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 翌朝。


 知らないアドレスからメールが来ていた。


【昨日は母がご迷惑をお掛けしてすみませんでした。えっと、メグリさんからアドレスを教えてもらってメールをしています。森本リンコの娘のヒカルコと申します。昨日、お約束した通り、お仕事についてのお話はきちんと進めさせていただきますので、今日の午後5時にマーメイドのほうにお越しくださいますようお願い致します。 ヒカルコ】


 本当にしっかりした子だよなぁ。メールの文章からもそれがうかがえる。あれ?でも、ヒカルコ?ヒカリコじゃないの?もしかして、メグリちゃんが間違えて覚えているのだろうか?う~ん。ヒカルコちゃんに直接聞くよりも、メグリちゃんにメールしておくかな。


【ヒカルコちゃんからメールが来ました。メグリちゃん。名前を間違えて覚えていない?昨日はヒカリコって言っていたと思うんだけど・・・ 手代】


 これからヒカルコちゃんが上司になりそうな感じがするので、その辺はきちんと確認をとっておきたい。しばらくすると、メグリちゃんから返信が来た。


【ごめんなさい!私、いつもリコちゃんって呼んでいるから、ヒカリコちゃんだと思ってた! メグリ】


 天然なのかな?


【ヒカルコちゃんで良いんだね?なんか、今日の5時にお店で打ち合わせしてくれるみたいです。 手代】


【はい。ヒカルコちゃんです。リコちゃんによく注意されていたんだけどなぁ・・・ それにしても、リコちゃん。立ち直りが早いなぁ。ユキオさんが言ったとおりだったね。 メグリ】


【仕事が早そうだよねぇ・・・ なんか、これからヒカリコちゃんが上司になりそうな予感が・・・ 手代】


【間違いないね。 リコちゃん。最近、事務とか経理とかをやってるからね メグリ】


 二人で店舗を回っているって、リンコさんが言っていたけど、娘さんのことだったのね。


【それじゃあ。お店で 手代】


【うん。お店で メグリ】


 はっ!もしかして、私は女友達とメールをするという初めての行為をしているのではないだろうか?いや。まだメグリちゃんは私の事を友達だと思っていない可能性も・・・。だがしかし!友達だと思ってない相手に家族のことを話すだろうか?たぶん話さないよね?う~ん。大人になると、友達の作り方を忘れているので、どこからが友達で、どこからがただの知り合いなのかの線引きが難しい・・・


 まあ、とりあえず。店に行くまでに時間もある事だし、洗濯とついでに部屋の掃除をするか。あとは・・・。事前に仕事関係の調査をしておくかな。


 午後5時になり。キャバクラ・マーメイドに来た。店のドアは準備中になっているが、開いていたので中に入って声をかける。


「おはよ・・・は、もう夕方だから違うかな?こんばんわ~!手代です」


「はい。お待ちしていました。こんばんわ。改めまして、森本ヒカルコです。よろしくお願い致します」


「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。手代ユキオです」


「では、事務所のほうでお話ししましょう」


「わかりました」


 ヒカルコちゃんの後に続いて、事務所に向かう。男性店員たちが店のモップ掛けやテーブルを拭きながらこちらをチラチラ見ているので、会釈をしながら事務所に向かった。


 事務所に入るとソファーに座るように促されたので座る。向かいにはヒカルコちゃんが座る。今日は私服なんだ。あれ?今日は平日だから・・・学校が終わってから、着替えて来ているのかな?そんな考えが顔に出ていたのか、私の顔を見たヒカルコちゃんが答えた。


