三、
目が覚めたのは翌日の朝だった。
僕が倒れてから愛華先輩たちが何をしたかは分からないが、僕が倒れてしまったせいで昨日の活動終わっただろう。とはいっても何をしていたか良く覚えていない。明確に覚えているのは膨大な資料の山に圧倒され、結局何の成果もなかった事くらいだ。
かなり頭が重い。体も重い。動きたくないくらいの体の不調の中、昨日の出来事を必死におもいだす。まず山のような資料を種類別に分けるのに三時間くらいかかったっけな。それから夕方まで飲み食いせずに資料を読んだんだっけ。確かその資料の内容は……。最初の方は内容を理解することは多少――だった気がするが読めたはずだ。だが途中からまるで――みたいにおかしな文章で、最後はもう完全に文章じゃなくてただの――になってた気がする。途中で記憶が飛ぶのはきっと頭痛のせいだろう。
次の日、またサークルに顔を出すと愛華先輩が僕の方に寄ってきて、
「君大丈夫!? 昨日は突然倒れるからびっくりしちゃったよ。ちょっと資料あさるのに集中しすぎだったのかな」
そうかもしれません、と返答すると、あんまり無理しないでね、と言った顔でまた席に戻っていった。
そして恒例の先日の調査の報告会を行う。
どうやら僕と同じように、愛華先輩や守もこれと言って新しい事実を見つけられたわけではないらしい。
「せっかく警察の人に協力してもらったのに残念だったね。そのかわりあの資料をまとめた人が――だったってことは分かったね」
そう愛華先輩が笑顔で言ったが一つ聞き取れなかった部分があった。それに昨日の資料を見てまとめた人がどんな人だったか理解できただろうか。
「あの資料読んだだけでまとめた人物がどんな人だったかなんて分かりましたっけ」
守も、愛華先輩が言っている意味が分からない、と言ったようにそういった。
「・・・・・・うん、そうだね。確かに読んだだけで書いた人がどんな人なんて分かるわけないよね。何言ってるんだろ私」
そう言った割に、あれーと言った感じで首をかしげている。そんなに自信があったのだろうか。
僕たちオカ研の自慢できると言える事は物事を前向きに考えることだ。つまり少しくらい調査が失敗したところでやめたりせずどんどん深入りしていくわけだ。そのおかげで時に明らかにいけない情報入手する事もあるわけだが。
そんな簡単に諦めない僕たちが、今回は諦める、なんてことはしない。次はどのように調査を行い情報を手に入れるか、今回の失敗を含めて三人で話す。
「ただ資料を見ても何も分からなかったから、次は現地に行ってみない? そっちの方が手掛かりが見つかりやすそうだけど」
自信満々に愛華先輩は言った。だがそう簡単に事件跡を見せてもらえる訳がないだろう。それにあそこは元アメリカ軍基地だ。それも加わって一大学サークルが中に入れてもらえるなんてことはそうそうないだろう。
「それなら僕がお願いしてきましょうか。知り合いにそういう人いるんで」
守が表情も変えずにそう言った。
「守君さすが。やっぱり君はコネだけは誰よりもあるね」
話はまとまり、守に現地の調査の許可をとってもらうことになった。
翌日、いつも通りにオカ研の活動場所に行く。
だが、いつも僕より先に来ている守がいなかった。
「守は何かあったんですか? 僕より遅いなんて珍しいですけど」
愛華先輩はこちらを向くと、あれ、と言った風に、
「あれ、守君来てなかったんだ。私一番最初に来てるけど、大体気がついたら守君いるから全然気にしてなかった」
君は何か聞いてないの、といった風に先輩は首をかしげたが、僕も知らない。
いつも来ている人が来ていないと無性に心配になる。守の真面目さも加わってさらにそれも増す。
「これ探したほうがいいんじゃないですか」
愛華先輩に提案する。
「・・・・・・そうかもね。何か襲われてたり、事故にあって当たりしたら大変だもんね」
そうときまったらすぐに部屋を飛び出し守探しに出る。
しかし、守の自宅がわからない。それに加えて連絡先、いつも通る道、行きそうな場所など全く分からない。つまり捜索の手掛かりがない。
とりあえず二手に分かれて大学周辺を走り回る。案の定見つからない。本当にどこに行ってしまったのだろうか。
愛華先輩に見つけること出来たか連絡を入れてみる。
「――つながらない。愛華先輩まで・・・・・・」
こんな時に愛華先輩もいなくなってしまうなんて。一体何が起こっているというのだ。同じ日に二人もいなくなってしまうなんて。
もしかして――
刹那そんなことを頭をよぎったが、重要な部分が欠けてしまった。だが体は何かを察知したらしく、反対方向へ突き進む。――愛華先輩の家へと。
もう後少し、そんなところで目がくらんだ。空は赤、青、緑と色を変えていき、風景も歪んでいく。
そんな、あと少しだったのに。あと少しで・・・・・・この世界の・・・・・・。
そんな中、僕は道に倒れる。そして次に目を開けたそこは――