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6

 目が覚ますと隣に洋子が寝ていた。

 いや上に、の方が正確だ。空に覆い被さるように抱きついて、幸せそうに寝息を立てている。

 視線を上に向ける。目に入るのは天井ではなく、ベッドの上段の底板だ。ということは間違って洋子の寝床に入り込んでしまったわけではない。

 それならいいや。

 洋子を起こさないようにそっとベッドを抜け出す。昨晩どうやって寝たのかはよく憶えていなかった。風呂から上がった時点でもうかなり眠くて、部屋に戻って洋子と話をしている時には半ば夢の中だった気がする。

 その分目覚めは早かった。外はもう明るいが、起床予定時刻までにはまだずいぶんある。

 お散歩でも行こうかな。お天気もよさそうだし。

 空はパジャマを脱ぐと、クローゼットから浅葱色のワンピースを出して頭から被った。

“ちょっと散歩に行ってきます”

 一応書き置きを洋子の机の上に残していく。

 寮の玄関まで来てから靴を忘れたことに気付いた。幸い隅にサンダルが何足かあったので使わせてもらうことにする。

 風の澄んだ気持ちのいい朝だった。昼間はまだ夏の名残りが強いが。このぐらいの時間だと半袖では少し冷やりとするほどだ。

 今日は迷子にならないようにしないとな。

 鳥の声や葉のさやぎに誘われるまま、木立ちの中に分け入って行きそうになるのをこらえ、空は舗道をのんびり歩く。やがて現れた別れ道は真っ直ぐ進めば初等科の校舎へ至る。

 まだ土地勘はろくにない。そして空は方向音痴だ。知らない道を選ぶのは自分から望んで迷いに行くのも同然だ。

 しかし右側の景色には見覚えがあった。

「こっちにしよう」

 ほとんど迷うこともなく道を曲がった。なんとなく知っている気がする方に進んだ挙句、最終的に自分がどこにいるのか分らなくなるというのは空の迷子で二番目に多いパターンだったが(一番は何も考えずに気の向くまま進んだ場合だ)、今回は実際に以前に来たのことのある場所だった。

 右手に瀟洒な煉瓦造りの建物が見えてくる。三日前の夜に学院に着いた空が宿泊したゲストハウスだ。利用者がいるらしく、二階の角から湯気が立っている。おそらくシャワーを使っているのだろう。空が割り当てられた部屋は一階だったが、浴室はちゃんと二階にも備え付けられているようだ。

