3話
亮の入学式から10日ほど過ぎた
今日は俺の入学式だ
亮は来れないが、両親はくるらしい
はっきりいって座ったり、立ったりするだけなのでくる意味がないと思うんだけど
あれからも夢を見て、最近勇者の夢を見た
けど、力を継承してなかったのでただの夢だったみたいだ
度々見る異形の怪物の夢はこの頃見ていない
まあ、1ヶ月くらい出なかったこともあったような気がするので問題ない
それにあの夢は他のと違ってあまり好きでないのだ
見てるこちらも、なんか寂しくなるというか、孤独感を感じるというか…言葉にし辛いが、まあともかくあまり好きでない
下に行くとまだ亮は行ってなかったみたいだった
行く前に「入学おめでとう」と言ってきた
やはり、亮は可愛い
なんでも、好きな人ができたらしい
亮なら告白すればオッケーもらえるって言ってるのだが恥ずかしがっていた
だが、そこもまた可愛かった
典型的な兄馬鹿だ
亮が家を出るのを見送って朝食を食べたあと俺も家を出る
車で送ると言って来たのだが、何故か登校時間と会場入場時間が大幅に違うので遠慮した
閑散とは言い難いがそこそこ静かな道を歩く
いつもはこの道を亮と二人で歩いていた
はっきり言って小さい頃は気に食わなかった
なんで、亮は英雄の前世を持っているのに俺はないのかと
しかし、その気持ちも成長していくうちに次第に無くなっていった
今は、一緒にいられなくて残念な気持ちとだけだ
そんな物思いにふけっているといつの間にか車通りの多い道に出ていた
後はここを道なりにそって歩いて、また住宅街に入って少しすれば学校に着く
自然と足が速くなる
亮と同じでないのは残念だが、今から行く高校には同じ中学出身の人も結構な数いる
久しぶりなので、早く会って話したいというのは普通だろう
特に幼馴染とは早く会いたかった
昔から亮と俺と彼女とでいつも話してた
そういえば、最近というかここ二年くらい亮と彼女は仲が良かった
付き合ってはないみたいだけど、本当のとこはどうかわからない
こんなことを考えながら住宅街に入る道に行くために車通りの多い道の歩道橋を渡る
半分くらい渡ったところで地震が起きる
しかも、立ってられないほど揺れが大きい
これはやばい
地震がではない
これぐらいの地震、そして下から聞こえるキーンといった高音
これはあの化け物が現れる時の特徴だ
俺はすぐさま歩道橋のもう半分を走って渡る
階段を下りて避難所にもなる学校に急いだ……だろう
何もなければ
しかし、見てしまった地面から出てきた怪物とその下で怯えて動けなくなった中学生と思われる3人少女が
俺は今度は道路をそのまま徒歩で横切る
今更ここを、怪物の側を横切る車なんてないだろうという
推測した上で、行動した
よし、まだ気づいてない
少女達の元に着いた時また確認したがまだ大丈夫そうだ
一先ず、逃げるために少女達には立ってもらわないといけない
「取り敢えず逃げよう。立てる?」
少女達は頷いて立つまだ、震えていたが大丈夫と言いながら励ますとなんとかなったみたいで
ありがとうございますと笑顔で言ってくる
ちょっと引きつってるけど
一先ず一番近い避難所の方に急ぐそこにまた地震が襲った倒れてきた少女をしっかり抱きとめてから愕然とした行こうとしていた道にまた怪物が現れたのだ右を見るとまだこちらを見ていない奴がもう一匹いる
さっき抱きとめた少女や他の少女達もまた震えだす
多分、今この子たちを見捨てて逃げればこの子らが食べられている間に逃げれるかもしれない
だけど……
「いいか、よく聞くんだ。」
俺は抱きとめていた少女に耳元で囁く
「あいつらは目がないかわりに音を聞いて対象を見つける。」
少女は頷く
「だから、俺はこれから大きな音を出してこいつらを引きつける。君たちは静かにこいつらが去るのを待ってから逃げるんだ。」
少女はまた深く頷いた
俺はそれを見て、笑みを浮かべる
少女が、他の二人に話かけたのを見て頷く
俺が出て行こうと思った時、後ろから手を掴まれる
掴んでいたのはさっきの少女だ
「あの、あなたはどうするんですか…?」
「そうだね、頑張って逃げる。」
「それじゃ…」
少女の言葉はそこで止められる
否、俺が止めた
「気にするなってのは無理かもしれないけど…まあ、気にするな。」
それだけ言うと、物音を立てないように少女達から離れ一気に走る
「こっちだ!」
さらに声を出して注意を引きつけるそのまま走ると二匹とも少女から離れた
三人が住宅街に入っていくのを見送ると足を止める
走ることが出来ないわけじゃない
だけど、もう走れない
もうすでに囲まれて走れないのだ
「まさか、三匹もいるとは…。」
どっか違うとこにいた奴だろう
でも、もう関係ない
もう死ぬのだから
「思えば短い人生だったなー。たった15年とちょっと。」
「来世は俺が英雄の前世とかにならんかなー?…無理だな。」
そう言って、笑う
その間も包囲が狭まってくる
「ごめんな、亮。約束守れそうにないわ。」
目をつぶったそこに三匹の怪物が群がった
「はあ、やっと魂が定着した。この魂マジ何なの?マジやばいんですけど(笑)」
いつの間にか真っ白な空間にいて、目の前のチャラ男がそんなことをボヤいていた
「ん?あっれ〜。起きたならそう言えよ。」
「俺死んだはずじゃ…。」
「あ?うん。死んだね。もうそりゃ見事に食われてバラバラになった。」
「えっと、それじゃなんで」
「なんで、ここにいるかって?そんなのここが神界だからに決まってるじゃん。ねえ?馬鹿なの?そうなんでしょ!」
めっちゃうざい
「あ、でも死んだといっても魂は抜けてないよ。むしろ定着したし?」
「……?」
はっきり言って意味がわからない
「うーん、君の魂は死んだ時に定着して覚醒するタイプらしい。偶にいるんだよね〜そういうめんでーやつ。」
「えっと、どういうことですか?」
「おっと、時間が来たみたいだ!それじゃ俺から一つ。」
俺は首をかしげる
「うぇほん、えー、お前に加護をやろう。それも特大のやつ。効果は!な、ななななんと!神る!以上。あ、一応常時発動してるから。んじゃ、加護付与すっか〜。あ〜、かったるい。長いんだよなあれ。えーと、汝になんとかこんとか、あーで、うーんと、まあいいや以下略!」
なんか、適当な呪文で加護をつけられた
力がみなぎる気はするけど、効果神るってなんだよ!
その文句を言う前に意識が朦朧として、途切れた
目を開けるといつもの夢だった
あの嫌いな夢だ
異形の怪物の夢だ
異形の怪物は天を向くと吼えた
「ヤット…、オワッタ。」
その後前と同じく崩れるように消えていく
だが、前と違ったのはその怪物の記憶、経験などが頭に流れ込んできたことだ。
それだけじゃない、今まで見た夢の力もだ
何百、何千いやそれ以上の記憶、技術、経験などが流れ込んでくる
戦闘のものだけじゃない
前に見た執事のおっさんの全て、料理人のすべてその他にも色々と流れてくる
その理由は俺の前世が原因だ