20%の疑惑
ミステリパートに入ります。この章はバリバリの推理モノになります。
僕は自分の思考力について自負する所がない。他人は時々僕の勉学に関する成績を見て「やるじゃん!」と言った程度の反応を示す。だけど、僕に言わせれば勉強ができたところでそれは思考力があることとは直結しない。言われたことを奴隷のように遂行できる心が、勉強の成績に繋がる。問題を注意深く観察するチキンさがミスの軽減に貢献する。時間を惜しまない傾倒っぷりが暗記に繋がる。その結果頭が良い奴と言うレッテルを貰うことは容易い。だけど、本当に頭が良いってそういうことだろうか。思考力はロジカルシンキングだけで成り立つわけじゃないんだ。柔軟でラテラルな思考こそが社会に必要とされてるんじゃないか。だって、言われたことができる人は良い部下だけどいい上司にはなれない。逆に誰にも言われないことに気づき、前人未到の地を開拓できる柔軟さこそが昇進への鍵になることが多いように思う。
僕は声を大にして言いたい。勉強の成績が良いことは、頭が良いってことじゃないんだよ。
「でもそれ、君が言っても自慢にしかきこえないよね」
夕食時。ユキはテーブルの向かいに浮きながら頬杖をついていた。あたかもテーブルに肘が乗っているようなポーズだが、彼女の体は物体をすり抜けるはずなのでただの演出だ。
見かけ上は僕とユキが向かい合って座っているように見せる為の。
彼女が僕と共同な生活を始めてから3日が立った。人間は環境に適応する動物だと思っていたけど、その適応力はやっぱり伊達じゃない。僕はもうすっかりユキに纏わりつかれた生活に慣れてしまっていた。
パスタをくるくるフォークに巻き付けて口に運ぶ。
「どうして?」
パスタは簡単にできていい。一人暮らしの救世主だ。
「どうしてって……スポーツができる人が、運動できる=運動神経が良いってわけじゃない! とか言い出したらどう?」
パスタを租借する。うん、おいしい。
「どうって、それは屁理屈だね。大部分の人から見たら同じことだよ」
「それと同じ。跳び箱ができたってサッカーができたって社会で使うのは例えば車を運転する時の動体視力とか、残業に耐えうる耐久力とか。瞬発力があることはあまり関係ない。それに、スポーツだってどれも同じ筋肉を使うわけじゃないし」
「うわあ、屁理屈うざったいな」
「君が言ったことでしょ!」
ユキが唾を飛ばしてくる。いや、実際には飛んでこないけど、もし生きてたら確実に飛んできていた。
「そう本気にとらないで」
ミートソースが飛ばないように慎重に運びながらもう一口。
「ちょっと思っただけだから」
「ふーん……」
どうも信じてないみたいだ。ちょっと茶化してみる。
「いやあ、体育と言えばブルマだね。失われてしまって残念だよ」
「何その露骨な話題転換。しかも、私としては翔の思考の方が残念よ」
「そうかな。ユキがはいたら似合うよ」
ささっと距離を取られる。
「やっぱり酷いわね、色々と……でも、確かちょっと前に禁止になったのよね」
「……」
「なにその反応。あんたが振った話題に嫌々乗ってあげたのに」
それはどーも。でも別に僕はドン引いて沈黙したわけじゃない。ま、いいか。
明日は体育がある。男子は体育館で女子は外。晴れた日は僕らも外で活動したいのに。降水確率20%。まあ、晴れを信じていい数字じゃないかな。
だんだん伏線が露骨になってきました