 誰がいるのかな。

 空はゲストハウスへと続く小道に足を向けた。もしかして空と同じ転入生だったりしたら、是非ともお話してみたい。

「……逢田さん?」

 だがその途中で後ろから呼び止められた。振り返った先にいたのは空の新しい友達だ。

「始ちゃ……先坂さん、おはよう」

「おはよう。何してるのこんなところで……っていうかその格好はなんのつもり?」

 先坂も小道を折れてきた。そういう当人は半袖短パンの体育着姿だ。首にオレンジのタオルを巻いている。

 空はワンピースの裾を摘んで持ち上げた。

「おかしいかな。だけどこの服パジャマじゃないよ。ちゃんと着替えてきたんだから」

 空が答えると先坂のテンションが一段上がった。

「そのぐらい見れば分るわよ。早く下ろしなさい。足が丸出しじゃないの、はしたない」

 空は言われるままに裾を離した。

「似合ってない?お兄ちゃんが初めてのボーナスで買ってくれたお洋服なの。自分ではすごく気に入ってるんだけど」

「素敵だし、よく似合ってるわよ……もう、だからそういう問題じゃないの。寮の中以外は私服は禁止よ。知らなかったの?」

 そういえば聞いた気がする。

「忘れてました。ごめんなさい」

「いいけど。まだ人いないから平気だろうし」

「はじ、先坂さん、教えてくれてありがとう。わたし先に寮に戻るね。また後で」

 空は手を振って踵を返した。

「待ちなさい」

「わっ」

 歩き出そうとしたところをいきなり後ろから手首を掴んで引かれ、空は危うく転びかけた。ちょうど半回転して先坂に抱き止められる。

「……ふう。ありがとう始ちゃん、じゃなくて先坂さん」

「私こそ急にごめんなさい。でもどこに行くつもりなのよあなた」

「寮だけど」

「あれが?」

 先坂が示した先にあるのはゲストハウスだ。

「そっか、寮はこっちじゃなかったね。うっかりしちゃった。さすがは先坂さんだね」

「こんなことで褒められても少しも嬉しくないわ。それと……でいいから」

「え?」

 声が小さくて聞き取れなかった。空は先坂の傍近くに顔を寄せた。

「だから始でいいって言ったのっ!!」

「ひゃっ?」

 耳元で叫ばれる。きーんとなった。

「えっと、でも下の名前で呼ばないでって」

「そうだけど、間違えていちいち呼び直されるのはもっと苛々するし、だから仕方なく」

「うん、分った。わたしがもっとちゃんと気を付ければいいんだね。ごめんね、先坂さん」

 これで二回連続間違えずに苗字で呼べた。もう大丈夫、先坂もきっと納得してくれるに違いない。そう思った瞬間、胸ぐらを掴まれた。

「いいから始って呼びなさい。つねるわよ」

 今回は脅し文句がリアルだ。

 空が戸惑っていると、先坂は逆に自分の方が攻撃されたみたいに顔を背け、手を離した。

「始ちゃん?」

 空は要求通りにしてみた。先坂はぎこちなく振り返る。

「な、なにかしら、逢田さん……空さん」

「ただ呼んだだけ」

 先坂はしゃっくりでもするみたいな声を出した。

「よっ、用もないのに気安く呼ばないで。ふ、二人きりの時以外は。それと名前で呼ぶのも、他の子の前では禁止だから」

「どうして?」

「言ったでしょう。女の子らしくない名前だから嫌いなの」

「だけどわたしはいいの?」

「あなたは特別、その、物分りの悪い子みたいだから、許してあげる」

 これからはわたしもきちんと苗字で呼ぶようにするよ、とは空は言わなかった。

「始ちゃん」

 タオルの巻かれた先坂の首筋に顔を寄せる。すんっと鼻を鳴らすと、先坂は羽で肌を撫でられたみたいに震えた。

「な、なに。また呼んだだけ?」

「ううん、始ちゃんって懐かしい匂いがする。あと汗も。頑張り屋さんなんだね」

「わ、私汗臭い?」

 ぺろり。

「うん。ちょっとしょっぱい」

 先坂は要のネジが抜けてしまったみたいにその場にすとんと尻餅をついた。ちょっと尋常じゃないぐらい顔が真っ赤だ。半開きになった唇が足りない酸素を欲しがるように小刻みに震えている。

 急にどうしてしまったのだろう。まさか熱射病とか?

 だったら大変だ!

