第五話
「つう……」
朝起きたときは軽く腹痛があった程度だったので、その時は特に気にもせず森へと出たのだが、今更ながらアヤはを激しく後悔していた。
次第に強くなる痛みに耐えきれなくなり、ついに立ち止まりたくなるほどチクチクと針を刺すように下腹が痛む。
その異変に気付いたのか、前を軽快に歩いていたロベリアがアヤの方を顔に疑問符をくっつけて振り返る。
「アヤー? どうしたの?」
「いや……」
大したことはない、と言おうと思ったが軽口で大したことない、と言えるほど優しい痛みではなかった。
下腹部を抑える。
「もしかしてお腹痛いの?」
「朝もちょっと痛かったんだけどな……」
「大丈夫?」
大丈夫、と聞かれたら大丈夫ではないと言い切れる。
少なくとも男であった頃に感じたことのない腹痛で、この状態で果たしてこのまま予期せぬ事態が起きたとしたら動けるだろうか、と不安にすらなる。
「……そういえばアヤってもう十三だったよね?」
「そうだけど……」
「その辺、下腹部のほうが痛いの?」
ロベリアがアヤが抑えているちょうど下腹部のあたりを指差して聞いてくる。
確かに言われてみると、単純にトイレに行きたいときの痛みと言うよりはチクチクとして痛い、と言った方が正しいかもしれない。
「ああ、なんかチクチク針に刺される感じで……」
「……それってもしかして……」
どうやらロベリアは一つの結論と思しきものに達したらしい。
ふむふむ、なるほどねぇ、と頷いているロベリアを見て対象方法が分かったのなら早くしろ、とアヤは思う。
それでもしばらくの間ニヤニヤとしているロベリアだったので痺れを切らしたアヤは急かす。
「じらしてないで早く言えよ……治す方法あんのか?」
「私が思うにね、アヤは女の子として成長したってことだよ!」
意味が分からない。
「いい加減にしろ……」
近寄って掴み掛ってやろうと思ったものの痛いのでやめておく。
余計な労力を払いたくない。
「わかんないのー? アヤいっつも、前世の記憶が残ってるとかいつも言ってるのに? しかも前の世界は今の世界と違ってー」
「煩い。そういうのは疎いんだ」
「そっかぁ……アヤは意外とバカ……」
アヤがこいつ、燃やしてやろうか、と思いながら睨み付けるとロベリアは慌てて謝る。
「ご、ごめんってそんな目で見ないでよっ冗談だから!」
「じゃあ早くしろ」
「ええと、つまり、その……アヤがお腹痛いのってたぶん」
森の中なのに妙にそわそわと周りを気にしながらロベリアはアヤの耳元で小さくつぶやく。
どうせ誰も見ちゃいないし、聞いちゃいない。それどころか人が居るかも怪しい。
「……生理かなって……」
「は!?」
素っ頓狂な声が響く。
……生理?
