二、
次の日からさっそく調査は始まった。今の通信機器はかなり便利なもので、統合ネットワークで簡単に通話、メールができる。これも政府が導入したAIと同時に配備された。これのおかげで生活はかなり豊かになった。
今回の調査の連絡もこれを使って行っている。三人で別々の事を調べるということになったので情報の共有は必須だ。
僕は当時の状況などを調べることになった。個人的にもし自衛隊が攻撃したとしてどうやったのか気になるし、そうでなかったら誰がどのようにやったのか知りたかったからだ。
当然警察にそんな資料はないか、と聞いてあっても見られることはないだろう。マスコミの方に期待して行ってみた。
基地襲撃事件に関する写真はないか、と聞いたら少し悩んでから見せてもらえることになった。こんなにあっさり行くとは思っていなかったから少し疑問に思ったが今はそんなこと気にする必要はないと思い写真を見せてもらった。
写真は五枚あり、二枚は上空からの写真、二枚は地上で撮影したもの、一枚は良く分からなかった。上空から撮影したものを見てもぶれすぎていてしっかり見えなかった。
しかし地上で撮られたものははっきりと写っていた。ところに黒煙が上がっている。地面には穴があき、庁舎は燃えている。不自然な点は見当たらない。見当外れだったかな、そう思って他の写真をみようちす見ようとする。その時、ふと何かが脳裏をよぎって、もう一度写真を見直す。
おかしい、おかしい。何やら内側から爆破されたようになっている。普通、中に爆弾を仕掛けるなんてリスクを犯すだろうか。それに「空爆された」と報道されている。矛盾している。そう気がついたら会社職員にばれないようにこの資料の写真を撮り、サークルに戻る。
他の二人も戻ってきていたらしく調査報告をする。
残念ながら大きな成果はなかったらしい。仕様がないと言えば仕様がない。本当に隠ぺいがあったとしたら情報は少ないだろう。
「すみません先輩方。何も見つけられませんでした」
「いいのよ別に。私だって見つけられなかったんだから」
で、と先輩はこちらに振り向く。
「君は何か見つけたんでしょ。見せてよ」
「分かりました。こちらの写真です」
そう言って写真を渡すと先輩はじっと見つめる。
「何がおかしいの? 少しわからないんだけど」
そう聞いてきたので僕は自分の考えを説明する。
「確かにそうですね。分かりにくいですけど中から爆発した雰囲気がありますね」
守の方が先に気がついた。愛華先輩はまだ分かっていないようだった。
守も不自然と感じたということはこの仮説が正しい可能性が高い。愛華先輩もじきに気がつくだろう。だがそんなことよりも内側から爆破されたという仮説の可能性が高くなったとすると、前よりずっと疑問が増えてしまう。もし事件現場が見れるならば見てみたいものだ、とつぶやいたら守が反応し、
「まだ事件現場は当時のまま残っているみたいですし見にいってみますか?」
そんなことができるのか、そう守に問う。
「少し知り合いにそれに関する人がいるので」
実際そうだとかなり好都合なのだが、たかが大学のサークル活動ごときで見せてもらえるのだろうか。
翌日、守は機嫌良く僕に許可が下りたと報告をしてきた。まさか本当にもらえるとは思っていなかったので少し動揺したが、せっかくの機会だ。行かない手はない。
さっそくどのような点を調査してくるかを事前に決めておくにした。いくら許可が下りたとはいえ、そう長い時間いて良いものではない。
話し合った結果、当然だが爆発の現場を重点的に調べることにした。もちろん専門家でもない僕たちが爆破後を見てもどのようなものかわからないので、詳しい人についてきてもらった。
爆発跡を見てもそこでどのような爆発があったかは分からないが、地面の中に何やらひものようなものがあったことに気付いた。何だろうと近くによってよく観察してみる。さっきはただのひもとしか見えなかったが、よく見れば機械のケーブルのようなものが切れていた。なぜ地中にこのようなものがあるかは僕一人だけでは分からない。
「すみません、このケーブルみたいなものは何かわかりますか?」
「申し訳ございません、私は存じ上げません」
まあこの基地に詳しい人でないと分からないことは知っていた。そう思って他の場所を調べようとすると、
「あれ、何かこのケーブルが爆発したような感じしない?」
愛華先輩が唐突にそういった。
まさか、こんな紐みたいなものが爆発点になることなんてないでしょう、そう返したら愛華先輩は少し不機嫌そうに、
「そんな気がするんだけどね・・・・・・」
その後一時間ほど調査をしたが、特に成果はなかった。そうなると唯一みつけたケーブルのようなものが気になる。
「守、お前このケーブルがなんだかわかるか?」
少々お待ちください、と言って守はケーブルを触ったりルーペで観察したりしている。
「ちょっと、私を置いて何してるの!」
しばらくもしないうちに愛華先輩が飛んできた。
「先輩の言っていたケーブルを調べています」
先輩も加わって三人全員で調べてることになった。とは言っても実際に調べているのは守一人だけだが。
「愛華先輩の言った通りかもしれません。ケーブルの内側が焦げています」
そう言って実際に見てみる。たしかに守の言った通りで中まで焦げ付いている部分がある。
だからと言ってそれが根本的な解決につながるわけではないが、多少なりとも持ち帰ることができると思えばいい方だ。
――ふと、また僕の頭に何かがよぎる。いや、よぎるという表現より頭に何かが流し込まれると言った感覚がする。途端、僕は地面にうずくまってしまう。
「どうしたの! 大丈夫!?」
愛華先輩が近くに寄ってきたのはわかる分かるが何を言ってるのかまでは聞きとる前に僕の意識はほとんどなかったが、なぜか自分以外の何者かに言わされたような感覚でつぶやいた。
「でぃ、えむ、しす・・・・・・」
最後まで言えたか言えなかったか、そこで意識は完全に切れた。