 とにかくまずは体温を確かめようと先坂の前に屈み込んでおでことおでこをくっつける。

「いやっ!」

 だが突如先坂が暴発した。顎を掌底で思い切り突き上げられて空は大きく仰け反り、そのまま後ろに転倒する。ワンピースの裾が足の付け根までまくれ上がった。

「い、いい、いきなり変なことしないでよ。それと見えてる、早く足閉じて立ちなさい。せっかくのいいお洋服が汚れるわよ!」

 先坂がまくし立てる。

「う……ん」

「ちょっと聞いてるの?」

 聞いてはいた。だが頭がぐるぐるしていて体が思うに任せない。

「空さん?」

 先坂は傍らに膝を付くと空の肩に手を掛けた。

「しっかりしなさいってば、ねえ」

 揺さ振ろうとする先坂を、鈴の音のような声が制止した。

「待ちたまえ!まずは安静に!……ワトソン」

「ああ。先坂さん、ちょっとホームズを頼む」

「は、はい」

 先坂は渡されたタブレットPCを胸に抱えた。代わって白衣を着た青年がしゃがみ込む。空の目蓋を広げ、後頭部を掌で探り、手首の脈を取った。

「君のクラスと名前は?」

 ワトソンは明瞭な発音で空に尋ねた。

「……6年2組、逢田空です」

 どうして今さらそんなことを訊くのだろう、と頭の片隅で思いながら空は答える。

「目が回ったり気持ちが悪かったりすることは?」

 それはある、けれど。

 空はいったん目を閉じた。力が身体中に流れて行くのをイメージして、大きく深呼吸する。うん、大丈夫そうだ。空はしっかりとワトソンの目を見返した。

「さっきはくらっとしましたけど、治ってきました」

「吐き気もしないね?」

「はい」

「ホームズ、聞いての通りだ」

「軽い脳震盪というところだね」

 亜麻色の髪にハンチングを被った少女が頷いた。

「転んで頭を打ったせいというより顎への打撃が効いたんだろう。問題ない」

「一応病院には連れて行くよ」

「それがいい」

「ちょうどカートがある。使わせてもらおう」

 ワトソンはゲストハウスの近くに停められていた小型の乗り物を引いてきた。屋根付きの三輪スクーターで、座席が前と後ろに一つずつある。

「立てるね。乗って」

 ワトソンは空に手を貸して後部座席に座らせた。中は狭かったものの、手足を縮めなければならないほどではない。普通の成人男性でも乗車可能なサイズだ。

「大学の病院に行ってくる。担任の先生には君から伝えておいてくれ。ホームズをありがとう」

 美少女の絵が映し出されているタブレットをワトソンは先坂の手から回収した。

「あの、これってどういうことですか?逢田さんをどうする気ですか?」

 先坂は急に慌て出した。ここに至ってようやく頭が回り始めたという感じだ。

「大学の附属病院で診察してもらう。別に心配はいらない。異常がないことをちゃんと確認するだけだ」

 ワトソンは丁寧に説明した。

「私も付き添います」

 先坂が決然と言うと、ワトソンの目が左右に泳ぐ。

「いやだけどこれ二人乗りだし……」

「自分の足で走ります。どうせランニングの途中ですから」

「うーん、まあ」

 別にいいか、と呟く。

「その前にちょっといいかな?先坂くんに幾つか質問したいことがあるんだが」

「なんだい、ホームズ」

 ワトソンはタブレットを差し上げると先坂の方を向かせた。

「先坂くん、きみがランニングをしていたのは空くんが散歩に出るのを見掛けて唐突に運動意欲に目覚めた、ということかな」

「違います。毎日やってます」

 先坂はむっとしたように答えた。

「コースも決まっている?つまり、ゲストハウスの脇の道を走るのは毎朝のことで、空くんのお尻を追って今朝だけ例外的にここまで来たわけではない」

「コースも同じです。変な言い掛かりはやめてください」

「あともう一つだけ。いつもその格好で?」

 先坂はわずかに怯んだ様子を見せた。だがすぐに気を取り直したように正当性を主張する。

「これだって学校の指定服なんだから問題ないはずです。それとも制服で走れって言うんですか?」

「誤解しないでくれたまえ。きみを責めてるわけじゃない」

 敵意のないことを示すように、画面の中でホームが小さな両手を広げた。

「そもそもぼくに生徒の規律を云々する資格はないからね。ただ毎日着ているにしてはショートパンツがまだ真新しいのが少し気になっただけだ。サイズも大きめのようだし、今後の成長を見越して購入したばかりといったところかな」

 先坂は素早く上衣のシャツの裾を引っ張り下ろして短パンを隠した。伸びちゃわないかな、と空はつまらない心配をした。

「そんなのあなたに何の関係があるんですか。じろじろ見たりして気持ち悪い。やっぱり変質者なんだわ。病院に行くなんていうのも嘘で、本当は空さんを自分の小屋に連れ込むつもりなんでしょう。空さん早く降りて!こんな人の言うこと聞いたら駄目!」

 先坂は後部座席に身を入れると力ずくで空を引きずり下ろしにかかった。

「待ってくれ、今のはホームズが言ったことで僕は何も」

「抉られたいんですか?そんな頭の悪い言い訳が通るわけないでしょう」

「仕方ないな。ワトソン、ここはいったん引き上げて空くんには後でまた改めて」

「始ちゃん待って、お願いだから服引っ張らないで」

 混沌とし始めた場を、ただの一言が制圧する。

「何を騒いでいる」

 壮年の男性だった。沈黙した面々を順繰りに見やってから、ゆっくりと近付いて来る。紺色のチノパンに白のポロシャツというカジュアルな装いにもかかわらず、直ぐに伸びた背筋と鋭い眼光とが、正装した侍さながらの威厳を醸し出していた。