整理整頓の事だろうか。
いや違う。分かっている。今のアヤが女であること。そしてもちろん男であった頃でも聞いたことはある、ある意味都市伝説のようなものだと思っていた。
それがまさか自分の身に襲ってくるとは。
ガツンとハンマーで叩かれたような衝撃で、アヤは頭がくらくらするのを感じる。
「その様子だとやっぱりアヤ初めてだよね?」
「二度目なわけあるか……それにずっと一緒に居るのに分かってるだろ。つーかこれってもっと血が出たりするもんじゃないのか……」
「最初だからね、あんまり出ないかもしれないし周期も安定もしないと思うよー」
二度目であったら以前も女であった、と言うことだが決してそういうわけではない。
例えもし仮にそうだとしたらこんな風に聞いたりなどしないだろう。
それにしても、とロベリアは続ける。
「アヤの事だからまた前はーとか言い出すんじゃないかとか思ったんだけよね。さすがにちがったかぁー」
「男だって言ってんだろ。バカか」
こういう時にオツムの弱さを出されても突込みをするのが面倒で仕方がない。
「バカじゃないってば! 分かってるんでしょ私がバカじゃないことくらい!」
「煩いな、痛いんだから大声出すな」
チクチクと痛みが強くなり押さえる。
「ともかく俺は帰るぞ……こんな状態でなんかあって動ける自信がない」
「帰るの? 帰ってもずーっと続くよ?」
「少なくとも動き回ってるよりもマシだ……」
「まあ最初だからしょうがないと思うけど慣れは必要だと思うよ?」
「慣れろ、と言われても……」
痛みが引く気配はないし、腰も痛い。
それになんだか手足に鉛を付けたように重くて正直なところすぐにでも横になりたかった。
「でもでもこれが毎月、何十年も続くんだよ?」
そうだったのか、と驚愕する。
世の女たちはこの痛みを毎月毎月患っていた、と言う事実を。
それに、とロベリアは付け加える。
「少しは動いた方が良いんだよ?」
「いや……でも今日はもう良い……」
「うーん、わかった。まあ初めてだからね。帰ろっか」
言い、すぐに帰路へとつく。
森の浅い位置であったためか、いつもよりもだいぶ鈍行であったもののすぐに家へと着くとアヤは急いでトイレへと駆け込んだ。
明らかにベタついた感覚こそないがもしロベリアの言うとおり本当に来ていたら血がベットリととついているかも知れないと思っての行動だった。
トイレの中でいざまじまじと見て自分で触れば嫌でも女であることを自覚してしまう。パンツには赤茶色いモノがついており、拭いてみた紙にも同じようについていた。
これがひどくなってきたらどうすればいいのだろうか、と考える。
現代の日本では確か、ナプキンなるものが存在しているのだが果たしてこの世界には、とここまで考えたところで、ロベリアを呼んで話を聞いてみると、曰く布を使ってパンツとの間に挟むのだとか。
ともあれ今の状態であれば準備していれば何とかなるのでは、とのことだったのでとりあえず準備の仕方だけ聞いておき、今はそのままにしておく。
はっきり言って面倒で仕方がないし、ゴワゴワとして何だか歩きにくいし気持ち悪い。現代であればもう少し楽なのであろうが、今のこの世界は現代の日本ではない。
何より一番辛いのは毎月来ると言う事だ。
この痛みと、そして今よりもひどい血が毎月出てくると言うことを考えると気が滅入る。何とかする方法はないのだろうか、そんなことを考えつつ、下腹部の痛みを抑えようと早々に横になる。
するとほどなく母セシルと、その後ろからはロベリアが、アヤの元へとやってくる。
「アヤ? 大丈夫?」
セシルの後ろにロベリアが下腹部を抑えてからセシルを指差す。
恐らくこう言いたいのだろう。報告した、と。
余計なことを、とも思うがいつかは知られることだろうし、この家に居る限りは布きれを調達するのもそれなりに難しいだろう。
そういった点を考えればまあ仕方ないか、とも思う。
「うん……横になったらだいぶ楽になった」
「そう。良かった」
セシルは一息ついてから続ける。
「あのね、アヤ。今までは目を瞑ってきたけどこれからは大人しくするのよ。でないと貴女の将来が心配だわ。約束できる?」
