天使なんて
もし、天使みたいな人が本当に身近にいたら。
天使なんて、信じていない。
悪魔なんて、きっといない。
もし、悪魔がいるとすれば。
ああ、こう解釈すればありえるだろう。
鏡を見たときと、あと家の外に出てみればいくらでもあえるモノだ、と。
そう考えれば、家の中にも、外にもいる。自分の中にも、外にもいる。
もし、地獄があるとすれば。
テレビを見たときにいくらでも目に付くし。それに、友達に無視されるようになった、あの同級生にとってはここが地獄なんだろう、とそう思う。
なるほど、この世に地獄も悪魔もいれば、神様もいるのかもしれない。
それでも、ぼくは天使なんて、信じていない。
つい、このあいだ。ぼくはある女の子に出会った。
もし、天使を信じている人がいるとすれば、きっと彼女をこう表現する。
「ああ、『天使』のような人だ」と。
この国で、「天使がいる」なんて変だし、とても奇妙なことだけど。
きっと、そう表現するに違いないのだ。
あの娘はとても優しく振舞う。
誰が困っていても、初めて会った人でも、必要なら声をかけるだろう。
誰が助けを求めても、無視されている同級生でも、必要なら手を差し伸べるだろう。
それとなく、周りの人間に気を遣い。
みんなで遊びに行ったとき、退屈そうな人がいれば声をかけ。
元気がない人がいれば、見守り。
それでも、楽しそうに周囲に溶け込んでいる。
演技ではない。無理をしているのでもない。
いつだって、周りを気にしているのに、それが自然体なのだ。
気を遣っているのに、気持ちをすり減らすことがない。
それに、あの娘を気に入らない、と言う人はいても、嫌いだという人はいない。
嫌いになりたくても、嫌いになれないのだろう。
不幸なことに、無理やりでも嫌いになれないのだろう。
なかには、完璧な人間だと、まるであの娘が超人のように言う人もいる。
でも、ぼくはこう思うのだ。
彼女は誰にでも優しい。
誰にでも、平等に接する。
……だから、みんな彼女にとっては同じ程度の存在なんだろう。と。
彼女にとって、きっとぼくらは特別でないのだろう。対等ですら、ないんだろう。
憎むほどのものでもなく、嫌うほどのものでもない。だから、とりあえずは優しく出来る。
かといって好きでもないから、同じ人とずっと一緒にいることもない、その程度の存在。
ぼくは天使なんて信じていない。
けど、いないとは思っていない。
信じるに値しないだろう。他の人間の苦しみを理解出来ないヤツなんて。
嫌いな人がいないのは、相手を人間とすら思わないからだろって言う主人公?
好きな人がいるってのは、ひいきするってことだとは思う。そんな相対的な話。
……わりとかなり、駄作。