 男性の半白の髪が湿っていることに空は気付いた。ゲストハウスの浴室を使っていたのはどうやらこの人物だったらしい。

 転入生じゃなかったのか。少し残念だった。

「尊悟、なぜ俺のカートを勝手に使っている」

 男性はワトソンを尊悟と呼んだ。

「カートに子供を乗せているのはどういう理由だ。それも私服とは。まさか貴様」

 炎のように苛烈な気配が吹き上がる。

「我が校の児童を誑かし、学院の外に連れ出そうという魂胆ではあるまいな」

 もしその通りならば素っ首刎ね跳ばしてくれる。そう続いたとしても誰も違和感を持たなかったに違いない。

「ご、誤解です、お祖父さま!」

 ワトソンは蒼白になっていた。

「僕はこの子を病院に連れて行こうとしていただけです!頭を打ったようなので、念の為にと」

「なんだと?」

 鬼でも怯みそうな視線で睨む。ワトソンの祖父だとしたら普通に考えてとっくに六十歳は超えているはずだが、孫の軽く千倍ぐらいの覇気を有しているらしい。

「だったらぐずぐずするな、不肖者めが」

 成人男性として決して小さい方ではないワトソンの体を、カートの運転席からゴム鞠みたいに放り出した。

「俺が行く。その方が話が早い。それでどういう状況だったのだ?言われる前に説明せんか、馬鹿者」

「顎を突き上げられて後ろに引っ繰り返ったんだよ。けれど頭の方は大したことはない。うまく受け身を取ったようだね」

 地面に転がり役立たず状態のワトソンに代わり、その胸に抱かれたホームズが答える。男性はホームズへは苦々しげな一瞥をくれただけだ。

「今の話の通りか?」

「あの、でも私、そんなつもりじゃなくて」

 訊かれた先坂は脅えたように後退りした。

「本当に逢田さんに怪我をさせるつもりなんてなかったんです、信じてください、理事長先生!」

「つまり事実なのだな?」

「……はい」

 消え入りそうな声で先坂は認めた。今にも泣き出しそうなほど萎縮しきっている。

 この人、理事長先生だったんだ。金槌で叩いても跳ね返しそうながっしりした肩を後部座席から眺めながら空は思った。ということはワトソンは理事長の孫ということになる。

「君の担任は刈谷先生だったな」

 理事長は先坂のことを知っていた。見えない石に押さえつけられたみたいに先坂は下を向いた。

「追って沙汰はする。尊悟、後の始末はつけておけ」

 まるで切腹でも申し付けているような口調で告げた。


     #


 空が教室に入ったのはその日もやっと午後になってからのことだった。

 ワトソンの祖父、というより学院理事長の威光には絶大なものがあるらしく、まだ通常の受付時間前だったにもかかわらず空は全く待たされることなく診察室に通された。

 結果問題なしだったのだが、念のためということで午前中をベッドで過ごし、さらに念には念で再度診察を受けて、ようやく無罪放免となったのだ。

「空、心配したよ、もう平気なの!?」

 もう昼休みが終わる直前でほとんどの子が席に着いている中で、空の姿を見るや洋子は即座に椅子を蹴って駆け寄った。

 いつも付けている赤いゴムの髪留めがない。そのせいか少し大人っぽい感じがする。

「ちょっと転んだだけだから大丈夫。なんともないよ」

 洋子は真偽を見抜こうとするようにじっと空の顔を見つめ、やがて納得がいったらしく安堵の息をついた。

「よかったー。だけどもう勝手に一人で出歩いたりしたら駄目だからね。いつもあたしの傍にいること」

 洋子がびしっと決め顔を作る。

「さすがにそこまでいくとうざいわね」

 一瞬で引き攣った。マネキンのようにぎこちない動きで洋子は教卓の方に首を向け、それからのろりと時間を掛けて空の方に戻ってきた。

「そんなことないよね、ね、空?」

「もちろ……」

「逢田さんはいいかもしれないけど、周りの人間にとっては迷惑なの。少しは状況を弁えてほしいわ。世界はあなた達二人の周りを回ってるわけじゃないんだからね」

「はい……すいませんでした、先生」

 洋子は悄々と自分の席に戻った。

「逢田さんも座って」

「はい」

 空はランドセルを机の上に置くと、中から教科書やら筆記用具やらを取り出して一通りの準備を済ませた。

「先生」

 おもむろに面を向ける。

「質問は授業が始まってから受け付けます」

 刈谷の先受けを空は無視した。

「洋子ちゃんはわたしのことを気遣ってくれました。それはとても嬉しいことで、他人の心ない言葉で貶めらたりはしません。誰かを大切に思ったり思ってもらったりすることは、嫌ったりうるさがったりすることよりもずっと素敵なことだと思います」

 教室内に沈黙が落ちかかる。大半がどう反応すればいいのか分らないといった空気の中で、刈谷は何事もなかったかのように言った。

「委員長、号令。授業を始めます」

「は、はいっ、きょーつけぇっ!!」

 洋子の掛け声は今までで一番大きくて、そして少しだけ湿っぽかった。



「空、帰ろっ」

 誰が聞いても一発で分るぐらい洋子の声は弾んでいた。まるで明日から夏休みで、そのうえ楽しい予定がいっぱいに詰まっているというみたいだった。

「ごめん洋子ちゃん、ちょっとだけ待って」

 空はまだ仕度が済んでいない。だが空だけが特別にのろいというのではなく、まだ半分以上の子はランドセルに荷物を詰めている最中だ。

「早く早く」

 洋子が空の肩を揺さぶる。もはや急かしているのだか邪魔をしているのだか分らない。洋子のせいで手が滑り、筆入れが床に落ちる。座ったままでは届かない位置まで滑って行った。

