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コメディタグを付けました。




 社長さんが戸締りをして、店のドアの札を準備中から定休日に変えていた。なんで最初から定休日の札を掛けていなかったのだろう?そんな私の疑問に気が付いたのか、社長さんは笑いながら説明してくれた。どうやら、私が面接に来た時に定休日の札が掛かっていたら、入り辛いだろうという配慮だったようだ。確かに、定休日の札が掛かっていたら、ドアを開け辛かったな。


「それじゃ。こっちねぇ。割と近いからさ」


 そう言って先に歩き出す。歩いて行ける距離のお店に行くのか。まあ、昼時の駅前なのでご飯屋はいくらでもあるだろう。いったい何を食べに行くのだろう?中華かな?ファミレスかな?


 そんなに話をする間もなく着いた場所は、先ほどの店から徒歩5分の居酒屋人魚だった。あれ?お昼を食べるんじゃないのかな?あと、ドア前の置き看板には本日定休日の札が掛かっていた。


「あれ?この店。定休日みたいですけど?」


「うん?ああ。大丈夫。ここ、私のお店だから。今日は従業員もいないけど、料理だったら昨日のうちに作らせてあるから大丈夫大丈夫。さあ、入って入って」


「は、はあ。では、失礼します」


 ドアを開けて中へ促す社長さん。自動ドアじゃないんだなぁ。と思いながらも促されるまま入ると、後ろで施錠する音が聞こえた。振り返ると社長は笑いながらこう言った。


「ん?ああ、鍵?掛けとかないと間違えてお客さんが入って来ても困るからねぇ」


 まあ、確かにそうだ。


「なるほど」


「それじゃ。奥の座敷で食べようか。そう、そこの奥ね。私はお酒と料理を取ってくるから、先に靴脱いでくつろいでてぇ~」


「はい。わかりました」


 言われるままに奥の座敷に靴を脱いで上がる。中は掘りごたつになっていて、足が伸ばせるようになっていた。正直、あぐらをかくのもしんどいので助かる。太っていると、足が太くてあぐらをかいてもバランスが崩れてけっこう背中が疲れるのだ。


「は~い。お待たせ~」


 社長さんがお盆に乗せて、ビールやつまみを持ってきた。そして、お盆のものを机に並べるとすぐにまた部屋を出ていく。


「もう少しあるから、先に飲んでいてもいいよ~」


「いえ。大丈夫です。待ちます」


「そう?それじゃあ、ちょっと待っててね~」


 社長さんが自らお酒や料理を持って来てくれるのに、先に飲んでいるというのはちょっとね。ああ、でもそれだったら料理を運ぶのを手伝った方が良かったかな・・・


 ちょっとへこんでいると足音が聞こえてきた。


「は~い。お待たせ~。とりあえずこれくらいあったらしばらくもつでしょ」


 お盆には生ビールがピッチャーに入れられて載せられていた。そして、唐揚げや焼き魚に焼きお握りなど居酒屋では定番な酒のつまみが机の上に並べられた。


「は~い。これおしぼりね~。それでは、手代ちゃんのプチ歓迎会を開催します!かんぱーい!」


「え?歓迎会?お昼食べに行こうという話だったんじゃ?」


「ふっふっふっ。君のおかげで私が昼からお酒が飲めるのだよ。ありがとうねぇ~」


「は、はあ・・・」


「良いから良いから、手代ちゃんはビール大丈夫?ダメだったらカクテル系もあるよ?」


「いえ。大丈夫です」


「それじゃ。かんぱーい!」


「か、乾杯・・・」


 社長さんのテンションに圧倒されつつ昼間からお酒を飲むことになってしまった。


 1時間後。携帯電話にメールが来たようなので確認するとメグリさんからだった。


【手代さん。面接どうでした? メグリ】


 えっと、なんて返せばいいかな・・・まあ、ありのままの状況を書いておくか。


【採用されました。今、居酒屋で社長さんが歓迎会をしてくれています。 手代】


 これでいいだろう。しかしまあ、メグリちゃんのおかげで採用されたようなものだからなぁ。何かお礼をしないとなぁ。何が良いんだろう?って、またメールか。あれ?メグリちゃん?


