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 翌朝。は飛ばしていいか。いつもと変わらずに洗濯したり、掃除したりして過ごして、店に出勤した。雇用形態について決まったのだが、なんと正社員として雇ってもらえるようだ。サイト作成に俄然やる気が出てきた。


 まずはいくつサイトを作るかだが、3店舗全部を別々で作ってリンクさせるのか、ひとつのサイトにまとめていろいろ見られるサイトにするのかだが、実はどちらもやることは同じである。違いは総合ページを作るか、リンクページを作るかの違いしかない。まあ、3店舗はそれぞれ違うようなので、リンクページくらいで良いだろうということになった。キャバクラ・マーメイド。居酒屋・人魚。エステ風サロン・隠れ家の3店舗だ。


 エステ風ってなんだろうと思ったら、エステマシンは高いのでオイルマッサージだけなので、エステ風にしたそうだ。もちろん、エステシャンの資格を持った従業員もいないとか。


 何でそんな中途半端なものをと思って聞いてみたら、もともとはキャバクラだけだったんだけど、仕事終わりに気兼ねなく食事ができる場所とリラックスしてお肌のメンテナンスが出来る場所をお店の女の子たちの為に始めたのが最初だそうだ。いまでは、他のキャバクラや飲み屋の女の子たちが仕事終わりに寄るようになって、なかなか繁盛しているそうだ。


 明日、サイトに載せるために各店の室内外の写真を撮る事にしようとしたら、せっかくなので良いカメラで撮ろうということになり、機材を買いに行く土曜日に一緒に購入してからと先送りになってしまった。


 それだったらと、それぞれの店舗の雰囲気をサイトデザインに生かしたいので、簡単な写真だけでも先に撮っておこうと各店舗を挨拶もかねて回る事にしたが、打ち合わせ時間が思ったよりも長くかかっていたようで、リコちゃんの帰宅時間が一時間後に迫っていた。


 そこで、社長と二人で行くことに・・・はならなかったので、明日改めてリコちゃんと回ることになった。なんか、私とリンコ社長を二人きりにしてはいけない感じになっているようだ。まあ、私も何となく怖いのでそうしてもらえると助かる。


 今いるこの店のサイトデザインを考えるために、いろんなサイトをまとめたサイトをリコちゃんと見ながら考えていると帰宅時間となった。


「今日もうちで晩御飯食べて行く?」


「いえ。今日は送るだけにしておきます」


「まあ、お母さん。なんか変だからねぇ~。しょうがないか」


「本当にどうしたんですかね?たぶんですけど。私って、リンコさんの好きなタイプの男性じゃないと思うんですけどねぇ」


「うん。今まで付き合ってきた男の人と全く真逆だね」


「まあ、そうなるだろうねぇ。明るくて、痩せていて、男らしいって感じ?」


「そうそう。それにギャンブル好きで、女好きで、お酒好きが付いていたね」


「全部当てはまらないんだけどなぁ・・・」


「あれ?女好きとお酒好きは合っているんじゃない?」


「え?何でそう思うの?」


「なんとなく?」


「女好きではないかな?人並みだと思うし。いや、草食系かも知れない・・・。関わり自体が無いから興味が持てない感じ?」


「そっかぁ。でも、いまは女性だらけの職場で働いているよねぇ。男性従業員は手代さん合わせても6人しか居ないし」


「あと、お酒もそんなに飲まないかなぁ~。誘われたら飲むけど、普段は滅多に飲もうと思わないかな」


「へ~。それは意外」


「そう?ああ、もうこんな時間だ。はやくお店を出ないと」


「ほんとだ。それじゃあ、行きましょうか」


 リコちゃんが事務所から出て、店内を通ってお店を出る時は特に挨拶はしない。なぜなら、お客たちには関係ないことでお疲れ様ですと挨拶するというのは空気を悪くしてしまうからだ。まあ、それでも常連のお客さんはリコちゃんのことを知っているので、手を振るくらいのことはしてくれるようだ。私はメグリちゃんに手を振るくらいだが、なんかナツキちゃんとミキちゃんが増えていた。あれ?サクラさんも手を振っているや。覚えていてくれたんだねぇ。


 お店を出ると、リコちゃんを家まで送ってから、すぐに自分のアパートに引き返す。リンコさんが復帰するまでは送ってあげるようにお願いされたのだ。なんだかんだで、娘が大事なんだろうねぇ。でも、それなら娘の前で暴走するのは控えてほしいものだ。私の貞操の為にも。


 昨日と違って、店の前を通っても女の子たちは出てこない。まだ営業時間だからだ。特にメグリちゃんと待ち合わせをしているわけでもないので、今日はそのままアパートに帰ることにした。アパート近くのコンビニで晩飯を購入してアパートに着く。シャワーを浴びてから、部屋着に着替えて晩飯を食べながら、録画しておいたドラマを見て寝る。アルバイト時代と変わらない生活習慣だ。あの頃と変わった事といえば・・・