「いいよ、あたしが拾う」

 洋子が空から離れて取りに向かう。だが一足遅かった。

「逢田さん、これ」

 空の筆入れを拾った先坂が近付く。洋子のことは完全無視で、しかし空だけを見ているというにしては伏し目がちだ。

「それとちょっと話がしたいんだけど……その、朝のこととか」

「朝のことって何よ」

 洋子がすかさず反応する。

 しかし先坂は空しか相手にしないと決めているようだ。

「都合悪い?」

 乞うようにして尋ねる。空に断る理由はない。

「大丈夫だよ。教室でいいの?」

 先坂は首を振った。

「できれば二人きりになれる所がいい」

「そんなの駄目」

 洋子が却下する。

「どういう魂胆か知らないけど、空には指一本触れさせないんだから。ひょっとして今朝空が怪我したっていうのもあんたのせいなんじゃないの?」

 本当に疑がっているというより単なる言い掛かりに近かった。しかし先坂は痛い所を突かれたように黙り込む。洋子はますますいきりたった。

「ちょっと、本当にそうだったの?もう絶対放っておけないわ。何があったのか洗い浚い白状してもらうからね」

「あなたには関係ないことよ」

 先坂は一蹴しようとしたが、それで引く洋子ではない。

「関係ありありよ。だって空はあたしが守るって決めてるんだから。空もそれを望んでる。あんただって空が刈谷先生に言ったこと聞いたでしょ」

「自惚れるのも大概にしたら」

 先坂はついに限度を超えたらしかった。洋子に正面から言い返す。空は既に置き去り状態だ。

「そもそもあなたがしっかりしていないせいで逢田さんがとばっちりを受けたんじゃない。それで自分の非を反省するどころか庇ってもらっていい気になってるなんて、見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ」

 洋子の目が吊り上がった。

「誰がいい気になってるって?」

「私の目の前にいるあなた、姫木洋子さんよ」

 放っておけば掴み合いに発展しそうな勢いだった。まず真っ先に介入すべき刈谷教諭はいの一番に教室から姿を消しており、他の生徒は関わり合いになりたくないとばかりにこそこそと退散するか、対峙する実力者二人を前に為す術なくおろおろするかのどちらかだった。

 例外はまるで二人が仲睦まじくお喋りしてでもいるかのようにのほほんと見守る空と。

「落ち着きなさいよあなた達。話がずれてるわ」

 大さじと小さじを間違えてる、と指摘するような調子で遊佐は言った。

 洋子と先坂は完全にシンクロした動きで遊佐の方に顔を向けた。息が合ってるなあ、と空は密かに感心した。

「ねえ先坂、逢田さんとは絶対に二人きりじゃないと駄目な用事なの?例えば愛の告白をするとか」

「ばっ、馬鹿なこと言わないで。捩じるわよ!?」

 先坂は顔を真赤にして否定した。

「それで洋子の方は、自分以外の人が逢田さんと親密な時間を過ごすなんて絶対に許せないと」

「あたしが言ってるはそういうことじゃなくて!」

「じゃあ先坂の人格が信用できないっていうことね。逢田さんを傷つけるような行動を取るに決まってるって思ってるんだ」

「そこまでは言わないけど」

「逢田さんはどうなの?」

「わたし?」

 空は何を訊かれたのか分らなかった。

「先坂と二人きりになるのは嫌?」

「全然嫌じゃないよ」

「じゃあ先坂と二人きりになるのと、その場に洋子がいるのとではどっちがいい?」

 遊佐は何気ない振りで決定的な質問を放った。洋子と先坂の目の色が変わる。

「そんなの分んない」

 空はあっさりと答えた。洋子と先坂が揃って肩を落とす。

「洋子ちゃんがいてくれるのは嬉しいけど、その方がいいかどうかは決められないよ。結果としてよかったかどうかなら後で言えるかもしれないけど」

「道理ね」

 遊佐は頷くと、互いにそっぽを向いている二人に言った。

「ひとまず休戦ってことでいいわね」

 四人揃って校舎を出る。和気藹々という雰囲気には遠かったが、一触即発というほど険悪でもない。

 遊佐は二人を取り成すまではしても、取り持つ気まではないらしかった。洋子と先坂には構わず、空と他愛のない会話を交わす。後の二人はずっと微妙な距離を開けていて、このままうやむやのうちに解散かと思われたが、意外な人物が寮の玄関先で少女達を待っていた。

「やあお帰り。しっかりと勉強してきたかな」

 ハンチングを被った少女は、咥えていたパイプを手に持つと皆を迎え入れるように腕を広げた。

「三人一緒とは好都合だ。おまけに協力してくれそうな善意の第三者までいる。駆り出しにはうってつけだね」

「あ……」

 真っ先に反応したのは洋子だった。

「あ、とは?」

 ホームズが尋ねる。

「あんたこんなところで何してるのよ?本気で通報するよ?」

「そうしたいのならば、すればいいさ」

 実際に警察を呼んでしまいそうな剣幕の洋子に、ホームズは落ち着き払って応じる。

「けれどなんと言って説明するつもりだい。ワトソンがここにいることには何ら違法性はない。彼は学院の住み込みの職員で、敷地内はもちろんのこと、必要があれば校舎や寮の中でだって作業をする。校舎内に入るのは放課後や休日が多いし、逆に寮については授業中が多いから、きみたちが見掛ける機会はそう頻繁ではないかもしれないけれど、それでも珍しいというほどではないだろう」

