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告白ラッシュ!




 それから、3店舗を回って仮で写真を何枚か撮り、どういう情報を載せるかを打ち合わせして、数日が経ち。機材を購入しに行く土曜日となった。リコちゃんと駅前で待ち合わせして一緒に行くことにしていたのだが、駅前に行くとなぜかリンコ社長とメグリちゃんが一緒に待っていた。


「あれ?リンコさんにメグリちゃん。どうしたの?」


「私は娘の貞操を守りに・・・は冗談として、お財布として参加します」


 リコちゃんに思いっきり睨まれて、変な冗談は最後まで言わして貰えなかったリンコさん。ちょっと寂しそうだ。でも、ド下ネタの冗談は引くので止めてほしい。時々、リンコさんの下ネタはグロイのだ。


「私は・・・なんとなく?ほら、なんか電気屋さんって楽しいじゃない?」


 なんだか、メグリちゃんの挙動がおかしい・・・。何かあるのだろうか?


「メグリちゃん。もしかして・・・」


「へっ?あの・・・。じ、実は・・・」


「パソコンでも買うの?」


「あー。うん。そうそれ!私、パソコン詳しくないから、一緒に行って教えてもらおうかなぁ~って」


「明らかに乗っかりましたな・・・。リコさんや」


「そうですな。母上殿。これはメグリさん。何か目的がありますな」


「あの・・・。そういうやり取りは、聞こえないようにひっそりとお願いします」


「あううう・・・。わかりました。正直に言います。ナツキちゃんに今日はユキオさんとリコちゃんの電気屋さんデートって聞いちゃって、それを信じて来ちゃいました・・・」


「そして、私とヒカルコが一緒のところを見て、騙されたと気が付いたけど、思いっきり顔を見られた上に、ヒカルコに手まで振られて帰るに帰れなくなったと」


「・・・はい」


「そ、それは!?つまり、ユッキーをヒカルコに奪われたくないという乙女心!?」


「な、なんだってー!?お母さんにはもう一ミリも残されていない乙女心!?」


「・・・あの。リコさんや」


「なんだい?母上殿」


「確かに乙女とは言えないお年頃になりましたが。残っていないと言われるとそれはそれで・・・」


「なん・・・だと・・・?ま、まさか!?乙女心が残されていただと!?」


「「な、なんだってー!?」」


「いや。あのね。ヒカルコはまあ、良いとして。メグリちゃんとユッキーには乗ってほしくなかったなぁ・・・」


 珍しくリンコさんがマジで落ち込んでいる。まだ、乙女心が残されていたのか・・・


 リコちゃんがリンコさんの肩に手を置いた。


「最近。暴走していたのって、もしかして、ユッキーへの乙女心があふれ出そうなのを抑えた結果だったりする?」


「ちちち、ちげーしっ!ただユッキーとちょめちょめしたかっただけだしっ!」


「それはそれで、教育的指導だぞ?」


 リコちゃんの笑顔が怖いです・・・


「あ、はい。すみません。実は初恋の相手がユキオさんでした」


「「「え、えーーーーーー!?」」」


 おいおいおい。いつからそういうことになっていたんだ?というか、リンコさんとは店で会ったのが初めてじゃなかったの?


「あ、たぶん。ユキオさんは覚えてらっしゃらないと思います。中学の時ですし。同じクラスになったこともないですし」


「おい!その話はマジなのか!?」


 リコちゃんがどこかのデカっぽくなっている。


「リンコ社長。その話。詳しく聞かせて頂きましょう。あ、ユキオさんはどうします?」


「えっと・・・その・・・。もう、ぶっちゃけてますから、できれば一緒に・・・」


「というわけで、ユキオさんも一緒にそこの喫茶店・・・は、ちょっとあれかな?多少騒いでも大丈夫なカラオケにしときます?」


「だね。絶対大声出ちゃうからね」


「そうっすね・・・。できれば、個室でお願いします」


「それじゃあ。そこのカラオケ店に」


 ただ買い物に行くはずが、なぜかリンコさんの告白会となってしまった。


 部屋に着くと、カラオケのボリュームを下げて部屋の中だけでも静かにする。この店は飲み物がフリーサービスで、室内にドリンクマシンが設置されている。とりあえず。みんなの分の飲み物を用意してから座るとリンコさんの告白が始まった。


