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だいぶ時間が空いてしまいました…
6話目になります。
なにもない仄暗い空間の中に光が差し込み夢主が目覚めるのを鈴風は少し離れた場所からそっと見ていた。
夢主とはその名が示す通りにその夢の持ち主を表す。簡単に表現すれば夢を見ている人を指す言葉だ。
夢主の姿が光に包まれて消えていく…光が完全に輝きをを失うころには夢主の姿は完全に消えていた。
静寂が暗いこの空間をさらに不気味に感じさせる。聞こえるのは鈴風の呼吸のかすかな音くらいだ。
鈴風はそっと目を閉じ気配を探る。
今この空間には、鈴風以外に人の気配はない。
鈴風は閉じていた目を開き、ジッと前を睨んだ。目線の先にはやはり何もない暗闇があるだけに見える。しかし、鈴風は睨んだまま、その柔和な顔と雰囲気に似合わない低い声を出す。
「そこにいるのはわかってる、出てきなよ」
鈴風の息遣いしか聞こえなくなったはずの空間にくっくっくと誰かの笑い声が響いた。
「クック…ナンダキガツイテタノカ…」
意外と優秀なんだと笑う相手に眉を顰める。
「デモ、アンタハアル意味デ間ニ合ワナカッタ」
その言葉にぐっと拳を握る。脳裏に浮かぶのは夢主の手に付けられた獲物のしるし…
それは夢主の悪夢が続く兆し…
そして、鈴風が不利になったことを意味していた。
落ちつけ相手のペースに乗るな…
「出てこいって言ってる…ああ、そうか」
くすりと見る者を魅了させるように手を口元へ運び優雅に笑ってみせる。
まずは相手のペースを崩す。
「姿を見せることが怖いんだ?あなたは小心者?」
わざと相手を怒らせるような口調で言う。
怒らせればその分冷静な判断はできないし、挑発された相手の対応で簡単にだが相手の性格や知能がわかる。
しかしこれはここには自分しかいないからこその判断だ。
相手を怒らせ攻撃を受けたってここにいるのは鈴風のみ…
誰も傷つかせない、傷つくところなんか見たくない。
たとえ、偽善者と言われようとそこは譲れないし偽善者で結構と鈴風は思っている。
さぁ、挑発に乗ってこい。
しかし、相手は笑うばかりで鈴風の安い挑発に乗ってくる様子はない。
「悪イケド、ソンナ安イ挑発ニ乗ルホド、バカジャナイ」
くっくっくと鈴風をあざ笑う音がただ響く。
やはり乗ってはこないか…
別に肩を落とすことではないが、明らかにがっかりしてみせる。
「残念。乗ってくれないのか」
「獲物がイナイノニ乗るワケガナイ…ソレニアンタにコノバ有利スギル。ナぁソウダロ夢守りの人間?」
見えない相手の言葉に鈴風は少し驚いたように一瞬目を大きくさせる。
どうやら相手はしっかりと鈴風について知識があったらしい。
ならば無駄に会話したところで今はメリットが少ない。
そう判断し、鈴風は目をすっと細めた。
「へぇ…夢守りなんて言葉はもう知るものは少ないのによく知ってたね…ところであなたの目的は何?誰かに頼まれた?単なる暇つぶし?それとも…」
私怨かな?
わずかに相手の気配がかわった。
「アイツハ…私の兄弟タチノ敵ダ」
ダカラ、私ハアイツヲ許サナイ…ナニモ知ラズニイキテルコトガ許セナイ復讐セネバ気が済スマナイ
そう吐き捨てるように告げられるとチリーンとどこからか鈴の音が響いた。
この鈴の音は鈴風に夢から戻ってこいと勇瑠璃が告げているのだ。これ以上は鈴風がここにいることは危険であるか現実の世界で起きなければいけない状態になったのだろう。
本当はもっと情報を引き出しておきたいところだが勇瑠璃の鈴は絶対だ。もとより今の段階で決着がつくとは考えていないが時間切れでは仕方がない。
唇を悔しそうに噛むと鈴風は相手に告げる。
「復讐ほどむなしいものはないよ?でもあなたはやめる気はないんだね?」
返事はない。無言は肯定と受け取って構わないだろう。
鈴風は悲しそうに眉を寄せる。
「それじゃ僕は全力であなたをあの子の夢から排除させてもらうから覚悟してね」
返事は期待していない。
さらに言葉を発するより先に一陣の風が鈴風の体を通り抜けた。
おそらくこの空間から出て行ったのだろう。
相手の気配が消えたことを確認すると鈴風はゆっくりと歩きだした。
彼もまたこの夢から覚めるために…
読んでいただきありがとうございました。