直接は言わなかったものの、その言い回しこそがアヤの将来へ、即ち嫁に向けての発言だと言うのが分かる。
つまり妊娠できる可能性が出来た、嫁に出せる、そういう意味の発言だろう。
今のところそういった類は何も話を聞いていないが間違いなくこの先、何らかの話が来るに違いない。そう思うとアヤは憂鬱な気分になって俯く。
「あのぅ……セシルさん、その事なんだけど……」
「なあに、ロベリアちゃん?」
「実はその、アヤはたぶん普通にお嫁に行くよりも別の道があると思うんだけど……」
アヤの心情を悟っていたのか、それとも単純にアヤの力がこのまま埋もれるのがもったいないと思ったのかは分からない。
だが少なくともロベリアはアヤが普通の農民の娘として進路を決めない方が良い、とセシルを説得しようとしているのが分かる。
「でもね、ロベリアちゃん。うちは農民で農民としての道しかないの。ロベリアちゃんは魔法使いだから違うけど、うちのアヤはロベリアちゃんと違うのよ?」
「その……セシルさんは知らないかもしれないけど……アヤならきっとイルレオーネの……」
――バタン、と突然大きな音が家の中に響き渡る。
「失礼致す」
音のなった方を家の中に居た三人が三人とも見つめる。
家のドアが勢いよく開いて一人の男が入って来たのだ。突然の出来事にアヤとセシルは唖然としている。
けれども渦中の男は特に気にも留めずズケズケと家の中に入る。
男は真っ赤なひらひらとしたマントを羽織り、農民の男とは間違っても思えぬ風貌であった。
少なくともその様子、振る舞い、態度は彼の着ている服に負けず劣らず、自信に満ち溢れて居ると百人が百人とも答えるであろう。
「なっ、だ、誰ですか!?」
ようやく何が起きたか理解したセシルは叫び声のように問う。
一方のロベリアは顔を抑えて何か失敗した、と思わせるような体裁で、手の間から見える顔は明らかにバツが悪そうにも見えた。
ドアの外には武装を施した兵士が何人か見える。
「これは奥方、突然で申し訳ない。私は貴女らの連合国ブリュンヒルとは同盟国として盟約を結ばせて頂かせております、イルレオーネ王、アーベル=フィッツヘルベルトの第二子、マリウス=フィッツヘルベルトと申します」
長々と説明してはいたがつまり王子と言う事だ。金が施された服や装飾具、家の外に待機している武装した兵士。この条件が揃えば王でなくとも間違いなく貴族と呼ばれる部類に入る。
さらに言ってしまえばこんな場面でわざわざウソをつくとすればロベリアの仕業になる。しかしその当人がバツの悪そうな、申し訳なさそうな顔をしているところを見ると、恐らく王子であるのは本当の事なのだろう。
一方で自己紹介の言葉を聞いたセシルは魚のように口をパクパクとさせている。セシルは少なくともロベリアの事を流れ者程度にしか思っていないのだから当然だ。
マリウスさらっとセシルに自己紹介を終えるとロベリアの方を向き直る。
「ロベリア殿! 父、アーベルより仰せつかっております。お迎えに上がりました」
一国の王子ともあろう人間がロベリアに向かってお辞儀をしている。
ウソだと思っていたドラゴン討伐と言うのはどうやら事実なのかもしれない。この分であると恐らく王宮魔道士であったと言うのも本当なのだろう。
ロベリアは盛大にため息をつく。
「あのね、私は自分から戻るってハンナに言ったつもりだったんだけど? それとアーベルには何も言っていないし」
「ハンナ様が父へ進言したのです。三年前の小型ドラゴンの遺体、そしてハンナ様に届いた書状の方角から考えれば容易に想像できます。王宮魔道士の貴女が我が国としても国賓、ひいては三十年前の英雄であることにお変わりはありますまい」
マリウスは首を振り、困ったような表情をする。
話が長い割に結論までが遅い。アヤはそう思うが、そんなアヤの心境など知る由もなく、マリウスは続ける。
「ゆえに父上はハンナ様の話をお聞きになり、ハンナ様と父上お二方の合意のもと、すぐにお迎えに上がる必要がある、と私を使わせたのですが」