 洋子は悔しげに口元を引き結んだ。不本意ながらホームズの主張の正しさを認めたらしい。

「じゃあ一緒にお部屋で遊んだりもできるのかな」

「できるわけないでしょっ!」

 腹いせのように空の質問を否定する。先坂も当然だというように頷いた。遊佐だけは何事か考えているような風情だ。

 ホームズがワトソンに確認した。

「できないかな、ワトソン?」

「仕事だからね」

 タブレットPCを白衣の前で抱えた青年が答えた。例によって芝居掛かった口調だが、目はいつも以上に落ち着きがない。どうも緊張している様子だ。

「いくら部屋に出入りできるからといっても児童と一緒に遊んだりはできないさ。たとえ仕事が休みの日でもね」

「厳しいんですね」

「甘過ぎると思うわ。中に入れるのは仕方ないとしても、その間監視は付けるべき」

「あの、ちょっといいですか」

 遊佐が口を挟んだ。

「和藤さんは私達の部屋に入れるんですか?」

「当然だろう」

 画面の中の少女が答える。

「誰がきみたちの部屋の電灯を交換したりエアコンのフィルターを掃除したりしてると思ってるんだい。ワトソンはマスターキーだって持っている」

 その意味が全員の頭に沁み込むのを待つように間を置いてから、ホームズは続けた。

「つまりきみたちが学校に行っている間、ワトソンは部屋に入り放題だしパンツだって盗み放題だということだ。仮に戸締りがきちんとされていたとしてもね」

「……やっぱりそういうことだったのね」

 洋子の声が震えを帯びた。だがそれは恐怖や悲しみが原因ではなさそうだった。

「パンツを盗んだのも、寝込みを襲ったのも、短パンを盗んだのも、全部あんたの仕業だったんだ。もし自白して許して貰おうなんて甘い考えでいるんなら舐め過ぎだから。きっちり責任は取らせるわよ。理事長の孫だかなんだか知らないけど、揉み消したりなんて絶対させないからね」

 洋子はワトソンを睨め上げながらずいと迫った。その分ワトソンは後ろに下がり、だが洋子はそれ以上に距離を詰める。

「やれやれ。きみは今の話を聞いていたのかな」

 ホームズが呆れたように言ったが、洋子は怯まなかった。

「今さらとぼけたって無駄よ。小屋に女の子のパンツ隠し持ってる変態のくせに。あれもワトソンが寮で盗んだものだったってことね」

 ワトソンの「コレクション」の存在は知らなかったのだろう。遊佐は目を見開き、先坂は眉をひそめた。なおもホームズは動じない。

「違うよ。あれはワトソンがぼくのためにとネット通販で購入したものだ。ちゃんとサイトの履歴も残っている。疑うのなら確かめてみるといい」

 タブレットの画面が切り替わる。 “ご購入された商品の一覧”の表記の下にパンツの写真が並んでいた。ミントグリーンとライトグレーの縞パンには空も見覚えがある。初めて会った時にワトソンが空にくれようとしたものだ。

「遠慮しとく。なんか気色悪い」

「そうかい」

 洋子がげんなりした様子で拒絶すると、ホームズはすぐに元の愛らしい少女の姿を取り戻した。空はなんとなくほっとした。

「じゃあ他のパンツのことはとりあえずいいわ。でも空のは話が別だから」

「その通りだね」

「つまりあんたが犯人って認めるのね?」

「もちろん違う」

 洋子は拳を固めた。画面の少女を殴りつけたいという衝動に駆られたらしい。しかし握ったり開いたりを幾度か繰り返した後に手を下ろす。

「まさか、犯人はワトソンだけど自分はホームズだから違う、なんて落ちじゃないでしょうね」

 もしそうならそのおもちゃを便器に突っ込んで水を流してやるから、と乙女にふさわしからぬ脅し文句を洋子は口の中で呟いた。

「ぼくに独立した人格が認められるか否かというのは大変興味深い命題だが、それについて論じるのはまた別の機会にしておこう。逆にぼくから姫木くんに問わせてもらう。どうしてワトソン博士は空くんのパンツや体操着を盗まなければならなかったんだい?」