「お店に入る時はさすがに制服だと問題あるので、一度うちに帰って着替えてから来ているんです」


「そうなんだぁ・・・って、あれ?なんで?」


「ふふふ。顔に出ていましたよ?なんで私服なんだろう?って」


「うわぁ。女の子をじろじろ見るのも失礼なのに、考えていることがモロバレってダメダメだね・・・」


「いえ。むしろ、手代さんが良い人だとわかったので良かったです」


「え?良い人?」


「はい。嘘の付けない人は良い人です」


「あ~。まあ、嘘をつくのは苦手かなぁ~」


「それでは、さっそくですが。お店のサイトや生放送をする為に機材を購入する必要があるとか?」


「え?あ、もう仕事モードなのね。えっと、一応。軽く調べてUSBメモリに資料を入れてきました」


「それじゃあ・・・。私のパソコンを使いましょうか。椅子は社長のを移動してっと」


「ああ。私がやります。一応、今日から雇われるわけですし」


「大丈夫です。これくらいは私がやりますので」


「いえいえ。ヒカルコさんは私の上司になるんですよね?それなら、きちんと部下として雑用は私が」


「え?私が上司ですか?」


「あれ?違うんですか?」


「・・・いえ。そう・・・なりますね」


「それでは、部下の私が」


 まあ、そんなに距離は無い上に、椅子はキャスターが付いているので、転がして移動するだけなのだが。


「そっかぁ。手代さんが私の部下になるんだぁ・・・」


「ん?どうしました?ヒカルコさん」


「え?ああ。いえ。なんでもないです。それよりも、ヒカルコさんはちょっと・・・」


「え?でも、他になんて呼べば?」


「みんなと同じで、リコで良いですよ」


「リコさんですね」


「リコで」


「リコさんですね」


「リコで!」


「じゃあ、リコちゃんで」


「む・・・。まあ、それでいいです」


「そういやさ。なんでリコちゃんなの?名前からすると、ルコちゃんになるんじゃないの?」


「それは、母がリンコなので、みんなルコじゃなくてリコって言いだして・・・」


「リンコさんの印象が強いからか・・・」


「なんか、すみません・・・」


「いや。リコちゃんが謝る必要はないんじゃない?」


「いえ。昨日のこと。本当にごめんなさい。改めまして、社長には謝罪させますので」


「いや。リコちゃんが助けてくれて、何もなかったし。雇ってもらえることにはなったので、別に良いよ?」


「いいえ。あのセクハラ魔人はきちんと制裁しないと懲りないので」


「あ~。あれも一応セクハラに入るのかなぁ・・・」


「まさか、男の人の前でも脱ぐなんて思ってもみなかったです。油断していました」


「ん?というと、歓迎会のことは知っていたの?」


「はい。経費で落としたいと言ってきたので」


「そっかぁ。そういや、社長は?」


「昨日のお仕置きでちょっと動けない状態でして・・・」


 何があったんだろう・・・


「それよりも、USBメモリを」


「あ、はい。そういえばそうだったね。えっと、ここか」


 USBメモリをパソコンのUSBポートに挿し込む。そして、来る前に調べておいたサイトのページや比較した情報を表示する。


「なるほど。思っていたよりも安く済みそうですね」


「ですね。良い性能のデスクトップの価格がだいぶ下がっているみたいですね。そういや、この前新しいのが発表されていたっけな」


「新機種がでると前の物は安くなりますからねぇ」


「ん?リコちゃんもそこそこ詳しい系?」


「はい。そこそこ詳しいです。生放送サイトもたまに見ていますので、手代さんが言っていたお店での生放送はぜひやってみたいです!」


 なんか、キラキラした目で見てくる。これはたまに見ているレベルじゃないな・・・


「それじゃあ、放送サイトはどっちにする?こっちは有料会員になってからで、こっちは登録だけで出来るけど」


「こっちかな。無料のサイトは広告が結構目に入って来て集中できないですから」


 詳しいな。やはり・・・


「それじゃあ。パソコンとカメラとマイク。あと、ボイスチェンジャーソフトを購入して・・・」


「え?ボイスチェンジャー?必要ですか?」


「うん。社長がね。知り合いにばれたくない子もいるらしいから」


「ああ~。確かにそうですね。無料のソフトは種類も少ないですし、音割れもしやすいですからねぇ」


 ん?リコちゃん。もしかして、放送しようと思ったことがあるのかな?やけに詳しいぞ?


「マイクは固定で、集音範囲はエリア内に限定したほうが良いだろうからぁ・・・」


 機材選びがサクサクと進んでいく。リコちゃんがやけに詳しい気がする。これ、下手すると放送しているな・・・


 リコちゃんが用意した資料から、購入機材を選択してどこで購入するかも決定していた。全部揃うお店まで把握している・・・だと・・・!?


 リコちゃんに完全にお任せになったが、今度の土曜日に買いに行くのには私も付き添うことになった。あと、放送スペース確保は明日の閉店後に男性店員に協力してもらって、一気にやるそうだ。女の子たちの待合室を放送スペースにするそうなので、パソコンを置く場所を確保するぐらいなのだが。


 思ったよりも、あっという間に予定が決まってしまった。時間が余り気味だったので、サイトについての打ち合わせもしようかと思ったのだが、リコちゃんが22時には帰らないといけないので、今日はここまでとなった。もう5時間経っていたのか・・・


「手代さん。一緒にご飯食べに行きませんか?」


「え?こんな時間に?」


「え?手代さん。晩御飯食べてないですよね?」


「まあ、そうだけど。こんな時間に未成年と外で食事はダメなんじゃないかな?」


「大丈夫です。うちで食べますので」


「はい?」


「昨日のお詫びもかねて、うちで晩御飯を食べて行ってください」


 どうやら、拒否権は無さそうだ。まあ、社長が居ると思うので二人きりになることはないだろうが・・・




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