の為、子息であるトロワ・シュヴァリエとオレは幼馴染みの関係だ。

このトロワ少年の未来の姿をオレは知っている。

いや、知っているというより見掛けたが正しいのかも知れない。

前世の(ことのは)がやっていたゲーム「truth number」の説明書。

そこにキャラ紹介として載っていたのだ、攻略対象として。

見た目が似てて名前が同じだからと言っても、最初はゲームと同じ世界だとは思わなかった。

だが、そのゲームには特長的なことがあった。

まず人名に数字が多いこと。

そして、伯爵や男爵、子爵などではなく、黒爵(コクシャク)紫爵(シシャク)茶爵(サシャク)赤爵(セキシャク)蒼爵(ソウシャク)黄爵(コウシャク)緑爵(リョクシャク)白爵(ハクシャク)といった爵位が設けられている事だ。

この色爵の権力を簡単に図式化すると、

王家>黒爵>紫爵=赤爵=茶爵>蒼爵=黄爵=緑爵>白爵

の順になる。

白爵はまだ何も染まっていない、若しくは何にも秀でていない貴族。

蒼爵は魔力、黄爵は武力、緑爵は知力に向いている貴族。

紫爵は魔力、赤爵は武力、茶爵は知力に富んでいる貴族。

黒爵はその3つ全てに秀でた貴族だ。


ゲームで出た爵位が、この世界では当たり前のように存在している。

同じ世界なのだと認める他なかった。



ーtruth number

ファンからは真数(しんすう)と呼ばれ親しまれていた。

デフォルト名(シェイン)・Y・オンゲートというヒロインが婚約破棄をする為、学園にいるはずの婚約者を探すという設定である。

何故婚約者が判らないかというと、ヒロインの父親が酒の席で言った口約束だからだ。

しかも、飲み交わした人数が多く父親さえ、誰と交わした約束か判断がつかない状態で。

そんな父親が思い出した婚約者の条件が、

1、王都マシェリナル学園に通っている者

2、名前に数字が入っている者

この2つである。

ヒロインはこの条件に合う五人の男性と関わり、探りを入れながら彼の悩みを解決するというストーリーだ。


攻略対象の一人である、トロワ・シュヴァリエを攻略する前に私は死んでしまった為、オレはコイツの内容(なやみ)を知らない。

が、オレは幼馴染みというだけの原作に描かれていないモブだ。

なら、オレがどう生きようと関係ない。

オレは前世で夢見た、そしてオレの体質に深く関わる魔法を知り尽くすことに人生を費やす。そう決めた。


なので、上記で一旦置いておいた、クロスウォー家の異端児について説明しよう。

まず、この世界には2種類の生物に分かれる。

魔力を持つもの(オルガ)魔力を持たないもの(アスカ)だ。

雌のオルガは体毛に魔力を溜め込み、溜め込める分だけ毛が長くなり許容範囲(キャパシティー)になるとそれ以上伸びなくなる。

これは人間でも同じであり、女性の場合髪に魔力が溜まる。(雄も毛に溜まるが溜められるのは少しだ。なのでオルガの男性は髪が短いことが多い。長くても肩につかない程だ)

オルガの女性は髪が長い程魔力持ちといえ、それを誇りにしている。

中にはアスカの人間の延び続ける髪を貶しめる人もいるぐらいだ。

雄のオルガは筋肉に魔力を溜め込み、溜め込める分だけ筋肉が成長し許容範囲(キャパシティー)になるとそれ以上筋肉は肥大しなくなる。

人間も同じで、男性の魔力持ち(オルガ)は魔力を持つもの程、ボディービルダーのような体型になる。(雌も筋肉に溜まるが少しだ。筋肉が少ない分、脂肪がつきやすい。なのでオルガの女性は細く脂肪がつきにくい体質の女性と、太った女性のどちらかが多い)