「中学生の頃。自分。グレてまして、いわゆる不良グループに入っていました」


「やっぱり」


「え?そうなんですか?」


「あっ!?もしかして、廊下の奥から私の名前を意味なく大声で呼んでいた子?」


「へ?お、覚えててくれたんですか?」


「そりゃあ。ものすっごい恥ずかしい思いしてたからね。知らない子に大声で名前を呼ばれるってだけでも、びっくりなのに。みんながいる廊下でそれをするんだもの」


「あー。やっぱり、迷惑でしたか・・・」


「普通はダメだよね」


「そうだよ。みんなの前で名前を呼ぶって意味わかんないよ!」


「いや。すみません。あの時は、自分も訳がわかんなくなっていて、名前を呼ぶだけで楽しかったんです。からかっているとかじゃなくて、好きな人の名前を大声で呼んでいることに喜びを感じてました」


「それで、同じクラスでもないのに何で好きになったの?」


「私もそれ気になります」


「不良グループの中に私と同じ小学校から来ているやつが入っていたのが関係している?」


「あ。はい。そうです。そいつに何かのきっかけでユキオさんの話を聞いて、最初はからかうだけのつもりだったのが、いつの間にか恋になってました」


「どういうきっかけでユキオさんの話になったんだろう?」


「確かに手代さんって、正直イケメンじゃないし。話題になる事はそうそうないと思うんだよね。あ、ごめんね」


「いや。いいよ。実際、中学時代は目立たないように生きてたから」


「え?なんで?」


「それは、自分から説明するっす。ユキオさんはうちらのグループのリーダーに何か気に入られていて、ことあるごとに腕相撲勝負を仕掛けられてたっす」


「「腕相撲勝負?」」


「あー。あれかぁ。つか、あいつリーダーしてたんだ・・・。急に教室に来て腕相撲しようぜって、意味わからなかったけど。友達と腕相撲で遊んでいる時の話でも聞いたのかねぇ?」


「たぶんそうっすね。ユキオさん。なんか腕相撲がすげぇ強いって、うちらの間では有名になっていました。実際、リーダーに一回勝っちゃってるんですよねぇ」


「まあ、後日。二回目やったときにあっさり負けたけどねぇ」


「そりゃあそうっすよ。リーダー。ユキオさんに負けたのが超悔しかったのか。メンバー全員相手に練習してましたから」


「そんなことになってたんだ。中学生ってほんとわけ分からんことで熱くなるよねぇ・・・」


「へ~。なんかよく分からないけど。ユキオさん巻き込まれ体質だったんだね~」


「あ。私を公園で解放してくれたのも。ある意味巻き込まれ?」


「さらにメグリさんの紹介でうちの母と再会かぁ」


「最初は気が付かなかったっす。でも、居酒屋で飲む頃には完全に思い出してたっす」


「そこから、暴走行為が始まったんですねぇ・・・」


「娘の前で裸になって、男を襲おうとするぐらいにねぇ・・・」


「し、仕方なかったっすよ!恋は超特急っすよ!」


「いや。意味がわからないから」


「というわけで、私とお付き合いしてください!」


「はい?」


「え?お母さん?それ、本気?」


「リ、リンコ社長・・・」


「本気っす!本気と書いて、マジと読むっす!再婚相手はユキオさんしか考えられないっす!」


「え?え?」


 え?どうすればいいのこれ?というか、告白会ってこっちの告白なの?罪の告白的なことじゃないの?というか、女性に告白されるって初めてなんですけど!どうしよう!でも、相手は子持ちだ!リコちゃんが娘になるのは・・・。アリっちゃアリだな。じゃなくて、もっと真剣に考えないと!