【お疲れ様~。いま帰るところです。ひとりで帰るのは寂しいなぁ~ メグリ】


【それだったら、今から迎えに行きましょうか? 手代】


【ほんとに?じゃあ、お店の前で待ってるね~ メグリ】


【は~い。いまから行くから待ってて~ 手代】


 そう。女友達ができたことがあの頃とは大きく変わったことだ。まあ、友達と思っているのかどうかは未確認なのだが。


 待たせてもかわいそうなので、部屋着の上から薄手の上着を着てから、アパートを出た。小走りで店に向かったので、汗を掻くと思ったが、夜の風が思っていたよりも冷たくて大丈夫なようだ。お店の前でメグリちゃんがスマホを見ながら待っていた。


「お待たせ~」


「あ!ありがと~。ユキオさん。アパートに戻ってたのにごめんね」


「別に遠くないから良いよ~。それに、近いとはいえ。夜道を女の子ひとりで歩くのはねぇ」


「だよねぇ。というわけでえいっ!」


 メグリちゃんがなぜか勢いよく私の腕に自分の腕を絡ませる。


「え?なに?暑いからくっつかないほうが良いよ?」


「いいの。こうしたらカップルに思われて、変な虫も寄り付かないでしょ?」


「代わりに送り狼が寄り付きそうなんですけど?」


「え~?ユキオさん。襲っちゃうの?」


 そう言って、私の顔をかがみながら覗き込む。その上目使いは反則ですよ・・・


「許可なく襲わない事にします」


「ほほう。許可を出せば襲ってくれると・・・」


「まあ、メグリちゃんのような美人さんが私なんか相手にするわけないよねぇ~」


「・・・相手にしないなら腕組まないんだけど?」


「それは、相手にしてくれるということ?」


「ふふふ~。どうでしょ~?」


「じゃあ、お友達からよろしくお願いします!」


 思い切ってお友達になってくださいと言ってみた。大人になってこんなことを言うのは初めてだなと思ったが、子供の頃も言ったことないな・・・


「こちらこそよろしくお願いします!そして、今後は一緒に帰宅してください!」


「そうだねぇ。リコちゃんがリンコさんと帰るようになったら、帰宅時間を合わせて帰っても良いかもねぇ。正社員になったから、タイムカードを押す必要もないし」


「え?正社員になったの?おめでと~!」


「ありがとうございます。人生初の正社員です」


「ほほ~。それは紹介した私の鼻が高くなりますな!」


「メグリ様には足を向けて寝れません」


「あはは!何それ~?」


「ん?あれ?知らない?」


「足を向けて寝れないってどういう意味?」


「私も良くは知らないけど、足を向けて寝るのは失礼なことだから、尊敬する人には寝てても気を使いますってことかな?たぶん」


「へ~。そうなんだ~」


「うう・・・。これがジェネレーションギャップというやつなのか・・・」


「15才離れてるからね~」


「友達としてやっていけるのか不安です」


「大丈夫じゃない?ユキオさん面白いし」


「そう?」


「うん。なんか、一緒に居るといつも楽しい感じ」


「それは喜んだ方が良いようだね~。わーい」


「何その棒読みー!失礼なー!本当に楽しいんだよ?」


「なんか、まじまじと言われると照れるね」


「へへー。照れろ照れろ!」


「ああ。メグリちゃん。そんなに腕をギュッとすると胸が当たるから!」


「これはね。当てているのだよ」


「ちょっと!なんかリンコさんみたいになってる!」


「うへへへへ~。セクハラしちゃうぞ~!」


「リンコさんって、そんなにセクハラするイメージなの?」


「うん。あれはひどいよ・・・」


「そのうち嫌でもされるんだろうな・・・」


「一緒に転職先探す?」


「いや。メグリちゃんはアルバイトでしょ?」


「あなたに永久就職希望します!」


「え?何?なんで、昭和のネタを知ってるの?」


「もちろん。リンコ社長が使ってたから」


「ああ・・・。そういうことね・・・」


「おっと、もうマンションに着いちまったぜ!このぷにぷにの二の腕を手放さいといけないとは!」


「それも、リンコさんがやってたの?」


「うん。これは女の子にやって、ぶっ飛ばされてた」


「なんか、映像が目に浮かぶわ~」


 楽しいけど、楽し過ぎて逆に怖くなる。いつか、この楽しい日々が終わってしまうかもしれないと思うと。でも、まあ。なんとかなるかなぁ~。


「それじゃあ。お勤めご苦労様でした!」


「は~い。おやすみ~」


「おやすみなさい」


 とりあえず。女友達は出来たようです。正社員にもなれたし。こんなに良いことが続くって、やっぱり私。もうすぐ死んじゃうのかな?




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