父親によると騎士とは違う筋肉の付き方なのによく、筋肉勝負をしているらしい。

黒爵家に産まれ、3歳の頃に魔力適正ありと診断されたオレは間違いなくオルガだ。

なのに、未だに髪の毛(・・・)が延び続けている。

もう、背中を覆う程の長さだ。

それに対し、筋力は女児よりは有るが力仕事をするアスカの男性には遠く及ばない。

10歳の年齢もあるがオレの腕は細い。

大人に成ってもこのままじゃ、もやし一直線だ。

どうにか筋肉に溜める方法を考えだし、細マッチョ以上は目指す。絶対に。


此処まででお気づきの方もいるだろう。

そうオレは男のオルガとして産まれながら、女のオルガの性質を持つ異端児(モリスコ)なのだ。


歴史上に記載されたモリスコはオレ以外にたった1人。

500年以上前に勝手な理由で罪人として、裁かれたらしい。

暴動が起き、他国から辛辣な対応を受けた為、それ以降生まれた者には、手厚い対応をすると誓ったそうだが、オレが生まれるまで本当に1人も居なかったのかは、実際のところ分からない。

だが、オレはある意味手厚い対応をされている。

親とシュヴァリエ一家以外の者たちは、化け物を見るような目をし、陰口や面と向かって悪口を言う。

王家がオレをどう思ってるかは知らないが、世間のオレの扱いなどこんなものだ。

なら、いっそのこと文句を言えない立場や力を手に入れればいい。

そうすればーーーコンコンコン

ノックの音に戸へと目を向ける。


「ナイン、入ってもいいかい?」


テノーレ・ドラマティコの音域。

オレは声の持ち主が誰かわかり、入室を許可する。


「うん、大丈夫」


入って来たのはノーヴェ・クロスウォー、オレの父親だ。

紺色の髪を前髪以外後ろに流し、藍色の瞳は意思を灯して煌めく、息子のオレから見ても美丈夫だ。

父さんは勉強机とセットの椅子を動かし、オレが寝るベットの横に腰を落とす。

(てのひら)をオレの額に当て、


「熱は下がったみたいだな。あとでレイ爺にもう一度診てもらおう」


と苦笑しながら言った。


「ん、ごめんなさい。昨日本当は出掛けるはずだったのに」


「気にするな。トレスには話してある。それに、」


トレスとはトロワ・シュヴァリエの父、トレス・シュヴァリエ赤爵のことだ。


「それに?」


「どうやら、あのままシュヴァリエ領に行っていたら土砂崩れに巻き込まれたかも知れないんだ」


「へ?」


昨日の雨でクロスウォー領からシュヴァリエ領への道筋、その通る筈の場所で土砂崩れが起きたらしい。

しかも、ほぼ確実に通る時間帯に。


「だから苦に病むな」


父さんはオレの頭を豪快に撫でると


「ディサーも心配していたから、安心させてくる。レイ爺が来るまで大人しく寝ていろよ」


椅子を戻し、出て行く。

母はレイじいと一緒に来るだろうな。

それまで起きていないと。




オレはまだ知らなかった。

この日から物語は変わり始めていたことに。

オレはまだ知らなかった。

オレ以外にも、転成した人間(イレギュラー)が居ることを。

そして、オレは知らなかった。

この世界gはgg、あg人gGgg暇ggGgーーープツン








[--ggG、チャンネルを変更します]


幕が垂れ下がっている。

その前に一人の男。垂れ幕の奥に何かあるのか、男はじっと目を離さない。

誰かを呼ぶ声が聞こえる。

男は扉へと目を向け、もう一度幕へと視線を動かし息を吐く。

また誰かを探す声が聞こえた。

それに応えるように男は部屋を出て行った。

男が出て行って、少し。

幕の奥から声が響いた。


『そう、変わったの。

変動したのは何回かあるけれど、(ナイン)が変わるのは初めてだったね。

彼が変わったことにより、ノーヴェ・クロスウォーとディサー・クロスウォーの死の運命が変わった。

この先、世界がどうなるのかは分からない。

前の世界のように、シェインが壊すのか。

それとも5個前のようにカラーかな?

今度こそボク、かもしれないね、ーーなんて。


ボクは世界が平和になることを望んだだけなのに。』

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