「ちょっ!ちょっと待ったーーーーー!!!」


 急にメグリちゃんが手を上げて立ち上がった。


「わ、私も初めて会った時から、す、す、好きになっていました!まだ、お友達からだけど、恋人前提・・・。ううん。結婚前提にお付き合いしてください!」


「よし!じゃあ。私も!」


「「ヒカルコ(リコ)ちゃんは止めなさい!」」


「え~。私もユキオさんのこと。好きだよ?」


「そこは、ほら。お母さんがユキオさんと結婚すれば。ユキオさんがお父さんになるんだぞ~」


「う~ん。お父さんよりは恋人にしたいかな?」


「だ、だめだよ!と、歳の差があり過ぎるでしょ!?」


「え~。メグリさんと私。4歳差だよ?メグリさんがOKなら、私もイケるじゃん」


「う・・・」


「こ、こら!メグリちゃん!そこで言い負かされるな!そ、そもそも。ヒカルコはユキオさんが逮捕されちゃうでしょうが!」


「そ、それだ!そうだよ!ユキオさんが犯罪者になっちゃうよ!」


「え?さすがに18までその辺のことは待ってもらうよ?純愛ならセーフでしょ?」


「え?そ、そうなの?」


「え?いや。私もその辺のことは・・・」


 なんだろう。これはどういうことだろう?モテない人生を送ってきたはずのこの私に今。3人もの女性が告白してきている。まあ、若干一名は勢いで言っちゃっているみたいだが。ん?3名とも勢いで言っているかな?


「えーっと。とりあえず。みなさん。ごめんなさい」


「「「え?」」」


「いや。就職決まったばかりだし、いま3人に告白されても、ひとりに絞れるほどお互い知ってないし。そもそも、リンコさん。あなたは確実にその場の勢いで告白しちゃってるでしょ!それに何で2人もつられるかな・・・。とにかく。今回はノーカンで!頑張って告白したかも知れないけど、みんなまずはもっと知りあうところから!」


「「「りょ、了解です・・・」」」


 さすがに自分たちが勢いに任せて私を困らせてしまっている事に気が付いたのか、反省してくれている。のかな?まあ、リンコさんの暴走原因もはっきりしたので、とっとと買い物を済ませることにした。30分もしないうちに部屋を出る私たちをカラオケ店員が不思議そうな顔をしていたが。


 電気屋さんというのは、隣町にある家電ショップの集合ビルで、ビル内にいくつもの電気屋さんが入っている。各店舗上手い事ジャンルで住み別けられているようで、そこに行けば大体揃うと周辺の住民だけでなく、遠いところから来る客もいる。まあ、秋葉原のビル版的な場所だ。


 電気屋さんでは、リンコさんが意味深にマッサージ機を手に持って見ていたり、リコちゃんが迷子になったり、メグリちゃんが本当にパソコンを買ってしまったりしながらも、目的の機材を全部買うことができた。さすがに大荷物で、リコちゃんとだけで来ていたら、持ちきれなかっただろう。


 帰りはスムーズにお店まで帰り着いて、ささっと、すでに放送スペースを確保済みな待合室に買ってきたパソコンやカメラにマイクを設置して、テスト放送までしてみた。


 テスト放送なのに、十数名ほどのリスナーが来て焦ったけど、なんとか放送で来そうだった。


「「「「あー疲れたー!」」」」


 思わず4人でハモってしまった。お互い見合わせて、笑いの花が咲いた。なんか、最近幸せな日が続き過ぎていて本当に怖い。


 今までモテない人生を送って来た奴が、3人同時に告白されるとか、完全に死亡フラグだろ?




意外と大人対応のユキオ氏。本当はパニックのあまり考えるのを止めたかっただけです。

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