風流な男
本人は幸せそうな話です。
ぼくは食われるんだろうか。
少なくとも、本人たちはその気のようだ。
道に迷って、偶然に招かれた家。
そこには美しい少女と、その父親が居た。
二人とも、ぼくの好みだったし、なによりも。
―――趣味のいい家だった。
だから、ついつい、ぼくはためらいもなく、その誘いを受け入れたわけで。
喜んで、受けてしまったわけで。
中に入り、ぜひ、と用意されたお菓子に手をつけていると、声が聞こえてきた。
「ねぇ、本当になの?お父さん。本当にいいの?」
「ああ、そうだよ」
なにをそんなにはしゃいでいるんだろう、とそう思っていたら。
次の一言で凍り付いた。
「あれが、今日の夕食の主役だ」
夕食の主役。
そうか、主役か。
客人、じゃないよな。
主役、か。脇役ならまだしも、主役になるのは初めての経験だ。うん、初体験。
かなり、喜ばれてるらしいかった。特に少女は育ち盛り。
女の子といえど、嬉しいんだろう。
肉が出る食事は。……滅多に食えねぇよな、そりゃ。
ふと、そういえば、今日は満月だったな、そう思い出した。
そうなのだ、ぼくは月を愛でる、風流な男だった。
……風流な男だったんだが、今日までか。
菓子に薬を混ぜてある様子はなかったので、たぶん、紅茶の方だろう。
紅茶の味は苦手なので手を付けなかったんだが、これはどうしたものか。
どうやら、母親はいない家らしい。
ふむ。
ふと、考えていると、娘さんがやってきた。
――とても可愛らしい笑顔で。
「お父さん……は?」
「今日の夕食の支度だよ」
「そっか」
嬉しそうだったし、可愛かった。
あー、どうしよう。ぼくは彼女に話しかける。
どうせ、最期だし。思っていたことを言ってみよう。
「ぼく、ここの家好きだったよ。貴方達も。出来れば、友達になりたかった」
心の底からの本心を。
驚いた顔の彼女を見て、ぼくは満足して紅茶を飲んだ。
すぐに目の前は暗くなり、やっぱり最期は彼女の喜ぶ顔が見たかったな、とそう思った。
実はロリコンの話、っていうか、人も物も人外も見境のない変態の話?
この話に関しては実はロングバージョンもあったりする。




