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一、

 『――』って知ってる?


 ネット上ではそんなことがうわさになっている。だが都市伝説の類で信用できるものではない。しかもすでにそれはノイズが混じり、何か判断出来るものではなくなっている。

 そんなこの世界の事に僕は少しずつ気づき始めていた、のかもしれないが本質的なことは分からない。これまでに何百回も同じことを繰り返しているようでならない。現実的に考えればそんなことはあり得ない。どうにもそんなこと気がしてならない。


 新暦十年。日本の政治の仕組みは大幅に変わった。AIが導入されたのだ。それによって統制はより安定したほか、通信系統が統一され、より使いやすいものとなった。

 AI導入によって日本の経済、軍事力等が格段に上昇した。そのおかげか日本の国際的地位はアメリカに次ぐものとなり、それをあまり良く思わなかったアメリカとは関係が悪くなってしまった。

 そんな中、とある事件が起きた。

 【アメリカ軍基地襲撃事件】

 この事件はただでさえ仲の悪かったアメリカとの関係を決定的に崩す原因となった。

 襲撃したのは日本の自衛隊。動機は不明。ある日突然、軍基地を爆撃したのだ。理由が全く分からないうえ、国を守るはずの自衛隊が攻撃をしたのだ。当然、マスコミは大騒ぎし、防衛大臣の会見も大変なものとなった。

 そんな事件からもう三年が過ぎた。もうすでに人々はそんな事件のことを全くと言っていいほど興味をなくし、一部の人は忘れてもいるだろう。

 そんなもう終わった事件だが、僕はどうしても気になることがある。そもそも自衛隊にアメリカ軍を攻撃する利益があったのだろうか。

 終わった事件を調べることは難しいとは思ったが、僕にはどうしてもその疑問を解消しないといけない気がして調べることにした。


 とりあえずは図書館に行こうか、そう思い歩を進める。空は赤く綺麗に染まり、きれいな黄色の雲が流れていく。風が程良くふきとても過ごしやすい日だ。こんな日はのんびり歩いて行くのが気持ち良いだろう。

 穏やかな気候が僕の歩きを妨害してくれたおかげで図書館についたのは昼を過ぎて二時くらいになってしまった。そんなゆったりと歩いていたのにも関わらず、柱が一つ崩れたことを僕は知らない。

 図書館で調べる事と言っても、当時の新聞を調べることくらいしかできない訳で、特に新しい情報が入ることはなかった。まあそれは分かっていたことだが。

 だがこうなると手段は尽きてしまう。いったいどこへ行こうか、と途方にくれていると携帯が鳴った。着信元をみると愛華先輩だった。そういえば今日はサークル活動があったっけ。すっかり忘れていた。きっと今から走って行っても十分、罰則が出るほどの遅刻となるだろう。

 だからと言ってゆっくり行くわけには行かないので小走りで目的地へ向かう。少し元気な先輩は起こると怖いのだ。何か機嫌取りに手土産でももっていこうかな。あの人はもので釣りやすいのだ。

 サークルの後輩のことも考えて煎餅でも買っていこうかな。和菓子の系統だったらおいしい店を知っている。それがどのような道で行くことができるのか。さらにいえば緯度経度まで覚えているくらいだ。

 そんな普通の人からしてみればかなりどうでも良いことは置いておき、遅刻の言い訳を考えよう。そうは思ったが考えるまでもなかったか。例の事件を調べていた、そういえば良いじゃないか。ちょうど良いので調査を手伝ってもらおう。もう手詰まってしまったからな。


 「やっときたか」

少しイラついた様子で先輩は言った。いつもはこんなことではあんまり起こらない人なんだがな。

「すみません。少し興味深い事を調べていました。たぶん先輩も気になると思います」

そう言い訳すると、先輩は目を輝かせて食いついてきた。

「えー! 何々! それすごく気になるー!」

確かに予想はしていたが、まさかここまでの反応は予想してなかった。

 その件について言ってしまったからには説明しなければいけない。三年前の例の事件についての僕が思った不可解な点について話す。話し終えると先輩は少し悩んだ様子で、

「確かに君の言っていることはよくわかるよ。でもそれについてはどうやって調べるの?」

それは僕が悩んでいたことだ。今朝の調査もそれによって途切れた。図書館以外に何か方法はあるのか。

 そんな風に悩んでいると、もう一人の部員である守が、

「僕がなんとかして見せましょう」

 そのなんとか、がかなり気になるのだが、守は虚言を吐かないので信用できる。やり方はいつも突飛で強引だが。


 翌日やはり守は笑顔で報告をしにきた。

「徹夜で警視庁のコンピュータにに侵入してきました」

今回はかなり危ない方法だった。そもそもなぜ昨日のやりとりから警視庁にハックすることになったのだろうか疑問だが深くは問わないことにした。

 明らかに犯罪な気がするが、僕はそんなことを気にせず守のもってきた情報を見る。

 ざっと目を通して僕はその内容に驚愕する。

「守。君は本当に警察にハッキングを仕掛けたのか? とてもそうは思えない内容なんだが」

もしこの情報が警察の持っているものだとしたら、かなりあり得ない情報だ。そもそも例の事件に関係があるのかどうかも分からない。

「・・・・・・すみません先輩。本当は適当なところを漁ってもってきたんです。ハックは仕掛けましたけどね」

だとしてもお前はかなりヤバいところから情報を持ってきたぞ。


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