「そ、そんなことあたしが知るわけないじゃない」

 洋子は顔を赤らめた。

「でもどうせ変態っぽいやらしいことに使うに決まってるわ。頭に被ったり、匂いを嗅いでおかずにしたり」

 ホームズを始めその場の全員が洋子の発言をスルーした。

「訊き方が悪かったね、言い直そう。ワトソンは昼間の寮で好きなだけ下着漁りをできる立場にありながら、これまでそうした行為に及んだことはなかった。それがここ何日かに限って急に、誰がいるのかも定かでないゲストハウスに忍び入ったり、生徒や教師が多くいる昼間の校舎内で盗みを働いたりすることに果たしてどんな必然性があったのか。ぼくを納得させるだけの有効な仮説を姫木くんは提示できるのかな?」

「そ、そんなこといきなり言われたって」

 洋子は助けを求めるように左右に首を振り向けた。先坂は歯痛に悩むような表情で黙りこくる。遊佐は落ちかかった髪を払って、自分の考えを述べた。

「最近になって急にっていうことなら考えられる原因は一つだと思います」

「それは?」

 ホームズが先を促す。

「逢田さんです。和藤さんは新しく学院に転入した逢田さんを見初めてしまい、よからぬ思いを抱いた。ゲストハウスに泊まったことも知ってたんじゃないでしょうか。だから忍び込んだんです」

「一つめの事件ならそれでも説明できるだろう。空くんの愛らしさにやられたすえに、ついふらふらと魔が差したというわけだ。しかし体育着の件についてはどうだろう」

「たまたま私達の教室を通りかかったら誰もいなかったのでチャンスだと思った。昨日は理科は実験だったし。……ちょっと弱いですね。ホームズちゃんの言う通り、チャンスなら寮の方がずっと多いんだから」

「大変結構。遊佐くんは物事を客観的に分析する能力を備えているようだ」

 ホームズは拍手をしてみせる。ただし音が鳴らないのでいまいち味気ない。

「そして昨晩の入浴時の出来事に関してはワトソンは当然無関係だ。他ならぬ姫木くんが証人だね」

 名指された洋子は首の筋を違えそうな勢いで空のことを振り返った。

「空、こいつにあのこと喋ったの!?ひどいよ、絶対誰にも言わないって、二人だけの秘密にするって約束してくれたのに!」

 空は全くそんな約束をした覚えはなかったが、洋子が辛く感じているのならば宥めてあげないと。

「えっと、博士とかホームズちゃんには言ってなくて、朝病院に行く途中で理事長先生に何があったのかとか訊かれて、だから特にゆうべのことだけってわけじゃなくて、他にも色々」

 病院のベッドで休んでいる間、そもそも学院に来ることになったいきさつから始まって、こちらに着いてからあったことや感じたことなどをあれこれと話した。

 理事長は空が編入したことは知っていて、旧知の教え子の姪ということで並以上の関心も持っていたのだが、多忙の折でついなおざりになっていた。この際丁度いい機会ということで詳しく話を聞くことにしたらしい。

 かなり沢山喋ったので具体的に何をどこまでだったかちょっと判然としないぐらいだ。気付いたら寝ていたし。当然のことながら目を覚ました時には理事長の姿はなかった。

「理事長先生が知ってる……あたし達のこと」

 洋子はひどく狼狽えた。

「そんな、どうしよう、刈谷先生にも変なふうに言われてるのに、このうえ理事長先生にまで誤解されたら……不健全だって処分されて、学院にいられなくなっちゃう。空と引き離されちゃうよ!」

 空には理解が難しかったが、洋子は本気で動揺しているようだった。というかほとんど度を失っている。

「なに、心配することはない。そのためにぼく達がここにいるんだ」

 ホームズが力強く宣言する。

「どういうことですか?」

 遊佐が尋ねる。

「ぼく達は理事長の依頼を受けて来た。きみ達が直面している問題を解決し、平穏な日常に帰れるようにするためにね。空くん、姫木くん、先坂くんの三人はもちろん協力してくれるだろう。事実を偽らず正直に打ち明けてくれるなら、きっといい結果になると保証しよう。ぼくの言葉だけでは信用できないというなら、ワトソン」

 ワトソンは無言で頷くと、タブレットを片手持ちしてポケットから三つ折にされた便箋を取り出した。

「どうぞ」

「あ、はい」

 遊佐は便箋を受け取り、さっと目を走らせた。「へえ」と小さく嘆声を発し、先坂へ回す。先坂は何度か繰り返して文面を追ってから、未だ落ち着かない様子の洋子に渡した。洋子は便箋とワトソンを見比べて「本当に?」と呟いた。