「そういうのがまどろっこしいの!」
「ううむ、お気に召しませんでしたか……申し訳ございません」
マリウスは困った顔をし目を泳がせる。ここでロベリアを連れて帰れなければやはりそれなりの叱責があるのかも知れない。
困惑しているマリウスに対しての嫌がらせであろうか、厭味ったらしくロベリアはため息をついた。
目を泳がせどうしようか、と思案していたであろうマリウスの視線がアヤへと止まる。
「これは……もしや貴女がハンナ様が申していたロベリア殿の愛弟子殿では……?」
愛弟子、いつからそんな風に呼ばれるようになってしまったのか。
実力関係で言えば、既にアヤはロベリアを超えているしどちらかと言えば弟子と言うよりは友人と言う気もしないでもない。
もっとも魔力についてや、魔力の成長について教わった点に関しては師匠と呼べるかもしれない。あくまでカモだ。
事態の読み込めてないセシルが恐る恐るマリウスへ話しかける。
「あ、あのうちの娘にイルレオーネの王子様が何か……」
「あ、いや奥方、申し訳ない。英雄と呼ばれるロベリア殿が見込んだと言われる子女と共に暮らしている、と言う報を一緒に受けておりまして、ついこのお嬢様がそうではないかと」
「うちのアヤはそんな……」
ごほん、と無理やり威厳を出そうと咳払いをしたのだろうが残念ながら威厳のかけらも見つけることはできなかった。
ともあれその咳払いを皮切りにロベリアが話に割って入る。
「マリウス! ともかく! 外に出てなさい! 私が今すぐイルレオーネに行くかどうかは私が決めるから!」
「し、しかしロベリア殿の愛弟子を、と! それに私もロベリア殿を連れ帰るようにと!!」
「はいはーい! 外に出て!」
ロベリアは無理やりにもマリウスを外に押し出す。
ずいぶんと扱いが雑だがあれでいいのだろうか。
ようやく外の景色こそ、兵士が囲んでいて異質ではあるが家の中は普段と同じ空間となった。
先ほどまでの騒がしいのとは打って変わって誰も口を開かない。
セシルは混乱、ロベリアは申し訳なさそうに、そしてアヤはロベリアを連れ戻しに来ている、そしてそのターゲットの中に自分が含まれているんだろう、と言う事。
便乗すれば農民として、嫁に出る必要がなくなるかも知れない、と思ってどう説明したものか、と考えている。
静寂を破ったのはセシルだった。
「……ロベリアちゃん……イルレオーネの王子ってどういうことなの?」
「お母さん、三十年前のイルレオーネの国でドラゴンに襲われたって知ってる?」
ロベリアが答えようとしたところを手でけん制しアヤが答える。
「ア、アヤ? え、ええ。この辺りでも少し話題に上がったわ」
「ロベリアがそのドラゴンを倒したんだって。詳しくは知らないけどね」
えっと、つまり、とセシルは頭が追い付いていないようで首をかしげている。
そんなことを突然言われても突拍子もなさ過ぎて話の内容が読めないのも当然なのかも知れない。もしアヤもロベリアの話を聞いていなければ、きっと混乱していたに違いない。
「簡単に言っちゃえばイルレオーネの英雄ってことでいい? ロベリア」
「うん、って言うか私が説明しようと思ったのに!」
「ロベリアに説明させたら余計混乱させるだろ……」
「またアヤがバカにするー!」
普段であればセシルがアヤにやめなさい、と注意を促すところであるが今は余裕がないのだろう。何も言われない。
「で、ロベリア。私も聞きたいことがあんだけど」
セシルの前なので気を使って私、と言っておく。
あまり心配させるようなことはしたくない。要は使い分けだ。
「アンタの愛弟子ってことになってたけどどういうこと? それになんで私の事を知ってるわけ?」
「えっとぉ……アヤはきっとこのままお嫁に行きたくないだろうなーって思ったのが一つと、後はもう私が教えれることがあんまりないから……そのイルレオーネの魔法学院の図書館ならきっともっと凄い魔法についてとか知れるかなって。
だからちょっとイルレオーネで仲が良かった王族の子にちょっと手紙送ってみちゃった……てへ」
ロベリアが舌を出して可愛い子ぶる。
