プロローグ
『内側の世界』。
そんなものの存在がネットでうわさされていた時、僕は全く知らなかった。そんなおかしな名前のものがあれほど身近に存在したのは僕自身かなり驚いた。
とある一週間。それは見ている側からしたら一瞬なのかもしれない。しかし、僕たちにとってはそれはとても長く、時に永久に感じたかもしれない。
少し信じられないかもしれない。それは非日常的で、現実では考えられない出来事だから。
ある晴れた日、朝早くに家を出発しとある場所へ向かう。普段ならこのまま通う大学に向かうのだが今日は違う。先輩のお見舞いだ。その人は僕の所属するサークルの先輩でとても元気が良い。少し抜けているところもあるが、僕にとってかけがえのない存在なのだ。
その先輩がちょっとした事故で怪我をしたと聞いたので、大学に行く前に少し病院へよっていこうと思ったのだ。聞いた話ではあまり大したことはないとのことだが、先輩は少し特殊な事情を抱えているのでそれが心配でならない。
今気がついたが、こんなに早く行っても面会できないではないか。僕としたことが、変なところで抜けてしまった。そう思い、先ほどまでは走っていたが、ゆっくりと歩くことにした。
先輩がいないとなるとサークルは僕一人だけになってしまう。少しさびしい。僕一人ではどうしようもないので、今朝行くことのできなかった先輩へのお見舞いに行こう。何か花でも買っていこうか、先輩はどんな花が好きなのだろうか。少し考えながら先輩のいる病院へと向かった。
病院で先輩への面会をお願いすると看護師さんは快く部屋まで案内してくださった。病室では先輩はそこそこ元気そうだった。だがいつもよりは少し明るさが少ない。仕方のないことだが、あまり元気の無い先輩を見ていて僕は悲しくなった。
少し先輩と話してから僕は病院をあとにした。買っていった花はかなり喜んでもらえた。
少し暗くなってきてしまったので歩みを早める。自宅まではどうしても人気のないところを通らないといけないので、少し怖くなる。大丈夫、いつも何もないではないか。そう自分に言い聞かせながら小走りで家へ向かう。
あと一つ曲がり角を曲がれば自宅に着く、と言うところで――突然、何者かに後頭部を棒のようなもので殴られる。一瞬意識がとんだ。だがなんとか持ちこたえる。
「なに、もの、だ……」
自分を殴った相手が誰か確かめようと後ろを振り返ろうとする。
――だがそれを成し遂げることはできず、一発うなじを殴られ、僕はその場に気絶した。