「空」

「ありがとう」

 ようやく空の番が回ってくる。万年筆っぽい手書きの文字は少し崩してあったが十分に読み易い。


“学院初等科内にて近来発生している不祥事に関し、調査及び事後処置の全権を当学院常勤職員和藤尊悟に委ねる。逢田空、先坂始、姫木洋子、以上三名は謹んでその指示に従うべきこと。

 私立凛英女子学院理事長 和藤尊武“


 署名の脇には大きな四角い印鑑が捺されて、今日の日付が記載されている。

 筆跡も印影も空の初めて見るものだったが、本物であることは一瞬たりとも疑わなかった。風格と威厳が滲み出ているかのようだ。

「それでわたし達はどうすればいいですか?」

 不祥事というのはいまいちぴんと来なかったが、たぶん自分が一番の当事者であるはずだ。ワトソンに便箋を返しながら空は尋ねた。

 ホームズは顎に手をやった。

「そうだね、まずは場所を変えようか。ここでは目立ちすぎるし、犯人の駆り出しにも向いていない」

「博士のお家?」

「嫌よあんなとこ」

 ワトソンやホームズが答えるより先に洋子が拒否する。

「でも和藤さんには理事長先生の全権委任があるわけだし」

 遊佐が指摘するが、洋子は譲らない。

「だからってあそこじゃ何かあった時に助けも呼べないじゃない。もし閉じ込められたらどうするの?そのうち誰か気付いてくれるとしても、一時間かそこらあれば取り返しのつかないことになるには長過ぎるわ」

「では先坂くんの部屋はどうかな。余計な手間も省ける」

「私の部屋、ですか」

 先坂は明らかに嬉しくなさそうだった。

 物言いたげに空を見やる。だが空にはその意味するところは分らない。結局、先坂が挙げたのは空とは関係のない事情だった。

「だけど同じ部屋の子になんて説明すればいいのか」

 確かに空達同級生だけならばまだしも、ワトソンやホームズまで訪れたら何事かと思うだろう。

「あの、和藤さんっている必要あるんですか?」

 遊佐が聞きようによっては心を抉るようなことを尋ねた。

「その機械だけ持っていって、後はカメラとマイクを繋いで外から遣り取りするみたいなことができれば用は足りると思いますけど」

 洋子が即座に賛成する。

「それいい。いくらワトソンだってそれなら変な真似できないだろうし。さすが綾香」

「合理的な提案に思えるね」

 ホームズも感心したふうだった。

「だが残念ながら不可能だ」

「どうしてよ」

「語り手のいないところに物語は成立しないものだから」

「意味分んない。でもどうせ適当に難しいっぽいこと言ってごまかしてるだけで、ただみんなと一緒に部屋に入りたいだけなんでしょ、この変態」

「そうじゃないさ。といってももちろんワトソンの変態性を否定したわけじゃないがね。彼はまごうことなき変態だよ。前にも言った通り」

「おいホームズ」

「致命的なのは、彼の感知できる範囲にいないとぼくは上手く形を保てないということだ。従って正しく機能することもできない。さらに手続上の問題もある。理事長が委任状を与えたのはワトソンであってぼくではない。責任者が不在では処置の公正さに疑問を残す」

 理屈はともかく、ワトソンの立会が必須らしいということは空にも分った。

「えっと、わたしのお部屋じゃ駄目ですか。洋子ちゃんも一緒だし、隣の美緒ちゃんと奈美ちゃんにはこっちに来ないように言っておけばちゃんと聞いてくれると思うし。ね、いいよね洋子ちゃん?」

「……他にないんだったら、しょうがないけど」

 洋子はワトソンの白衣のポケットから覗いている便箋に目を向けた。理事長の命がある以上どこかでは従わなければならない。いかにも気乗り薄な洋子に、遊佐が助け舟を出す。

「もしよければ私も一緒に行くけど」

「ほんと?」

 洋子は遊佐の手を取らんばかりに喜んだ。

「綾香がいてくれたら心強いわ。空は訊くまでもないとして、先坂さんもいいよね」

 先坂は少し考えた後に同意する。

「そうね。遊佐さんなら他の人に余計なこと喋ったりもしないだろうし。反対はしないわ」

「和藤さんもいいですか?」

「もちろん。願ってもない。そうだろうワトソン」

「助かる」

 返答は短かったが、それがかえって真情を表しているようだった。

 ホームズは右足を引いて、胸に左手を当てた姿勢で一礼した。

「遊佐綾香嬢の厚意に感謝を。後で少し変わった体験をすることになると思うが、きみは落ち着いてじっとしていてくれればいい。それで級友三人の悩みの種を払うことができる」

「私にそんな癒し効果みたいなことを期待されても……」

 遊佐は珍しく困惑したふうに言うと、長い髪を後ろに払った。


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