【手代さん!その居酒屋って人魚ですか?とりあえず何でもいいからお店から出てください!今すぐに! メグリ】


 へ?なんだこれ?今すぐお店を出ろって言われてもなぁ・・・


【さすがにそれは社長さんに失礼だから・・・でも、あんまり長い事飲むのもアレだから、あと一時間くらいでお開きにしてもらうよ。 手代】


「ただいま~。いや~おしっこがどばどば出ちゃってちょっと勢いでイキそうになったった~」


「は、はあ・・・」


 実は30分ほどで社長ことリンコさんは酔っ払い始めて下ネタを連呼している。ちなみに社長さんと呼んだら、リンコって呼んで!と怒られたので、リンコさんと呼んでいる。


「ふぅ。ちょっと暑くなっちゃったなぁ~。ちょっと上脱ぐね~」


「へ?」


 トイレから帰ってきて、座った後少しぼうっとしているなと思ったら、唐突にそう言って上着を脱ぎだす。といっても、下はキャミソールというんだっけか。とにかく薄いワンピースのような物を着ていて、すぐ下には黒いブラジャーがはっきりと透けて見えている。


「いやいやいや!リンコさん!二人きりとはいえ、男の前で上着を脱いだら行けません!」


「やー!暑いのー!これも脱ぐー!」


 そう言って、リンコさんは薄い布地とブラジャーを脱いだ。モロにリンコさんの大きなお胸様がこぼれ出した。


「ちょーーー!!!なんでブラジャーまで脱いでるんですかーーーー!!」


 さすがに直視できない。顔をそむけて抗議をする。


「えー?だって、暑いんだも~ん。ユッキーも脱いじゃっていいんだよ?モロ出ししちゃっても全然かまわないのだよ」


「いや。脱ぎませんから、というかリンコさん服着てください!」


「やー!別にユッキーにだったら、全部見られても大丈夫だよ?」


 そういうと、私の視線の外で何やら立ち上がる気配がする。なんだかとても嫌な予感がする。お胸様を視界に入れないように手で塞ぎつつ様子をうかがうと、パサッとリンコさんが履いていたスラックスパンツが足元に落ちている。


 えっ?と思ったら、またパサリと音がして、今度は黒のショーツがリンコさんの足元にあった。


 ちょちょちょちょちょちょ!マジで脱いだよこの人ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!どうすんのこれ?どうすんの?


「さあて。ユッキーも私と同じように産まれたままの姿になるのだ・・・」


 なんか、リンコさんの足がじりじりとこちらに近づいてきている。よし!逃げようと立ち上がり部屋の出入り口に行こうとした瞬間。腰にリンコさんがしがみ付いた。


「逃がさないわよ~!」


「きゃー!」


 思わず女みたいな悲鳴を上げてしまった。すると、バン!とどこかのドアが勢いよく開く音がしたと思ったら、ドタドタドタ!と誰かが駆けてくる音がする。


「おかぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁんんんんん!!!」


 なんか怒った女子高生が制服のまま座敷に現れた。なんか、すごく怒っている。ん?待てよ・・・お母さん?というと・・・まさか・・・


「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!なななななななな、なんで!?なんでヒカルコがここにいるの!?」


「今さっき、メグリさんからメール貰ったの。新しく雇う人を連れて定休日の人魚に連れていったって書いてあったから、もしやと思ったら、やっぱり!」


「ちちちちちちち、違うの!違うのよ?」


「何が違うの?すっぽんぽんになって男の人にしがみ付いていて。な・に・が・ち・が・う・の?」


「こここここ、今回はぁ~本気?」


「はぁ~~~~~!!!!!????」


「いや。これから本気になる予定?」


「・・・あの!あなた!えっと、お名前は!?」


「へ?あ、はい。手代ユキオです」


「手代さん。すみませんがうちの母と込み入った話をする必要があるので、今日のところはお帰り頂けますか?お仕事のことに関しては、きちんと後日連絡いたしますので」


「やー!ユッキー!私を一人にしないで!」


「ふん!さあ、はやく!」


 最近の女子高生はパワフルだなぁと一瞬思ってしまうほど、勢いよく私の腰にしがみ付いていたリンコさんを引き剥がすと私の背中を押して座敷の外へ促す。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ。ユッキィィィィィィィィィ!!!」


「・・・」


「ひっ!」


 彼女の顔は向こうを向いているのでどんな顔をしているのか分からないが、その何かしらの表情か目力でリンコさんを黙らせた。これ以上ここにいるとなんだか危険な気がしてきたので、非難することにした。


「そ、それじゃあ。リンコさん。今日は失礼します!」


「はい。本当に母がご迷惑をお掛けしてすみませんでした。このお詫びは必ず致しますので」


「い、いえ。気にしないでください」


「それじゃあ。お母さん?ちょっと服。着ようか?」


 私は靴を履くと、走り出したい衝動を抑えつつ、足早に居酒屋人魚を出たのであった。




果たしてリンコさんはどうなったのか!?


次回にご期待ください?

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