「てへ、じゃない。つまり私は」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! アヤがイルレオーネの魔法学院ってどういうことなの?」
セシルが割って入ってくる。
隠すわけではなかったのだが、アヤがずっと出入りを禁止されている森でしていたことなど何も知らないセシルの疑問は当然だった。
それどころかアヤもロベリアも村の近くで遊んでいる、と言う程度だけだっただろう。
「セシルさん、アヤは魔法が使えるの。しかも今はもう私よりスゴイんだから」
「そ、そうなの? アヤ、そうなの?」
「うん、たぶんね」
「もしかして二人ともいつも出かけてたところって……」
セシルの言いたいことは分かった。
アヤは頷く。
「いつからなの?」
「セシルさん、ごめんなさい……」
「まさか……ずっとなの……?」
申し訳なさそうにロベリアが頷く。
それを見てセシルが少し悲しそうな諦めたような表情をしてゆっくりと目を瞑る。
「……分かったわ……」
そう言ってセシルが目を開けてアヤを見る。
アヤを見る目はいつか見た強い目をしており、まるで何かを決断した顔をしていた。
「アヤ、好きにしなさい。ここに留まってこの村の誰かのところに嫁ぐか、それともイルレオーネへと行って勉強するか、貴女が決めなさい」
悟ったのだろう。今までもずっと森に行っていたこと、それが意味する、この村で農民の嫁として嫁ぐことはないであろうと言うこと。
アヤに決めさせればアヤがこの村から出て行ってしまうことを。
それでもセシルはアヤに選ばせると言った。その心配りにアヤは感謝する。
「ごめん、お母さん。私行きたい」
「……そう。無茶はしてはダメよ。約束」
「うん」
その言葉を聞いてセシルはロベリアと向き直る。
「ロベリアちゃん、アヤをお願いね」
「は、はい」
が、言われたロベリアはもじもじと何かを言いたげにしている。
意を決したのかロベリアが、でも、と続ける。
「その……今すぐ行くの……? いちおう私にも心の準備と言うモノが……」
「ロベリア、私が生理だからって何もできないと思っているんじゃないでしょうねェ……」
アヤは痛みを感じつつもゆっくりと立ち上がる。
「ここまで引っ掻き回しといて……」
アヤがウンディーネを静かに召喚する。
それを見たセシルが驚いてアヤ、と呟いているのが聞こえたが、今の注目はそちらではない。
ロベリアが後ずさる。
「アヤ、やりすぎはダメですよ」
ウンディーネが静かに忠告するが、少しくらいやりすぎた方がお灸を据える、と言う意味では良い気だろう。
忠告は忠告としてありがたく受け取っておいて無視しよう。
「あの、アヤちゃん……? そのウンディーネはどういうことかな……? ウンディーネも言ってるしやりすぎは……」
「心の準備ってどういうことなのかな?」
「やめてー!」
ロベリアの悲鳴が家じゅうに響き渡ると、どうしたことかとマリウスが入って来る。
そこにあったのはロベリアがブクブクとウンディーネの水攻めにあっているところであった。
「こ、これはいったい……」
「マリウス殿下」
「え、あ、は、はい!」
アヤが話しかけるとビクっとして背筋を伸ばす。
別にそんなたいそうなことをやっているわけではないのだが。
「今から支度してイルレオーネへ参ります」
「お、おお! と言うことはロベリア殿も納得して下さったと言う事か!」
「ええ、もちろん、この通りです」
「んーんー!」
「こ、これは本当に納得した、と言うことで宜しいのかな……?」
水の中で唸っているロベリアを見てから、引きつった顔でアヤを見る。
「では本人の口から聞いてみますか?」
「出来ればそうして頂けると助かります」
ウンディーネを消すと同時にロベリアの周囲にあった水もフッと消滅する。
プハァ、とロベリアが息を粗く深呼吸を何度もしているところに、アヤは近づいて話しかけた。
「聞いてたよね、ロベリア? 今からイルレオーネに行く、でいいんだよね?」
にっこりとロベリアの方を見て笑う。
「う……行くから! 行くから! 苛めないでーっ!」