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一枚奇譚  作者: 裃 左右
3/15

死んでくれる?

人からこう言われるってのは光栄なんですかね?

「死んでくれる?」

「無理」

 俺はそう答えた。

 いや、だって。

 なんで俺が死ななきゃいけないんだ?

 ――その女は年上のくせに、道ばたで歩いている俺に突然、そんなわけのわからんことを言ったのだった。キラリと光る、包丁を突きつけて。

 それはそれは歌うように言いやがった。

「だって、寂しいじゃない」

 それは、一緒に死ねってことですか。

「あら、違うわよ」

 だって、一人じゃ足りないもの。

 さわやかに言いやがった。いやいや、意味わかんねぇよ。

「みんな、一人だと寂しいじゃない」

 みんなかどうかは知らんよ。そんなこと聞いて回ったことは今のところないしな。

「でもね、私はいや。一人なんて、いや」

「……人の話、聞いちゃいねぇ」

「でも、人間って一人で死んじゃうでしょ」

「あー、まぁ、普通は……そうだろうな」

「みんなで一緒に死んだ方が、にぎやかでいいじゃない。元気なうちにしか、そんなこと出来ないでしょ。だから、ね? みんなで死んでくれる?」

 ……思ったより、きっつい理屈だった。まだ、心中相手探すならわかるんだが、どうやら見かけた人間を殺すだけ殺した挙げ句、自殺する気らしかった。

 無理心中っていうか、自爆テロだな。つか、自殺テロだな。

「それも、違うの」

「なにが」

「私が死ぬまで、道連れを作るつもりなの。……旅の道連れ」

 要するに自分から死ぬ気はないそうだった。

 もう、常人の理屈からかなり離れたところいるらしい。推定、2万キロだろうか。大気圏外だ。地球外だ。

「だから、ね。死んでくれる?」

 ね、と言われても。

「んー、その話の前にとりあえずうちに帰れや」

 俺はその手を引っ張る。

「……姉ちゃん」

 わりと、いつものことだけどさ。いい子にしてくれよ、そのうち付き合ってやるからよ。

「……わかった」

 嬉しそうに、へらへらと、姉は、女は笑うのだった。

 私、一人じゃないもんね? と。

 俺はいつか、別の誰かがこの手を引っ張る日が来るのか。少し、複雑な気分で考えていた。

別の誰かが手を引っ張る日、……そんな奴いるか?って話?

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