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方向性あってますかね?と聞かれても誰もわからないんですけどね(なぜ作者もわからない)




 メグリちゃんの部屋のリビングに通されて、ソファーに座りコーヒーを飲んでいる。よくよく考えれば、女性の部屋にこうしてあがるというのは初めてのことだ。まあ、前に酔ったメグリちゃんを運んできたのは特殊な出来事なのでカウントしてないのだが。


「ふぅ。ちょっと落ち着いた」


そう。それで、重い話って何かな?とサラッと聞けたら、きっと彼女が出来たかも知れない。まあ、メグリちゃんが話したくなるまで大人しく待つことにする。


「私もさ。母親が男の前で裸になっているところをみたことがあるのよね・・・」


 そうかぁ。さっき急にふさぎ込んだのは昔の嫌な出来事を思い出していたからなのか。


「あれは、大学受験の最終日だった。最後に受けるはずの学科が問題用紙に不備が見つかったと言われて、その入試テストが無効にされたの。滅多にない事が起きて、私がうちに帰る予定の時間が早くなった。まあ、それがあの現場に遭遇してしまうきっかけになるなんて、当時の私は思いもよらないし。最初は何が起きたのか分からなかった・・・」


 メグリちゃんは、自分を落ち着かせるようにコーヒーを一口飲む。そして、また語りだす。


「リビングに入ったら、ソファーで母が知らない男に後ろから胸を揉まれながら、服を脱いでいるところだった・・・。私は一瞬だけ何が起きているのか理解が出来なくて固まっていたけど、その母の胸を揉んでいる男が私に気が付いて声を上げたの。うわっ!って」


 コーヒーの入ったマグカップをさすりながら、ただただあったことを語るメグリちゃん。


「そしたら、母が言ったの。なんで、ここにいるの?って・・・。まあ、今思えば大学入試中のはずの娘が急に帰ってきて、母も気が動転していたんだと思う。そりゃあ、まだ帰ってくるはずのない娘に自分のみだらな姿を見せることになるなんて思ってもみなかっただろうし。でもね。当時の私は、その言葉が許せなかった。まるで、自分がここに居てはいけないと拒絶された気がして・・・」


 コーヒーを飲もうとするも、すでに空になってしまっていたようで、コーヒーを注いで一口飲む。その間、私は何も言わずにただ彼女の話に耳を傾けていた。


「そこからはもう最悪で、母と一緒に居ることがただただ嫌になって。友達に泊めてもらいながら一カ月間、家に帰らなかったの」


 入試を受ける時って、まだ高校通っていたかな?ああ、私は高校を中退したのでわからないや・・・


「で、母がこの部屋を買ったから、ここに住んでって。鍵を親戚に預けて自分は男と暮らし始めたの」


 この部屋賃貸じゃないんだ・・・


「まあ、今でも母とは会ってないんだけどね。それじゃあ、これで話は終わり!まあ、あれだ。手代さんは悪くないけど、リコちゃんがもしもあなたの事を怒ったとしても、責めないであげてね」


「うん。まあ、あの子は大丈夫じゃないかな?」


「え?なんで?」


「ちゃんとリンコさんに怒っていたから」


「え?」


「たぶんさ。君も母親と男が抱き合っているのを見た時に怒れば良かったんだよ。家族で使うリビングで何しているんだ馬鹿野郎!とっととラブホに行けってさ」


「ぷっ!何それ。超ウケるんですけど」


 メグリちゃんは笑いながら泣いていた。きっと、メグリちゃんもわかっているんだろう。怒るタイミングを逃したために修復不能なほどにこじれてしまった母親との関係に。そして、何か大きなきっかけでもない限り、それはずっと続いてしまうのだと。


「それじゃあ。そろそろ帰るね」


「え?もう?何なら夕食。食べて行けばいいのに」


「う~ん。今日はちょっと色々あり過ぎたから、ひとりになりたいかなぁ~って、普段ひとりきりのくせにねぇ。生意気だねぇ」


「だね。生意気だね。ユキオのくせに生意気だ!」


「はは。それ、子供の頃によく言われていたよ。何で言われていたかまでは覚えてないけど」


「あ~。ユキオさんらしいね~」


「それじゃあ。またね?」


「うん。またね。というか、明日お店で会おう!」


「いや。明日は無理かな?ちょっとね。リンコさんとあんなことになったから、ちょっと時間を置いたほうが良いと思うし」


「大丈夫大丈夫。たぶんリンコさんは自宅謹慎だから。たぶん。リコちゃんが来るんじゃないかな?メールで明日お店に来てもいいか聞いてあげるね」


「うう~ん」


「リコちゃんが、時間が欲しいって言ったら、しばらく待機ということで」


「うん。じゃあ、それで」


「リコちゃんから直接メールさせたほうが早いと思うから、メルアド教えても良い?」


「うん。いいよ。たぶん仕事に関してもリコちゃん?が仕切ることが多そうな感じがするし」


「良く分かるね。そうそう。リンコさんが二日酔いで動けない時なんか、リコちゃんが指示出してるね」


「まあ、あの剣幕な上で冷静に対応しているのを見たらねぇ。大人でもなかなか出来ないよね」


「うん。リコちゃんはしっかり者です」


「それじゃ」


「は~い」


 飲み会でつまみを食べたけど、なんだかお腹が空いたので、コンビニでお握りとアイスを買ってからアパートに帰った。




感想・レビューなんかくれるとテンションが上がります。上がるだけです。

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